親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi

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 「ココ。……この家のルールを説明する。そこ、ダイニングチェアに座れ」

 カシエルに促され、私は素直に椅子へ腰かけた。
 彼はそのままキッチンへ向かう。

 ちらりと視線を向けると、冷蔵庫から牛乳を取り出し、調理器具にさらりと魔法をかけていた。
 手際が良すぎて、見ているだけで落ち着く。

 少しして、カシエルがマグカップを持って戻ってきた。

「はい。ホットミルク。熱いから、ふーふーして」

 その言い方が、妙に色っぽく聞こえてしまって、私は慌ててカップに口を近づけた。

 ……落ち着け、私。

「あの、カシエルさん。ルールって……?」

 私は意を決して言う。

「私、あんまり縛られるの嫌です」

 はっきり言えた。
 胸の奥が少しだけスッとした。

 カシエルは一瞬だけ目を細め、ため息をつく。

「ダメだ。未熟天使は貴重なんだよ」

「……貴重?」

「コレクターも多い。狙われる。攫われたら――ココの“大事なもの”を奪われる」

 その言葉に、背中が冷えた。
 自由って、こんなにも簡単じゃないのか。

「だから門限は十八時。鐘が鳴る前に帰ってこい」

「……そんなに?」

「当然だ。行き先と帰宅予定も共有する」

 分かる。分かるけど、嫌だ。
 自由を求めて来たのに、息苦しさがついて回る。

 カシエルは私の表情を見て、少しだけ声を和らげた。

「それと、卒業に向けた訓練をする。座学と実技だ」

「……座学もあるんですか」

 言葉が詰まる。
 私は勉強が嫌いなわけじゃない。でも、“試験”みたいなのは苦手だ。

「どこまでできる?」

 私は正直に答えた。

「座学は全然です。飛ぶのも、さっき初めて飛びました」

 カシエルの目がわずかに見開かれる。

「……聖魔法は?」

「ないです」

 食い気味に返してしまった。

 カシエルは額に手を当てる。

「……分かった。明日からやる。今日は計画を練る」

 そして、ふっと息を吐いた。

「一時間くらいなら街を見てきてもいい。ただし――鐘が鳴る前に帰れ」

「……はい!」

 お言葉に甘えて、私は立ち上がる。

「行ってきます」

 扉を開け、外へ出た。

 *

 外に出ると、もう夕方になっていた。
 現実よりも夕陽が近く感じる。空の色が濃くて、どこか胸がきゅっとなる。

 鐘が鳴る前に帰ればいい。
 そのルールを頭の片隅に置きながら、私は街の探索を始めた。
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