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謁見が終わり、私はウリエルと並んで大神殿を後にした。
街へ戻る道すがら、さっきまで胸に詰まっていたものが、少しずつ重さを増していく。
「ココちゃん。落ち込まないでね。すぐに卒業できる……はずだから」
励ますように言われて、私は小さく頷いた。
自分が拗ねていたことが、今さら恥ずかしくなる。
「……ありがとうございます」
ウリエルは困ったように笑いながら、続ける。
「それまではね。誰かが“保護者”にならなくちゃいけないんだよ」
保護者。
自由を求めて来たのに、自由が条件付きになってしまった。
――それでも、今は仕方ない。
私はふと思いつき、顔を上げた。
「じゃあ、ウリエルが保護者になってよ!」
ウリエルは一瞬だけ目を丸くして、それから苦笑した。
「……ごめんね。ココちゃん。俺はなれないんだ」
「え?」
「ある程度“近い存在”じゃないとダメなんだよね」
意味深な言い方に、私は言葉を飲み込む。
近い存在って、どういう意味なんだろう。
ウリエルは少し考え込んでから、ぽんと手を叩いた。
「……うん。あいつにしようかな」
「決まりましたか?」
不安が胸の奥で膨らむ。
私は思わず問いかけた。
「うん。早速行くよ」
ウリエルはそう言って、私の手を取る。
そのまま街中を歩いていくと、一軒の家の前で足を止めた。
他の家と大差ない、普通の家に見える。
「じゃじゃん。この家にココちゃんは住みます」
「えっ、今決まった感じ!?」
ウリエルはインターフォンを押した。
ピンポーン。
少しして、家主が顔を出す。
「どちら様。うちはセールス禁止で――……あっ、ウリエル?」
金髪で、癖毛は少なめ。
セクシーな雰囲気の男性だった。碧眼で、目元には涙ぼくろ。
「やっほー。カシエル」
ウリエルはいつもの調子で手を振る。
「この子、ココちゃんって言うんだよね。中、入れて」
「……はぁ。入って」
私は小さく頭を下げる。
「お邪魔します」
家の中に入った途端、カシエルさんはウリエルをじろりと睨んだ。
「ココちゃんって、どういうこと?」
ウリエルはあっけらかんと言う。
「身元不明の未熟天使、ココちゃん。卒業するまでは、カシエルが保護者になってね」
「……は?」
「お願い半分、命令半分。よろしくー」
カシエルさんは目を細め、深くため息をついた。
「……はぁ。分かった。卒業までだからな」
私は慌てて一歩前に出る。
「ココです。えっと……カシエルさん、よろしくお願いします」
「……うん」
ぶっきらぼうだけど、拒絶ではない。
少しだけ安心した。
「じゃあね、ココちゃん」
ウリエルはそう言って、あっさり踵を返す。
「あっ……お礼、言い忘れた……!」
止める間もなく、彼の背中は遠ざかっていった。
「大丈夫だよ」
カシエルさんが、優しそうな目で言う。
「ウリエルは、お礼を言われたくて君を助けたわけじゃない」
「……そうなんですね」
私は握りしめた手を胸の前でぎゅっと握った。
「でも、次に会ったら言います!」
その時にはきっと。
“保護者が必要な未熟天使”じゃなくて――
ちゃんと一人で飛べる私になって。
次に会えるまでに卒業しよう。
私はそう心に誓った。
街へ戻る道すがら、さっきまで胸に詰まっていたものが、少しずつ重さを増していく。
「ココちゃん。落ち込まないでね。すぐに卒業できる……はずだから」
励ますように言われて、私は小さく頷いた。
自分が拗ねていたことが、今さら恥ずかしくなる。
「……ありがとうございます」
ウリエルは困ったように笑いながら、続ける。
「それまではね。誰かが“保護者”にならなくちゃいけないんだよ」
保護者。
自由を求めて来たのに、自由が条件付きになってしまった。
――それでも、今は仕方ない。
私はふと思いつき、顔を上げた。
「じゃあ、ウリエルが保護者になってよ!」
ウリエルは一瞬だけ目を丸くして、それから苦笑した。
「……ごめんね。ココちゃん。俺はなれないんだ」
「え?」
「ある程度“近い存在”じゃないとダメなんだよね」
意味深な言い方に、私は言葉を飲み込む。
近い存在って、どういう意味なんだろう。
ウリエルは少し考え込んでから、ぽんと手を叩いた。
「……うん。あいつにしようかな」
「決まりましたか?」
不安が胸の奥で膨らむ。
私は思わず問いかけた。
「うん。早速行くよ」
ウリエルはそう言って、私の手を取る。
そのまま街中を歩いていくと、一軒の家の前で足を止めた。
他の家と大差ない、普通の家に見える。
「じゃじゃん。この家にココちゃんは住みます」
「えっ、今決まった感じ!?」
ウリエルはインターフォンを押した。
ピンポーン。
少しして、家主が顔を出す。
「どちら様。うちはセールス禁止で――……あっ、ウリエル?」
金髪で、癖毛は少なめ。
セクシーな雰囲気の男性だった。碧眼で、目元には涙ぼくろ。
「やっほー。カシエル」
ウリエルはいつもの調子で手を振る。
「この子、ココちゃんって言うんだよね。中、入れて」
「……はぁ。入って」
私は小さく頭を下げる。
「お邪魔します」
家の中に入った途端、カシエルさんはウリエルをじろりと睨んだ。
「ココちゃんって、どういうこと?」
ウリエルはあっけらかんと言う。
「身元不明の未熟天使、ココちゃん。卒業するまでは、カシエルが保護者になってね」
「……は?」
「お願い半分、命令半分。よろしくー」
カシエルさんは目を細め、深くため息をついた。
「……はぁ。分かった。卒業までだからな」
私は慌てて一歩前に出る。
「ココです。えっと……カシエルさん、よろしくお願いします」
「……うん」
ぶっきらぼうだけど、拒絶ではない。
少しだけ安心した。
「じゃあね、ココちゃん」
ウリエルはそう言って、あっさり踵を返す。
「あっ……お礼、言い忘れた……!」
止める間もなく、彼の背中は遠ざかっていった。
「大丈夫だよ」
カシエルさんが、優しそうな目で言う。
「ウリエルは、お礼を言われたくて君を助けたわけじゃない」
「……そうなんですね」
私は握りしめた手を胸の前でぎゅっと握った。
「でも、次に会ったら言います!」
その時にはきっと。
“保護者が必要な未熟天使”じゃなくて――
ちゃんと一人で飛べる私になって。
次に会えるまでに卒業しよう。
私はそう心に誓った。
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