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威
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しおりを挟むはぁはぁ…と整わない息のまま、ぐらつく頭を押さえて蹲る。
「はぁ~やっぱハナちゃんサイコ―!兄ちゃんがハマるのもわかるなぁ」
ご機嫌にそう言った鷹雄は服を整える葉人の髪をさらりと掴み、気持ち良さげにその髪を繰り返し梳き、ちゅっとその髪に口付ける。
葉人は蹲ったまま、それを振り払うように体をずらした。
「っ…なぁ、聞きたくないのかよ?」
「………」
「あの時の――「もういい」
自分の言葉を遮るように言われ、はっと鷹雄が身を引く。
ふるりと揺れた手を伸ばそうかどうしようかと迷うそぶりを見せ…
「………じゃ…じゃぁ…もう、いいな」
怖気づいたような音の混じった声音でそう言うと、ひくりひくりと肩を震わせる葉人を気まずそうに見下ろす。
「な、んなんだ…っくそ!」
「…………」
「おい!」
そう怒鳴るも…葉人は反応せずにゆらりと頭を上げただけだった。
「やく…約束は……守れよ!」
「………」
「おい!……」
木々の隙間から縫って届いた街灯の明かりを受けた瞳がひたりと鷹雄を見据える。
「ぉ……、…」
きらりとも、ぎらりとも違うその光り方に深淵を見た気がして、鷹雄はじり…と後ずさった。
何か肉食の獣に睨み据えられたかのような居心地の悪さを身に感じ、ゆっくりと身を引いていく。
「………ぅ…」
くぃっと葉人の首が傾げられた瞬間、鷹雄は大袈裟なほど飛び上がって逃げる様に走り去ってしまった。
その足音を追うように、ぽつん…と葉人が呟いた。
「威…」
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