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3章
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■第29話『はじめての“たたかい”と、誓いの証』
*
その日は、焼き菓子の材料を仕入れるために町外れの森の道を歩いていた。
リィナの横にはピノ、そして少し離れてレオが付き添っていた。
最近は“護衛という名の見守り”がすっかり日課になっていた。
「このへん、静かで落ち着くね」
「油断は禁物ですよ。……あっ」
レオが足を止めた瞬間、何かが茂みから転がるように飛び出してきた。
――それは、小柄な体に傷を負った、一体のゴブリンだった。
「っ、ま、魔物……?」
リィナが身構える間もなく、さらにその後ろから数人の男たちが現れる。
黒い外套、鋭い目つき――そして剣を抜いた姿。
「いたぞ、あのゴブリンだ! 逃げやがって……!」
「殺す前に“魔晶”だけでも抜き取っておけよ!」
(……違う。追ってるんじゃない、“狩ってる”)
ゴブリンは、怯えた目でリィナたちを見る。
「う、うぅ……た、たすけ……」
その一言で、リィナの心は決まった。
「――やめて!」
「は?」
「その子は、そんなことされる理由なんてない! 怯えてるだけじゃない!」
「何を言って――貴様、魔物の味方をするつもりか?」
「……する!」
言い切った自分の声に、自分でも驚いた。
でも、足は震えていた。
息も、うまくできていない。
(でも、それでも――)
「レオさん……たすけて……!」
震える声で、リィナは呼んだ。
次の瞬間、風が切られる音。
誰よりも早く動いたのは、やっぱり彼だった。
レオの剣が、男たちの武器を軽やかに払い落とす。
「この者に手を出すな。それ以上は――王国への敵対と見なす」
静かな声に、男たちは凍りついた。
「し、白獅子……っ!?」
「……消えなさい。今すぐに」
男たちは、ゴブリンをひと睨みし、逃げるように森へ消えていった。
*
戦いが終わったあと。
リィナはその場にへたりこみ、肩で息をしていた。
「リィナさん、大丈夫ですか」
「う、うん……でも……」
張りつめていたものがほどけて、
気づけば、涙がぼろぼろと零れていた。
「こわかった……でも、見捨てたくなかった……っ」
レオは黙って、その肩にそっと手を置く。
「あなたは、ちゃんと強くなってます」
「……なれてるかな、わたし」
「“誰かのために立つ”――それだけで、十分です」
ピノが横でそっと寄り添い、頬をつんとつつく。
小さな体のぬくもりが、安心のしるしだった。
*
「……た、たすけ……ありがと……」
傷ついたゴブリンが、よろよろと立ち上がり、
不器用な言葉で頭を下げる。
「おまえ、つよい。こころ、つよい。……ボク、あなた、まもる」
「え……?」
「しぃろい ぴのと、つよいひとと、あなた……ボク、いっしょ、いたい」
両手で胸を叩いて、ぺたんと跪くようにしゃがみこむ。
「忠誠、ちかう」
リィナは驚きながらも、微笑んだ。
「……ありがとう。名前、つけてもいい?」
「う、うん!」
「……じゃあ、“モル”ってどう?」
「モル……モル! ボク、モル!!」
その瞬間、小さな“輪”がまたひとつ、つながった。
*
その日は、焼き菓子の材料を仕入れるために町外れの森の道を歩いていた。
リィナの横にはピノ、そして少し離れてレオが付き添っていた。
最近は“護衛という名の見守り”がすっかり日課になっていた。
「このへん、静かで落ち着くね」
「油断は禁物ですよ。……あっ」
レオが足を止めた瞬間、何かが茂みから転がるように飛び出してきた。
――それは、小柄な体に傷を負った、一体のゴブリンだった。
「っ、ま、魔物……?」
リィナが身構える間もなく、さらにその後ろから数人の男たちが現れる。
黒い外套、鋭い目つき――そして剣を抜いた姿。
「いたぞ、あのゴブリンだ! 逃げやがって……!」
「殺す前に“魔晶”だけでも抜き取っておけよ!」
(……違う。追ってるんじゃない、“狩ってる”)
ゴブリンは、怯えた目でリィナたちを見る。
「う、うぅ……た、たすけ……」
その一言で、リィナの心は決まった。
「――やめて!」
「は?」
「その子は、そんなことされる理由なんてない! 怯えてるだけじゃない!」
「何を言って――貴様、魔物の味方をするつもりか?」
「……する!」
言い切った自分の声に、自分でも驚いた。
でも、足は震えていた。
息も、うまくできていない。
(でも、それでも――)
「レオさん……たすけて……!」
震える声で、リィナは呼んだ。
次の瞬間、風が切られる音。
誰よりも早く動いたのは、やっぱり彼だった。
レオの剣が、男たちの武器を軽やかに払い落とす。
「この者に手を出すな。それ以上は――王国への敵対と見なす」
静かな声に、男たちは凍りついた。
「し、白獅子……っ!?」
「……消えなさい。今すぐに」
男たちは、ゴブリンをひと睨みし、逃げるように森へ消えていった。
*
戦いが終わったあと。
リィナはその場にへたりこみ、肩で息をしていた。
「リィナさん、大丈夫ですか」
「う、うん……でも……」
張りつめていたものがほどけて、
気づけば、涙がぼろぼろと零れていた。
「こわかった……でも、見捨てたくなかった……っ」
レオは黙って、その肩にそっと手を置く。
「あなたは、ちゃんと強くなってます」
「……なれてるかな、わたし」
「“誰かのために立つ”――それだけで、十分です」
ピノが横でそっと寄り添い、頬をつんとつつく。
小さな体のぬくもりが、安心のしるしだった。
*
「……た、たすけ……ありがと……」
傷ついたゴブリンが、よろよろと立ち上がり、
不器用な言葉で頭を下げる。
「おまえ、つよい。こころ、つよい。……ボク、あなた、まもる」
「え……?」
「しぃろい ぴのと、つよいひとと、あなた……ボク、いっしょ、いたい」
両手で胸を叩いて、ぺたんと跪くようにしゃがみこむ。
「忠誠、ちかう」
リィナは驚きながらも、微笑んだ。
「……ありがとう。名前、つけてもいい?」
「う、うん!」
「……じゃあ、“モル”ってどう?」
「モル……モル! ボク、モル!!」
その瞬間、小さな“輪”がまたひとつ、つながった。
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