ある日、友達とキスをした

Kokonuca.

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まこと side

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 額が触れ合って、僕は冷たいと感じたけれど、そんなことよりも桃路からふわりと香ってきたシャンプーの匂いが気になってそれどころじゃない。
 いつもいつも藍我からしていた慣れ親しんだ香りだったから、それを僕が間違えるはずがなかった。

 香水なら移ることもあるけれど、シャンプーは?

 実際に使わないと無理だ。

「  っ、や、やめてよ!」

 藍我と同じシャンプーの匂いと藍我の香水の匂いをさせて……
 ズキズキと痛み出した胸の苦しさに急きたてられて、僕はがむしゃらに腕を突き出して桃路を遠のけようとした。

「――――あっ」

 どん って掌が桃路を押す感触。
 小さく上がった悲鳴と、それからベッド周りのカーテンが引っ張られて立てたけたたましい音に、思わずギュッと体を縮こめる。

 バランスを崩した桃路がカーテンにすがりながらも床へ倒れ込んだのと、藍我が不貞腐れたような顔で保健室に入ってきたのが同時だった。
 一瞬、何が起こったのか分からなかったのかポカンとした表情をして、それから真っ青になって僕の方へと駆けよ……うぅん、桃路の方へと駆け寄る。

 床に座り込んだ桃路の隣に膝をつくと、大慌てで様子を窺い出す藍我を見つめて……

 なんだか自分が透明人間になった気分だった。

「桃路! どうした⁉︎」
「ん……なんでもないよ」
「なんでもない奴が床に座り込むかよっ具合悪いのかっ⁉︎」

 威嚇する猛獣のような怒鳴り声に身をすくませると、それに気づいた桃路がくいくいと藍我の服を引っ張って注意を向ける。
 桃路に促されて僕を見た藍我は気まずそうに一度だけ唾を飲み込んだ。

「  っ、ま……まことは、具合、どうだ?」

 そこでやっと気づいてもらえた僕は……

「全然大丈夫」
「熱は  」

 枕元に置いたままだった体温計に気づき、藍我がそれを取り上げようとした時、後ろで「  っ」って小さな呻き声が上がった。
 微かなそれは飲み込んでしまえそうなくらい微かなものだったのに、藍我ははっと飛び上がるようにして足元の桃路の方へ再び向き直る。

 僕に向けられた背中は、いつも見ているもののはずなのに見慣れない壁のようだ。

「桃路? 立てないのか?」
「立て…… ん、ごめ……さっき、胸ぶつけて……」

 桃路が、は と喘ぐように息をすると潤んだ瞳から涙が溢れそうになる。

 苦しそうで辛そうで……

 傍で見ているとその様子に可哀想になってくるくらいだ。

「ばっ  何やってんだよっ!」

 藍我は大袈裟なくらい大きく叫ぶと、桃路をさっと抱き上げて保健室を飛び出して行ってしまった。
 ほんのわずかな出来事で、僕は反応らしい反応もできないままぽかりと開いたままの保健室のドアを眺める。



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