親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi

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 小鳥のさえずりが聞こえる。
 柔らかな光が瞼の奥をくすぐって、私は寝返りを打った。

「あと、もうちょっと……」

「ココ。朝だ。起きろ」

 低い声が耳に届く。
 それと同時に、ふわっといい匂いがした。

 私は目をこすりながら起き上がり、慌てて身支度を整える。

「おはようございます、カシエルさん」

「おはよう、ココ。眠そうだな」

 テーブルの上には、サンドウィッチと野菜スープ。
 湯気が立っていて、見るだけでお腹が鳴りそうだった。

「……美味しそう」

 思わず口に出してしまう。

「「いただきます」」

 そう言って食べ始めると、どちらも本当に美味しかった。
 温かい。優しい。昨日のシチューと同じように、心まで落ち着く味だ。

 食べ終わったら――いよいよ飛行訓練。

 *

「今から飛行訓練をする。慣れれば飛ぶのは楽になる」

 カシエルさんの言葉に頷いて、私は羽を動かす。
 ――でも、思ったより難しい。

 浮くことはできる。
 けれど、方向も高さも安定しない。

 右へ、左へ、上へ、下へ。
 ふわふわと揺れて、四方八方に飛んでしまう。

 速度も調整できない。
 少し気を抜くと、すぐにバランスを崩して落ちる。

「……っ」

 何度も、落ちた。

「いずれ、自分に合う飛び方が分かる」

 カシエルさんは淡々と言う。

「……本当かな」

 不安が、勝手に口から漏れていた。

 私は唇を噛む。

「何度も落ちて……上達の見込み、ないんじゃないの?」

 言った瞬間、胸が痛くなる。
 悔しくて、目に涙が浮かんだ。

 自由が欲しいのに――空にすら届かない。

 カシエルさんは少しだけ目を細めて、私の頭に手を置く。

「最初はみんな失敗からスタートする」

 ゆっくりと、頭を撫でられる。

「大丈夫だ。俺がココを卒業に導く」

 その言葉に、胸の奥が熱くなった。

 ……そう言われたら、私はもう逃げられない。
 卒業するしかない。

「絶対に、立派に飛んで卒業するからね」

 *

 午後になり、座学が始まった。

「座学って、何をするの?」

 歴史とかかな。そう思いながら聞くと、カシエルさんは頷いた。

「簡単な歴史だ」

 難しい言葉は使わない。
 私にも分かるように、丁寧に、順番に教えてくれる。

 気づけば、どんどん頭に入ってきた。

 ――本当に、卒業に導いてくれてる。

 そう実感して、私は少しだけ前を向けた。

 *

 1日が終わり、私はログアウトした。

「あぁ……すごい、素敵な世界だったな」

 背伸びをして呟くと、ふと思い出す。

「麻希に連絡しなくちゃ」

 慌ててスマホを開き、メッセージを送った。

 『麻希!私、RuneSphere Online(ルーンスフィア・オンライン)やったよ!』

 すぐに返信が返ってくる。

 『ほんと!!意外なんだけど。
  まっ、フレンド登録は私がしておくから、次ログインしたらメニュー見てね』

 『わかった!ありがとう』

 リア友なら事前に登録できる。便利すぎる仕様だ。

 少しして、もう一通メッセージが届いた。

 『そうだ!瑞希、私のゲーム名マリリンだからね』

 ……マリリン。

 なんとなく気になって、私は掲示板で検索してみた。

 ――出てきたのは、見覚えのある名前。

 ランキング上位。
 称号付き。
 誰もが知る、トッププレイヤー。

「……え」

 思わず声が出た。

 やっぱり、麻希は有名人だな。
 私は苦笑いしながらスマホを閉じる。

 早く、ルーンスフィアに戻ろう。

 そう思いながら、私は目を閉じた。
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