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どれくらい飛んでいただろう。
体感では二、三十分。風に揺られ続けて、腕が少し痺れてきた頃――遠くに“浮いている島”が見えた。
雲の上に浮かぶ白い大地。
その中心には、白を基調とした街並みが広がっている。金色の装飾が陽に反射して、眩しいほどだった。
「そろそろ着くよー!」
ウリエルが楽しそうに声を弾ませる。
「……あの。降り方って、どうすれば……?」
焦って、思わず彼の手を強く握ってしまう。
「ごめんね。言うの忘れてた。えっと……適当に降りれるよ」
にこっと笑う。キラキラしている。
……いや、説明になってない。
文句を言おうとした、その瞬間。
ぐん、と身体が落ちた。
「きゃっ!」
思わず悲鳴が出る。
目を開けたら、街がすぐそこまで迫っていた。
「到着ー!」
手を離された途端、力が抜けて私はその場に座り込んだ。
「こ、怖かった……。地面、ちゃんと……ついてる……」
足が地面に触れていることを確認して、ようやく立ち上がる。
「ココちゃん、大丈夫? そんなに怖いと思わなくてさ。普通の天使なら飛び方わかってるから」
「……え?」
“普通の天使”。
その言葉が引っかかったけれど、聞き返す前にウリエルが話を進める。
「まずはあそこ。大神殿に行くよ。女神様に会うんだ」
白い街の奥に、ひときわ大きな建物が見えた。
空に向かって伸びる尖塔。鐘の音が響き渡り、神々しい空気が漂っている。
「そこでなら、ココちゃんの身元が分かる」
「……はい」
私は歩き出すウリエルの背中を追いかけた。
最初の街と似ているのに、どこか違う。白と金が多いせいか、すべてが眩しく見える。
――ここは、天使の街。
そんな気がした。
*
大神殿――いや、大聖堂の前に立った瞬間、空気が変わった。
さっきまでの街のざわめきが遠くなり、ここだけ音が吸い込まれていくみたいだった。
「女神様に謁見に来た。ウリエルだ。許可を」
いつもの軽い雰囲気は消えていた。
ウリエルの声は、驚くほど真面目だった。
しばらくして、内側から短い声が返ってくる。
「入れ」
重い扉が開く。
私はウリエルと一緒に中へ入った。
そこにいたのは、金髪のウェーブをセンター分けにした女性――女神。
美しいのに、圧がある。視線だけで背筋が伸びた。
「ウリエル。そこの……ちんちくりんの天使は?」
「はい。身元不明の未熟な天使です」
……ちんちくりん。
さらっと言われた。ひどい。
女神は私を上から下まで見て、ふっと笑う。
「身元不明か。そこのちんちくりん、名は?」
「……ココです。あと、ちんちくりんじゃないです」
「ふっ……はっはっはっ。すまんすまん。ココだな」
豪快に笑った女神が、指先を軽く動かす。
次の瞬間、私の身体があたたかな光に包まれた。
足元に魔法陣が浮かび、心臓がどくんと跳ねる。
「……親は、分からん」
「……えっ?」
女神でも分からない?
ウリエルが一気に表情を強張らせた。
「ココちゃん、親の顔……覚えてない?」
「……いえ」
正確には、ここで言う“親”の意味が、よく分からない。
私はこの世界に来たばかりだ。
「……ずっと親の話をするのは、なんでですか?」
恐る恐る口にする。
「私、生きていけますよ? ソロですし」
その瞬間、女神もウリエルも目を見開いた。
女神が腕を組み、低い声で告げる。
「ココ。そなたの髪はブロンズだ。つまり、私の管轄で生まれたはずだ」
「……管轄?」
「さらに、未熟な天使という点。普通なら未熟なのは十歳までに卒業している」
なるほど。
だから、あんなに心配していたんだ。
私は誤解を解こうと、勢いで言った。
「女神様! 私は女神様の管轄じゃないので安心してください!」
……沈黙。
ウリエルが頭を抱える。
「ココちゃん……それはないよ。ブロンズは女神様の管轄内だって言ったでしょ……」
――キャラメイクで言ってほしかった。
いや、そんな仕様ある!?
「……私、大丈夫です!」
明るく言えば、なんとかなると思った。
けれど女神は笑わない。
「ココ。未熟な天使を脱するまで、私の管轄で過ごしなさい」
「……え」
「その後は自由だ」
自由。
その言葉に、胸がきゅっと痛んだ。
私は小さく頷くしかなかった。
「……はい」
仕方ない。
受け入れるしか、道はなかった。
体感では二、三十分。風に揺られ続けて、腕が少し痺れてきた頃――遠くに“浮いている島”が見えた。
雲の上に浮かぶ白い大地。
その中心には、白を基調とした街並みが広がっている。金色の装飾が陽に反射して、眩しいほどだった。
「そろそろ着くよー!」
ウリエルが楽しそうに声を弾ませる。
「……あの。降り方って、どうすれば……?」
焦って、思わず彼の手を強く握ってしまう。
「ごめんね。言うの忘れてた。えっと……適当に降りれるよ」
にこっと笑う。キラキラしている。
……いや、説明になってない。
文句を言おうとした、その瞬間。
ぐん、と身体が落ちた。
「きゃっ!」
思わず悲鳴が出る。
目を開けたら、街がすぐそこまで迫っていた。
「到着ー!」
手を離された途端、力が抜けて私はその場に座り込んだ。
「こ、怖かった……。地面、ちゃんと……ついてる……」
足が地面に触れていることを確認して、ようやく立ち上がる。
「ココちゃん、大丈夫? そんなに怖いと思わなくてさ。普通の天使なら飛び方わかってるから」
「……え?」
“普通の天使”。
その言葉が引っかかったけれど、聞き返す前にウリエルが話を進める。
「まずはあそこ。大神殿に行くよ。女神様に会うんだ」
白い街の奥に、ひときわ大きな建物が見えた。
空に向かって伸びる尖塔。鐘の音が響き渡り、神々しい空気が漂っている。
「そこでなら、ココちゃんの身元が分かる」
「……はい」
私は歩き出すウリエルの背中を追いかけた。
最初の街と似ているのに、どこか違う。白と金が多いせいか、すべてが眩しく見える。
――ここは、天使の街。
そんな気がした。
*
大神殿――いや、大聖堂の前に立った瞬間、空気が変わった。
さっきまでの街のざわめきが遠くなり、ここだけ音が吸い込まれていくみたいだった。
「女神様に謁見に来た。ウリエルだ。許可を」
いつもの軽い雰囲気は消えていた。
ウリエルの声は、驚くほど真面目だった。
しばらくして、内側から短い声が返ってくる。
「入れ」
重い扉が開く。
私はウリエルと一緒に中へ入った。
そこにいたのは、金髪のウェーブをセンター分けにした女性――女神。
美しいのに、圧がある。視線だけで背筋が伸びた。
「ウリエル。そこの……ちんちくりんの天使は?」
「はい。身元不明の未熟な天使です」
……ちんちくりん。
さらっと言われた。ひどい。
女神は私を上から下まで見て、ふっと笑う。
「身元不明か。そこのちんちくりん、名は?」
「……ココです。あと、ちんちくりんじゃないです」
「ふっ……はっはっはっ。すまんすまん。ココだな」
豪快に笑った女神が、指先を軽く動かす。
次の瞬間、私の身体があたたかな光に包まれた。
足元に魔法陣が浮かび、心臓がどくんと跳ねる。
「……親は、分からん」
「……えっ?」
女神でも分からない?
ウリエルが一気に表情を強張らせた。
「ココちゃん、親の顔……覚えてない?」
「……いえ」
正確には、ここで言う“親”の意味が、よく分からない。
私はこの世界に来たばかりだ。
「……ずっと親の話をするのは、なんでですか?」
恐る恐る口にする。
「私、生きていけますよ? ソロですし」
その瞬間、女神もウリエルも目を見開いた。
女神が腕を組み、低い声で告げる。
「ココ。そなたの髪はブロンズだ。つまり、私の管轄で生まれたはずだ」
「……管轄?」
「さらに、未熟な天使という点。普通なら未熟なのは十歳までに卒業している」
なるほど。
だから、あんなに心配していたんだ。
私は誤解を解こうと、勢いで言った。
「女神様! 私は女神様の管轄じゃないので安心してください!」
……沈黙。
ウリエルが頭を抱える。
「ココちゃん……それはないよ。ブロンズは女神様の管轄内だって言ったでしょ……」
――キャラメイクで言ってほしかった。
いや、そんな仕様ある!?
「……私、大丈夫です!」
明るく言えば、なんとかなると思った。
けれど女神は笑わない。
「ココ。未熟な天使を脱するまで、私の管轄で過ごしなさい」
「……え」
「その後は自由だ」
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「……はい」
仕方ない。
受け入れるしか、道はなかった。
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