『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』

miigumi

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2章

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■第21話『ただいまのクッキー、まあるいかたち』

 *

 「リィナちゃん、おかえりなさい!」

 しろくま通りに戻ったその日から、ご近所の人たちが次々と顔を出してくれた。

 「王都でもう有名人なんでしょ?」「貴族の人に気に入られたって聞いたわよ!」「ピノちゃんも元気そうでなにより!」

 まるで、親戚の子が久しぶりに里帰りしたかのようなにぎやかさ。

「ありがとうございます、でも……有名ってほどじゃなくて……」

「そうやって謙遜するところが、あんたのいいとこなんだよ!」

「ぴっ!」

 ピノが得意げに胸を張る横で、リィナは照れ笑いを浮かべた。

(……ここが、やっぱり私の帰る場所だな)

 王都で経験したことは、誇り。
 でも、心が落ち着くのは、やっぱりこの小さなお店だった。

 *

 その日の午後、久しぶりにレシピノートを広げたリィナは、ふとピノのほうを見た。

 くるんとした目、ころんとした体。
 そして、最近すっかり“看板魔物”として人気者になっている姿。

「……ピノって、クッキーになったら絶対かわいいよね」

「ぴ?」

「ほら、こう……丸くて、小さくて、ちょっとだけ笑ってる顔で……」

 そう言いながら紙にささっと描いてみると、ピノはじぃーっとそれを見つめ――

 「ぴぴ!」

 大喜びで、イラストの上でくるくる回った。

「気に入った!? じゃあ、型作ってみようかな! きなこ味とか、ちょっと素朴なやつ!」

 イメージは、子どもも大人もほっとできる、
 ころんとした“まあるいしあわせ”。

 名前は――《ピノころクッキー》。

(あ、絶対これ人気出ちゃうやつだ……!)

 心がわくわくして、自然と筆が進む。

 *

 その夜。

 ピノ型クッキーの試作を焼いていると、またしても静かに扉が開いた。

「……こんばんは。おかえりなさい、リィナさん」

「レオさん……」

 どこか気恥ずかしい、でも嬉しい。
 そんな顔でリィナが出したのは、ほんのり焼きたての一枚のクッキー。

「試作です。“ピノころクッキー”。見た目はこんなだけど……味は、どうかな?」

 レオはそれを受け取り、一口。

「……優しい。甘さ控えめで、でも口に残るあったかさ。……まさに、あなたらしいですね」

「わ、うれしい……!」

 「ぴーーー……ぴぴぴーーっ!!!」

 焼きたてピノ(※クッキー)をレオが口にした瞬間、
 本物ピノが横からダッシュしてきて、リィナの足元にダイブ。

「ぴぴぴっ!!!(それ俺だぞ!?)」と全力で抗議。

「ピ、ピノ!? もう、焼きピノじゃないから! 食べてないから!」

 「ぴぴーー!」

 レオは静かに笑いながら、リィナの横でピノを見下ろす。

「……まさか、私に嫉妬してるんですか?」

「ぴぴぴっ!」

「……かわいくて困りますね。焼けますよ、ほんとに」

 リィナはそんな2人(?)のやり取りをぽかんと眺めてから、
 小さく、ころんと笑った。

「うちのお店、にぎやかでいいね」
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