月の綺麗な夜に終わりゆく君と

石原唯人

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夏休み明け変化する日常

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夏休み明けの始業式の日、憂鬱な気分で校舎に入ると日焼けした人や髪を染めた夏休み特有の変化をした人達を見かける。
今までは、気にも留めなかったけれど、自然とそれが目に入るようになったのは、僕自身にもこの夏休みで変化があったからだろうか。
予鈴がなる前の混雑した下駄箱を抜け出すと、予想外だけどここ最近では馴染み深い人物に話しかけられる。
これまで学校では、秘密を守るためにもあまり話しかけられる事が無かったので意外だった。
それは周りの人にも同様だったようで、周囲から好奇心を含んだ視線を向けられる。
「おはよ、篁君」
「おはよう、姫柊さん」
「急にどうしたの? 学校で話しかけてくるなんて」
周りに聞こえないように小声で彼女に問い掛ける。
すると彼女は少し拗ねた声で咎めるように言ってくる。
「篁君が私に言ったんじゃない」
「僕が姫柊さんに?」
言いたい事が分からず再度問い返す僕に、彼女は一度深呼吸をするとあの日、僕が彼女に伝えた言葉を一言一句違えずに僕に言ってくる。
「みんなと違ったって良い、他人にどう見られても構わないから君と一緒に居たい。そう言ったのは篁君でしょ」
彼女は恥ずかしそうに顔を赤くしてそう言った。
自分があの日彼女に伝えた想いを、正面から伝えた本人に改めて言われると恥ずかしさと照れ臭さで心臓の鼓動が早くなる。
きっと、今の僕の顔は彼女に負けないくらい赤いだろう。
おかげで急に彼女が学校で話しかけて来た理由に納得した代わりに、どうしようもない恥ずかしさで何も言えなくなってしまった。
僕より先に赤面状態から回復した彼女が空気を変える為に殊更いつも通りの調子で話題を振ってくれる。
「それで久しぶりって感じじゃないけど後の夏休みどうしてたの?」
「あれから残りの課題を片付けていたかな」
「毎日少しずつ片付けたら楽なのに」
「休み明けにテストがあるから早めにやると忘れるし、ギリギリで片付けた方が頭に残るだろう。そういう君は、残りの夏休みに何してたの?」
「早めに片付けてから復習すればいいのに。私は部屋の片付けとか、新学期の準備かな」
そんな他愛のない雑談をしている間に教室の前まで着いて別れる。
教室に入ると下駄箱の時と同じ視線を感じて視線の先に目を向けると、小規模なグループが雑談をしながら、こちらを見て何か聞きたそうにしている。
ただ今まで、話した事がないので躊躇しているようだ。
この居心地の悪さは、ホームルームで先生が教室に入るまで続いた。
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