未来の王妃として幸せを紡ぐ

林 業

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まだ未熟な

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食事も終えて、食堂からリビングへと移動すると、母が上着を脱ぐ。
普段着ではなく、パーティなどで着る正装だった二人。
父の懐やカフスに我が家の家紋。
母の胸ポケットには我が家の家紋が見えるハンカチ。
そしてズボンにもシンプルかつ目立たないながらも見事なデザインが縫われている。
嫁いできた者や、母親である証としてそういった模様などの遊びが許されているそうだ。
「はー。堅苦しいのは肩がこる」
使用人に服を渡しながら早速と普段着へと変えている父母。
それに習って自分も脱いで普段着へと変える。
子供の服は白地の正装。
貴族の子供服は基本生家の家紋が刻まれている。
一応婚約者候補なのでイネスにはないが、婚約者がいる場合は、ボタンやカフスが他家の家紋である。
嫁ぐ者も嫁がれるものも結婚するまで変わりない。
「全くだ」
「母上の化けの皮が剥がれたぞ。よし。くつろごう」
従っていた兄二人がソファーでだらけだす。
「それでイネス」
「は、はい」
母に呼ばれて返事をする。
「イネスは、剣術苦手って聞いたんだが」
ちらりと上着を脱いでからと兄を叱咤しているリーマンを見る。
「はい。どうしても、その苦手です。兄上たちみたいに上手くできなくて」
「さすがに、昨今の王妃教育では武技ができないのはって話だよな」
「はい。皇子は剣が得意とのことでお相手できればと思っています」
「じゃあ、武器、変えてみよっか」
「へ?」
「素手は?無理か。イネスは筋力がないから。短剣とか、よし。次の春に武器屋に行こう。良さげな武器を一つ選んで買おうとしようか」
「えー。いいなー」
兄二人がぶーぶーと文句を言う。
「お前たちには成人の日に贈る立派な剣を用意する予定だ。それまで腕を磨け」
父が二人の頭を撫でる。
ならと二人は納得する。
「先生も同行お願いできますか?」
「えぇ。もちろん」
リーマンが光栄だと微笑む。
「あぁ。そうだ。リーマン先生が見たいとおっしゃっていた裁縫師ですが明日来訪予定です。次の服飾の予定を立てるつもりです。同席許可も頂いていますよ」
「ありがとうございます。明日ですね。授業予定を組み直してきます」
リーマンが消えた方向に長兄が手を握って祈る。
「勉強減りますように」
その言葉を聞き取った母に頭を叩かれる。

消えた授業は剣術でした。
兄が珍しく落ち込んでいた。
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