未来の王妃として幸せを紡ぐ

林 業

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まだ未熟な

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あれから数ヶ月、イネスはアーケロンに会っていない。
先生や使用人、父母の気遣いのおかげである。
秋が来て、冬が来て、季節ごとの仕事や遊びを交えながらも、授業を行う。

そして春が来た。

王都で行われる春の祭りは、毎年父母だけが参加しているもので、ついでに苗や種等も良さげなのがあれば買って帰っていた。
家族のお土産は当然ある。

領地で使える種は、領民が自家栽培だったり他領地への買い出し、または領民同士での交易にて賄っている。

その間イネスたちは領民の手伝いをしていた。
秋の収穫と春の間だけはアーケロンもそれどころではないらしく、虐めては来なかった。

「アーケロンってなんでいじめてくるんだろう」

流石に数週間も馬車に揺られているとやることもなくなった三人。
何か話題をと思っていればふと浮かぶ疑問をイネスは口にする。

「そりゃアレだろう」
「アレだよな。性質がわりぃけど」
「アレ?」
「当の本人、迷惑被っているお前が気づくわけないか」
首を捻れば長兄は気にすんなと欠伸している。
次男は横になっている。
父母は別の馬車にいる。
先生に至っては子どもたちの馬車の業者真似事を。
時々イネスたちにも手伝いをさせられる。
覚えていて損はないから。と。
兄たちにとっても暇つぶしにはなった。
「教えてください」
「お前の気を引きたいんだろう?」
兄はイネスに迫られ、渋々告げる。
何故それが気を引くことになるのかわからないとイネスは首を捻る。
「つまり中身は自分のことしか考えていないガキってことだ」
よくわかんないとイネスはますます首を捻る。

御者の窓が叩かれ、先生。とイネスが反応する。

「後一時間ほどで到着予定ですよ。貴族らしく姿勢を正しなさい」
「はい」
横になっていた兄たちはノロノロと体を戻す。

「先生。アーケロンは私の気を引いてどうするつもりなんですか?悪者として認識させたいってことでいいんですかね」
「その言葉にちょっと可愛そうな気もしてきます。が、正しくは好きな相手にちょっかいを掛けたいだけなんですよ。ただやり方が違うってだけで。そういうのが好きなら話は別ですけどねぇ。人の性癖はなんといいますか業が深く」
ブンブン左右に首を振る。
「わ、私は嫌です」
「わかっていますよ」

にこにこと笑うリーマンの横顔を眺める。
業者を賄えるその姿を眺めて、話題を頭の中で探して、告げる。
「先生」
「はい」
「王子様ってどんな人かな」
「殿下は貴方より二つ年上ですよ。弟君が一人。ですが弟君は兄君の補助になると張り切っていて、兄君も優秀な方ですよ。少々の鼻が伸びますが」
花?と理解して、どういう意味だろうと首を捻る。
「つまり優秀すぎて、調子に乗るということだな」
兄が外の光景をつまらなさそうに見ながら告げる。
花が伸びる。
つまり成長するのはいいことでは?と首を益々捻る。
「まぁ、そうですね。そのたびに教師一同と、兵士が集ってボコボコにします」
「それ次期王様としてどうなんだよ」
「むしろ、王妃が先導してますよ」
「こ、怖い人?王様達」
ドン引きしながら聞けば、苦笑する。
「教育熱心。なだけですよ。親としては時々厳しいですがお優しい方々ですし、王族としては名君として十分すぎるお方です」
「へぇ」
じゃあ大丈夫かなと今度の面談について考える。
「まぁ、あまり固くならず、今の段階でできる最低限の礼儀で構いませんよ。向こうもわかっていますからね」
定期連絡で何処までの成長かは伝えているというのを思い出す。
下手に背伸びしないようにと言われていたのを思い出してこくこくと頷く。
「お会い出来るのは三日後ですね。服は持ってきたもの大丈夫だそうですが、今回絶対に仕立ててしまいましょうね」
兄たちが嫌そうな顔をしたのを見抜いたのか強制すると言外に告げる。

兄が唐突に声を上げる。
業者窓から外の景色を見て驚く。

巨大な壁。
城や領民を守るために作られただろうその壁の高さに驚いて見上げる。


「すっげぇ」

兄から出た言葉に思わず同意する。
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