『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』

miigumi

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3章

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■第28話『このまあるさを、信じたい』

 *

 「ピノちゃーん!!」

 放課後。お店の前に駆け込んできたのは、近所の子どもたちだった。

「これ、ピノちゃんにお手紙! クッキーおいしかったって書いたの!」

「この前、私が泣いてたらピノが頭に乗ってきて、泣き止んじゃったの!」

 ひとりひとり、小さな声でピノに感謝を伝えていく。
 折り紙で作った花や、似顔絵、短い手紙。

 ピノは最初、ぽかんとした表情をしていたが――やがてくるんと丸まり、
 「ぴぴ……」と、くちばしで子どもたちの手にそっと触れた。

「……えっ、今、ピノが“ありがとう”ってした!?」

「ほんとにしゃべれるの!? すごい、やっぱり魔法の生き物だ~!」

 その輪の中で、リィナはそっと目を細めた。

(ああ――ちゃんと伝わってるんだ、この子の“優しさ”)

 *

 けれど、店の外には冷たい声もあった。

「……あの子ら、魔物に気を許しすぎてるな」
「見た目が可愛くても、所詮は“異形”だ」

 通りすがりの年配の男性たちが、遠巻きに呟く。
 その声が、リィナの胸にちくりと刺さる。

 (やっぱり……まだ、受け入れられない人もいる)

 「リィナさん」

 そのとき、そっと声をかけたのは、レオだった。

「“全員に理解される”のは、理想論です。でも――“一人でも多くと繋がれる”なら、それは前進です」

「……うん。わたし、諦めないよ」

「……それでこそ、です」

 レオの声には、どこか救われるような温かさがあった。

 *

 夜。閉店後。

 リィナは、使い終えたクッキー型を洗いながら言った。

「レオさんの夢、“魔物と人が共に生きられる世界”って、
 わたし、ちょっとずつ……信じられそうな気がしてきた」

「……リィナさんが信じてくれるなら、私もまだ歩けます」

「それに、ピノもちゃんと“伝えて”る。言葉じゃなくても、想いが伝わるって、すごいよね」

 「ぴっ」
 ピノが誇らしげに胸を張る。

 リィナは笑って、そっとピノの頭をなでた。

 (いつか、この笑顔がずっと続くように――)

 *

 ――そのころ、町外れの石畳を、フード姿の男たちが歩いていた。

「……このあたりか。“勇者の仲間”が身を潜めているというのは」

「“あの白獅子”が庇う少女……興味深い」

「魔物を連れていると聞く。ならば、その真価、確かめてみるとしよう」

 足音が、静かにしろくま通りへと近づいていた。
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