5 / 49
ミューラー
しおりを挟む
自己紹介の後は学園生活の注意や授業についての注意だった。信じられないことに成績優秀者からなる特級クラスは科目選択の自由はなく、特別クラスを受けなければならないらしい。
「エリート養成コースか」
それにしても、アリアナはどこにいるんだろう。てっきり、特級クラスだと思ったのに。
「以上、何か質問は?」
ミューラー先生が尋ねると、ジョセフィンが手を挙げた。
「ジョセフィンさん、どうぞ」
「遅刻する人に合わせて開始が遅くなるというのはやめていただけないでしょうか」
あなたのせいだと言うようにジョセフィンの目はイアンじゃなく、ヴィオラを見ていた。
「今日は初日の説明のため、全員そろってから開始にしましたが、これからは定刻通りに進めます。みなさんも心してください。他には?」
ミューラー先生に質問する人はもういなかった。
「では、気をつけて、お帰りください。イアン、ヴィオラはそのまま残るように」
きっと、遅刻の注意をされるんだろうという顔でみんな、帰っていく。
ああ、友達を作るきっかけが欲しかったのに。こいつのせいだとヴィオラはイアンをにらんだ。
ヴィオラとイアン以外の生徒が帰るとミューラー先生はだらりと教壇にもたれかかった。
「じゃあ、これからは遅刻しないように。以上、帰っていいよ」
思わず、ヴィオラとイアンは顔を見合わせた。
「先生、決闘の件ですが」
ヴィオラが口を開くと、先生はさえぎって言った。
「気持ちは落ち着いたか? もう、いいだろう。仲直りしなよ」
ミューラー先生はめんどくさそうに言った。
こういうタイプの先生だったんだ。探しに来てくれたのは熱心だったからじゃなく、二回、説明したくなかったからなんじゃ。
「仲直りなんて、できません」
「イアンが悪いんだろう。イアンが謝る。ヴィオラが許す。それでいいじゃないか。決闘って、話を聞いた教師が仕切らないといけないから、面倒くさいんだよ」
いいかげんな。父が不正を行うような人物だという噂をそのままにしていたら、断罪につながってしまうかもしれない。だから、なんとか、防ごうと必死になっているのに。
感情的に言い返そうとして、ヴィオラはやめた。深呼吸しながら考える。こういうタイプの人には。
「先生が決闘を受け付けないということはもっと、上の方に話をしろということでしょうか? もちろん、私はそれでも構わないのですが、先生の無気力な態度も報告させていただきますので、かえって、もっと面倒なことになるかもしれませんね」
「脅しているの?」
「いえ、私のとる行動を説明しているだけです」
ミューラー先生は顔をしかめた。
「わかった。どこから決闘という話になったのか、聞かせてもらえるかな」
「父を侮辱されたのが原因です。金を使って私を入学させたというのは、父や私に対するだけでなく、ハーモニー学園の教師に対しても不正を行っているという侮辱になります」
ヴィオラの言葉にイアンの顔色が悪くなった。教師を侮辱しているというように話を大きくされるとは思っていなかったのだろう。
「わかった。決闘の理由としては問題ない」
ミューラー先生が誓いのように片手を挙げた。
「先生、確かに私の言葉は失言でした。ただ、男性の私と女性で決闘というのは体力差もあり、公平なものにはならないでしょう」
イアンが慌てたように言った。
体力差? 私がどれほど鍛えているかも知らずに、よく言うわ。
「イアンが謝罪したら、決闘を取りやめるか」
「いいえ、決闘に勝利し、公式の場で謝罪してもらいたいと思います」
「馬鹿な。私に勝てると思っているのか」
馬鹿はどっちだとヴィオラはイアンを睨みつけた。
「私が決闘の内容を指定できるんですよね」
「まさか、刺繍とか言い出すんじゃないだろうな」
イアンの言葉、一つ一つに腹が立つ。
たぶん、刺繍なんてしたら、ヴィオラの実力はイアンと同じレベルだ。
「もちろん、計算です。百ます計算を希望します。私の算術の力が本物だと示してみせます」
「「百ます計算?」」
先生とイアンの声が揃った。
そっか、グラント領には広めたけど、前世の勉強方法だから知ってるわけないよね。
でも、決闘を申し込んだ時から、これで勝負すると決めていた。
「例を書きます」
ヴィオラは黒板のところに行くと、升目を書いた。
「十列、十行の升目を書いて、その外側に数字を書きます。これが問題です。計算する者は足し算であれば、この内側の升目に縦と横の数字の合計を書いていきます。指定時間内で正解数が多い者が勝者です」
「面白い。授業にも使えそうだ」
ミューラー先生が目を輝かせた。
「外に書く数字は何桁でも構わないのだな」
「はい、決闘ですから、難しくしていただいた方がいいと思います」
「では、問題作成は任せてもらおう。足し算、引き算、掛け算、割り算、四種類で行うものとする」
ミューラー先生が急に張り切りだした。何桁にするつもりなんだろう。無茶苦茶するんじゃないだろうな。
「制限時間は問題ができてから、決めようかな。競技場の真ん中に向かい合わせに机を置いて。うん、魔法で空中に拡大表示しよう」
先生の声が弾んでいる。
「悪いが、勝たせてもらう」
イアンの言葉にヴィオラは鼻で笑った。
九九がないこの世界の人間が日本で小さい頃から鍛えられた人間に勝てるわけがない。
大体、入学試験で私に負けたくせに。
「謝罪の言葉を考えておいてくださいね」
ヴィオラはピシリと言った。
「エリート養成コースか」
それにしても、アリアナはどこにいるんだろう。てっきり、特級クラスだと思ったのに。
「以上、何か質問は?」
ミューラー先生が尋ねると、ジョセフィンが手を挙げた。
「ジョセフィンさん、どうぞ」
「遅刻する人に合わせて開始が遅くなるというのはやめていただけないでしょうか」
あなたのせいだと言うようにジョセフィンの目はイアンじゃなく、ヴィオラを見ていた。
「今日は初日の説明のため、全員そろってから開始にしましたが、これからは定刻通りに進めます。みなさんも心してください。他には?」
ミューラー先生に質問する人はもういなかった。
「では、気をつけて、お帰りください。イアン、ヴィオラはそのまま残るように」
きっと、遅刻の注意をされるんだろうという顔でみんな、帰っていく。
ああ、友達を作るきっかけが欲しかったのに。こいつのせいだとヴィオラはイアンをにらんだ。
ヴィオラとイアン以外の生徒が帰るとミューラー先生はだらりと教壇にもたれかかった。
「じゃあ、これからは遅刻しないように。以上、帰っていいよ」
思わず、ヴィオラとイアンは顔を見合わせた。
「先生、決闘の件ですが」
ヴィオラが口を開くと、先生はさえぎって言った。
「気持ちは落ち着いたか? もう、いいだろう。仲直りしなよ」
ミューラー先生はめんどくさそうに言った。
こういうタイプの先生だったんだ。探しに来てくれたのは熱心だったからじゃなく、二回、説明したくなかったからなんじゃ。
「仲直りなんて、できません」
「イアンが悪いんだろう。イアンが謝る。ヴィオラが許す。それでいいじゃないか。決闘って、話を聞いた教師が仕切らないといけないから、面倒くさいんだよ」
いいかげんな。父が不正を行うような人物だという噂をそのままにしていたら、断罪につながってしまうかもしれない。だから、なんとか、防ごうと必死になっているのに。
感情的に言い返そうとして、ヴィオラはやめた。深呼吸しながら考える。こういうタイプの人には。
「先生が決闘を受け付けないということはもっと、上の方に話をしろということでしょうか? もちろん、私はそれでも構わないのですが、先生の無気力な態度も報告させていただきますので、かえって、もっと面倒なことになるかもしれませんね」
「脅しているの?」
「いえ、私のとる行動を説明しているだけです」
ミューラー先生は顔をしかめた。
「わかった。どこから決闘という話になったのか、聞かせてもらえるかな」
「父を侮辱されたのが原因です。金を使って私を入学させたというのは、父や私に対するだけでなく、ハーモニー学園の教師に対しても不正を行っているという侮辱になります」
ヴィオラの言葉にイアンの顔色が悪くなった。教師を侮辱しているというように話を大きくされるとは思っていなかったのだろう。
「わかった。決闘の理由としては問題ない」
ミューラー先生が誓いのように片手を挙げた。
「先生、確かに私の言葉は失言でした。ただ、男性の私と女性で決闘というのは体力差もあり、公平なものにはならないでしょう」
イアンが慌てたように言った。
体力差? 私がどれほど鍛えているかも知らずに、よく言うわ。
「イアンが謝罪したら、決闘を取りやめるか」
「いいえ、決闘に勝利し、公式の場で謝罪してもらいたいと思います」
「馬鹿な。私に勝てると思っているのか」
馬鹿はどっちだとヴィオラはイアンを睨みつけた。
「私が決闘の内容を指定できるんですよね」
「まさか、刺繍とか言い出すんじゃないだろうな」
イアンの言葉、一つ一つに腹が立つ。
たぶん、刺繍なんてしたら、ヴィオラの実力はイアンと同じレベルだ。
「もちろん、計算です。百ます計算を希望します。私の算術の力が本物だと示してみせます」
「「百ます計算?」」
先生とイアンの声が揃った。
そっか、グラント領には広めたけど、前世の勉強方法だから知ってるわけないよね。
でも、決闘を申し込んだ時から、これで勝負すると決めていた。
「例を書きます」
ヴィオラは黒板のところに行くと、升目を書いた。
「十列、十行の升目を書いて、その外側に数字を書きます。これが問題です。計算する者は足し算であれば、この内側の升目に縦と横の数字の合計を書いていきます。指定時間内で正解数が多い者が勝者です」
「面白い。授業にも使えそうだ」
ミューラー先生が目を輝かせた。
「外に書く数字は何桁でも構わないのだな」
「はい、決闘ですから、難しくしていただいた方がいいと思います」
「では、問題作成は任せてもらおう。足し算、引き算、掛け算、割り算、四種類で行うものとする」
ミューラー先生が急に張り切りだした。何桁にするつもりなんだろう。無茶苦茶するんじゃないだろうな。
「制限時間は問題ができてから、決めようかな。競技場の真ん中に向かい合わせに机を置いて。うん、魔法で空中に拡大表示しよう」
先生の声が弾んでいる。
「悪いが、勝たせてもらう」
イアンの言葉にヴィオラは鼻で笑った。
九九がないこの世界の人間が日本で小さい頃から鍛えられた人間に勝てるわけがない。
大体、入学試験で私に負けたくせに。
「謝罪の言葉を考えておいてくださいね」
ヴィオラはピシリと言った。
25
あなたにおすすめの小説
引きこもり少女、御子になる~お世話係は過保護な王子様~
浅海 景
恋愛
オッドアイで生まれた透花は家族から厄介者扱いをされて引きこもりの生活を送っていた。ある日、双子の姉に突き飛ばされて頭を強打するが、目を覚ましたのは見覚えのない場所だった。ハウゼンヒルト神聖国の王子であるフィルから、世界を救う御子(みこ)だと告げられた透花は自分には無理だと否定するが、御子であるかどうかを判断するために教育を受けることに。
御子至上主義なフィルは透花を大切にしてくれるが、自分が御子だと信じていない透花はフィルの優しさは一時的なものだと自分に言い聞かせる。
「きっといつかはこの人もまた自分に嫌悪し離れていくのだから」
自己肯定感ゼロの少女が過保護な王子や人との関わりによって、徐々に自分を取り戻す物語。
その破滅エンド、ボツにします!~転生ヒロインはやり直し令嬢をハッピーエンドにしたい~
福留しゅん
恋愛
自分がシナリオを書いた乙女ゲームの世界に転生したメインヒロインはゲーム開始直後に前世を思い出す。一方の悪役令嬢は何度も断罪と破滅を繰り返しては人生をやり直していた。そうして創造主の知識を持つヒロインと強くてニューゲームな悪役令嬢の奇妙な交友が始まる――。
※小説家になろう様にも投稿しています。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
乙女ゲームのヒロインに生まれ変わりました!なのになぜか悪役令嬢に好かれているんです
榎夜
恋愛
櫻井るな は高校の通学途中、事故によって亡くなってしまった
......と思ったら転生して大好きな乙女ゲームのヒロインに!?
それなのに、攻略者達は私のことを全く好きになってくれないんです!
それどころか、イベント回収も全く出来ないなんて...!
ー全47話ー
乙女ゲームっぽい世界に転生したけど何もかもうろ覚え!~たぶん悪役令嬢だと思うけど自信が無い~
天木奏音
恋愛
雨の日に滑って転んで頭を打った私は、気付いたら公爵令嬢ヴィオレッタに転生していた。
どうやらここは前世親しんだ乙女ゲームかラノベの世界っぽいけど、疲れ切ったアラフォーのうろんな記憶力では何の作品の世界か特定できない。
鑑で見た感じ、どう見ても悪役令嬢顔なヴィオレッタ。このままだと破滅一直線!?ヒロインっぽい子を探して仲良くなって、この世界では平穏無事に長生きしてみせます!
※他サイトにも掲載しています
【完結】婚約者はお譲りします!転生悪役令嬢は世界を救いたい!
白雨 音
恋愛
公爵令嬢アラベラは、階段から転落した際、前世を思い出し、
この世界が、前世で好きだった乙女ゲームの世界に似ている事に気付いた。
自分に与えられた役は《悪役令嬢》、このままでは破滅だが、避ける事は出来ない。
ゲームのヒロインは、聖女となり世界を救う《予言》をするのだが、
それは、白竜への生贄として《アラベラ》を捧げる事だった___
「この世界を救う為、悪役令嬢に徹するわ!」と決めたアラベラは、
トゥルーエンドを目指し、ゲーム通りに進めようと、日々奮闘!
そんな彼女を見つめるのは…?
異世界転生:恋愛 (※婚約者の王子とは結ばれません) 《完結しました》
お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
モブ令嬢は脳筋が嫌い
斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
恋愛
イーディスは海のように真っ青な瞳を持つ少年、リガロに一瞬で心を奪われた。彼の婚約者になれるのが嬉しくて「祖父のようになりたい」と夢を語る彼を支えたいと思った。リガロと婚約者になってからの日々は夢のようだった。けれど彼はいつからか全く笑わなくなった。剣を振るい続ける彼を見守ることこそが自分の役目だと思っていたイーディスだったが、彼女の考えは前世の記憶を取り戻したことで一変する。※執筆中のため感想返信までお時間を頂くことがあります。また今後の展開に関わる感想や攻撃的な感想に関しましては返信や掲載を控えさせていただくことがあります。あらかじめご了承ください。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる