【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

御堂あゆこ

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第33話 人間じゃないっぽい その2

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 なんてこった。魔族って普通に人間と同じ見た目をしているのか! 僕が想像していた魔族は、角が生えてたり、黒い翼があったりする、もっと邪悪っぽい見た目をしているんだけど、ルドは、普通の人間の男性に見える。そりゃ人より少しハンサムだけど、それは種族とか関係ないよね。
「そして、おそらく、エタも魔族だ」
「え!?」
「エタの髪も俺と同じ緑色をしている。この髪の色は、ウィルの黒髪と同じくとても珍しい。エタも孤児院にいたと言っていたし、間違いないだろう」
「魔族と孤児院って、何か関係があるの?」
「そうだ。女を奪われた後、それでも正気を失わなかった男とその一族は、この世界から姿を消す。消すと言っても、実際は、ある山の奥深くで、ひっそりと暮らしていたんだ」
「エルフ族みたいに?」
「そうだな。昔、安らぎを司る力を持った男は、闇の神と言われていたが、男には親もいたし、兄弟もいた。一族の中で、一際強い力を持っていた男が神とされていただけで、その一族には皆、強い闇の力があった。その力を使って、他の種族に見つからないよう、魔法で細工をしていたんだ。歌姫の力を持った女の血を引く子供がいたことで、再びその力を狙って、他の種族に襲われることを避けるために、そうしたのだろう。だがある時、力を狙った者たちに、魔族の集落が襲撃された。俺の記憶は、そこから始まる」
「え! その時のこと、覚えてるの?」
「いや、今まではずっと忘れていたんだ。ウィルの歌を聞いたことで、思い出した。当時俺は、まだ、幼い子供だった。俺のことを護るため、母が、魔法で俺を遠くへ飛ばしてくれたんだ。その直前に、自分が魔族であるということがバレて、再び命を狙われないよう、俺の記憶と、一族に伝わる真実を、そのペンダントに封じ、渡してくれたんだ。そして飛ばされたのが、リヒトリーベ王国だった。通りかかった人間に発見された俺は、そうして孤児院に入れられることになった」
「そうだったんだね……」
 この世界には、僕が知らないことが、まだこんなにあったんだ。
「あれ? でも、エタは? エタもルドと同じように、魔法で逃がされたってこと? そうだとすると、歳がちょっと合わないような――」
「エタも、当時の襲撃の時に飛ばされたのだろう。魔族は、寿命が長い分、成長も遅い。幼い見た目をしているが、ウィルよりは年上だと思う」
「はい? 僕より年上?」
「そうだ。魔族は、人間族の約五倍は長く生きる」
「えっと、つまり、人間の平均寿命が七十くらいだとして、……え~!! 三百五十年!?」
「魔族の存在など、歌姫の力と同じく、今では全く忘れ去られているからな。まあ、意図的にそうなるようにしたのもあるが」
「ええ~……エタの見た目が四~五歳だとして、かけることの五……二十五歳!」
「おそらく、そのくらいの年齢だと思う」
「え? え? じゃあ、ルドは? この前、三十三歳になったって言ってたけど、かける五……ひゃ、ひゃ」
「百六十五歳ではない!」
「え? 計算間違ってた?」
「魔族は、子供の姿でいる期間は長いが、一定の年齢を超えると、あっと今に人間の大人くらいの見た目になる。エタも、あと数年もすれば、人間の成人男性くらいの身体に成長するはずだ」
「そんな……」
 あの愛くるしい姿を見られるのもあと数年しかないなんて!
「俺がリヒトリーベに飛ばされたときは、まだ子供の姿をしていたから、恐らく、二十五歳~三十歳前後だったはずだ。そのときエタは生まれたばかりだろう。孤児院では、正確な年齢は分からなかったから、見た目から、五歳くらいだろうとされた。騎士団に入ったのは、その六年後のことだ。そして、その五年後、ウィルの護衛になって、今年で十七年だ」
「ということは、二十五足す、六足す、五足す、十七……五十三」
 え、なんか、もっと嫌なんですけど。百六十五歳って言われるより、五十三歳って言われる方が、より年齢がリアルっていうか……五十三歳……ルドが、五十三歳…………ソロソロオジイチャンジャン。
「ウィル、お前、すごく失礼なことを考えてないか?」
「え!? そんな! 気のせいだよ!! ルド、若く見えるね!」
「それも魔族の特徴だ。幼い姿の期間が長く続いた後、人間の二十~三十歳くらいの見た目になり、死ぬまでその姿は変わらない」
「え~! なんかそれ、ずるい!」
「ずるいも何も、そういう種族なのだ。それに、ウィルだって、今後、歳を重ねても、今の見た目はそんなに変わらないはずだ」
「え、僕?」
「やはり、気づいていなかったか。ウィルは、恐らく、伝承に出てくる妖精族の子孫だ。いや、違うな。正確に言えば、闇の神と婚姻を結んだ妖精の生まれ変わりだと思う。妖精族も、一定の姿に成長した後は、死ぬまで見た目は変わらない」
「なななな何だって!?」
「魔族の伝承に出てくる、歌姫の力をもった女は、妖精族だった。その力は、妖精族の中でも、何千年に一度、現れるかどうかの、特に珍しい力だ。まず、そんな珍しい力を持っていることが、ウィルが妖精族の血を引いていることの証だ」
「そ、そんなこと突然言われても……」
「そして、その髪色だ。妖精族は、本来、七色に輝く髪をしている。髪が黒くなったのは、闇の神と結婚した女だけだ。その子孫に、黒色の髪をした者はいない。それはつまり、ウィルが、闇の神と結婚した妖精、本人の生まれ変わりだと考えるのが自然だ」
「あの、さっきから、話が超展開過ぎて、頭が追い付いていかないんだけど……」
 だって、俺は、もともと、地球上の日本という国に住んでいた一ノ瀬優という男だった。それが転生して誕生したのが、ウィルフォード・リヒトリーベのはず。それなのに、この身体に転生した者が他にもいたってことなのか!? もしも~し? 妖精さん? 聞こえますか? もし、僕の身体にいるなら返事してもらえますか? ――――返事はないようだ。やっぱりまだ信じられない。
「あ! そうだ! 闇の神と妖精の間にできた子供は? まだ神の力を失う前にできた子供だから――」
「いや、闇の神が力を失ったと当時に、彼の血に連なる者は皆、黒髪ではなくなった。だから、ウィルが魔族の子孫である可能性は低い」
「むむむ……ルドは、僕の母である王妃殿下に会ったこともあるんだよね? もしかして、妖精族だったの?」
「いや、実は、王妃殿下は身体が弱く、滅多に表に出ないお方だったから、俺も会ったことはないんだ」
 自分のことのはずなのに、益々謎は深まるばかりだ。
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