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自習
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「ヴィオラ、第五代国王時代を支えた三傑の名は?」
歴史の先生に聞かれても、ヴィオラは答えられなかった。
前世ではゲームの攻略に関係ないところは覚えてないし、今世ではグラント領から出るつもりがなかったから、勉強する気もなかった。
「こんなことも答えられないのですか。では、ジョセフィンさん」
「イアン・カールス、マックス・レルム、ロルフ・ヴィンターです」
「その通りです。さすが、ジョセフィンさん」
「知っていて、当然のことですわ」
ジョセフィンの取り巻きが拍手している。大体、先生もヴィオラのことは呼び捨てなのに、ジョセフィンはさん付けだ。
ミヤの情報によると、ジョセフィンは王太子の婚約者候補とみなされているらしい。
「ヴィオラ、毎日、『カレイド戦記』を一章分読むように」
「え、私だけですか?」
「ええ、あなたは基礎が足りないのです。早く最低限の知識を身につけてもらわなければ」
「……わかりました」
弟が読んでいたから、知っている。ものすごく分厚い本だ。
魔法や剣術の授業を楽しみにしていたのに、最初の一ヶ月は歴史やマナーだけだ。平民も混ざっているから、まずは基本知識を身につけようということらしい。
基本知識って、読み書きのことじゃないの? マナーはともかく、歴史っているの?
サボっていたツケが回っているだけですと、メイドのミヤには言われてしまった。
授業が終わると、みんな、グループで固まってしまって、ヴィオラは入ることができない。
というより、自分だけの宿題が多くて、仲間に入れてもらおうと努力する時間もない。
「アリアナの気持ちがわかるわ」
ゲームの中で平民出身のアリアナは貴族の仲間に入れず、孤独だったが、知らないマナーや歴史を必死に努力して身につけたのだ。
「本当にすごいわ、ヒロイン。それに比べたら、私の苦労なんて知れてるんだから、愚痴ってる場合じゃないよね。それにしても、どこにいるんだろう」
こっそりとアリアナを探そうと思っていたのに、その時間もない。
ヴィオラは図書館に行った。
当たり前だが、ゲームと同じ立派な建物でテンションが上がる。
「やっぱり、ハーモニー学園に来てよかったかも」
思わず、ヴィオラがつぶやいた時。
ふふっ。
人を馬鹿にしたような笑い声がした。
「田舎者」「金にあかせて」
小声で断片的にしか聞こえなかったが、振り返ると、通り過ぎていく生徒たちがいる。
上がっていたテンションが一気に下がってしまう。
「何が悪いの。何もしていないのに」
ヴィオラはそうこぼしたが、入学式に遅刻して、王太子と一緒に入場。誰も知り合いがいない。おまけにイアンと決闘することが公表されている。入学試験の算術では一位だったのに授業では落ちこぼれ。注目を浴び、疑われる要素は一杯だった。
気を取り直して、図書館でカレイド戦記を借りて帰ろうとすると、司書に冷たく断られてしまった。
「館内での閲覧のみとなっています」
仕方ないので、ヴィオラは閲覧室の隅に陣取った。とりあえず、読むしかない。
黙々と読んで、わからないところは後でミヤに聞くため、ノートに書く。
「イアン、頼まれていた数字、入れてきたぜ」
「ありがとう」
声に顔を上げると、男女十人ぐらいを引き連れたイアンがいた。分厚い紙束を受け取っている。
「こんなことしなくても、イアン様なら、絶対、勝つのに」
「そうだ」
「でも、全力でやるところがお前らしいな」
「じゃあ、これから、練習するから」
「頑張ってね」
「応援してるぞ」
百ます計算の練習のため、数字を入れてもらったのか。人に囲まれたイアンの姿に羨ましいとヴィオラは感じた。
一人になると、イアンは席に着き、計算を始めた。
サラサラ走るペンの音。紙をめくる音。
速い!
何桁の計算なんだろう。ああ、これで負けたらどうしよう。
百ます計算じゃなくて、コツが必要な数独にすればよかったかなあ。でも、数独の仕組みって、うまく説明できないし。いや、計算速度なら、負けないはず。
ヴィオラは首を振って、カレイド戦記に戻った。自分もミヤに問題を作ってもらおうと思いながら。
歴史の先生に聞かれても、ヴィオラは答えられなかった。
前世ではゲームの攻略に関係ないところは覚えてないし、今世ではグラント領から出るつもりがなかったから、勉強する気もなかった。
「こんなことも答えられないのですか。では、ジョセフィンさん」
「イアン・カールス、マックス・レルム、ロルフ・ヴィンターです」
「その通りです。さすが、ジョセフィンさん」
「知っていて、当然のことですわ」
ジョセフィンの取り巻きが拍手している。大体、先生もヴィオラのことは呼び捨てなのに、ジョセフィンはさん付けだ。
ミヤの情報によると、ジョセフィンは王太子の婚約者候補とみなされているらしい。
「ヴィオラ、毎日、『カレイド戦記』を一章分読むように」
「え、私だけですか?」
「ええ、あなたは基礎が足りないのです。早く最低限の知識を身につけてもらわなければ」
「……わかりました」
弟が読んでいたから、知っている。ものすごく分厚い本だ。
魔法や剣術の授業を楽しみにしていたのに、最初の一ヶ月は歴史やマナーだけだ。平民も混ざっているから、まずは基本知識を身につけようということらしい。
基本知識って、読み書きのことじゃないの? マナーはともかく、歴史っているの?
サボっていたツケが回っているだけですと、メイドのミヤには言われてしまった。
授業が終わると、みんな、グループで固まってしまって、ヴィオラは入ることができない。
というより、自分だけの宿題が多くて、仲間に入れてもらおうと努力する時間もない。
「アリアナの気持ちがわかるわ」
ゲームの中で平民出身のアリアナは貴族の仲間に入れず、孤独だったが、知らないマナーや歴史を必死に努力して身につけたのだ。
「本当にすごいわ、ヒロイン。それに比べたら、私の苦労なんて知れてるんだから、愚痴ってる場合じゃないよね。それにしても、どこにいるんだろう」
こっそりとアリアナを探そうと思っていたのに、その時間もない。
ヴィオラは図書館に行った。
当たり前だが、ゲームと同じ立派な建物でテンションが上がる。
「やっぱり、ハーモニー学園に来てよかったかも」
思わず、ヴィオラがつぶやいた時。
ふふっ。
人を馬鹿にしたような笑い声がした。
「田舎者」「金にあかせて」
小声で断片的にしか聞こえなかったが、振り返ると、通り過ぎていく生徒たちがいる。
上がっていたテンションが一気に下がってしまう。
「何が悪いの。何もしていないのに」
ヴィオラはそうこぼしたが、入学式に遅刻して、王太子と一緒に入場。誰も知り合いがいない。おまけにイアンと決闘することが公表されている。入学試験の算術では一位だったのに授業では落ちこぼれ。注目を浴び、疑われる要素は一杯だった。
気を取り直して、図書館でカレイド戦記を借りて帰ろうとすると、司書に冷たく断られてしまった。
「館内での閲覧のみとなっています」
仕方ないので、ヴィオラは閲覧室の隅に陣取った。とりあえず、読むしかない。
黙々と読んで、わからないところは後でミヤに聞くため、ノートに書く。
「イアン、頼まれていた数字、入れてきたぜ」
「ありがとう」
声に顔を上げると、男女十人ぐらいを引き連れたイアンがいた。分厚い紙束を受け取っている。
「こんなことしなくても、イアン様なら、絶対、勝つのに」
「そうだ」
「でも、全力でやるところがお前らしいな」
「じゃあ、これから、練習するから」
「頑張ってね」
「応援してるぞ」
百ます計算の練習のため、数字を入れてもらったのか。人に囲まれたイアンの姿に羨ましいとヴィオラは感じた。
一人になると、イアンは席に着き、計算を始めた。
サラサラ走るペンの音。紙をめくる音。
速い!
何桁の計算なんだろう。ああ、これで負けたらどうしよう。
百ます計算じゃなくて、コツが必要な数独にすればよかったかなあ。でも、数独の仕組みって、うまく説明できないし。いや、計算速度なら、負けないはず。
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