もう演じなくて結構です

梨丸

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5 どういうおつもりですか

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 どういうつもりなのかしら。

 セリーヌは乗馬用の服を身に纏い、ルーカスの様子を注視していた。
 ルーカスは他の貴族たちに笑顔を見せている。

 私の前ではあんな顔、したことないのに。

 「セリーヌ、待たせたな」とルーカスはセリーヌに手を振った。

 「どういうおつもりですか?」
 「えっ」

 ルーカスはセリーヌからすっと目線をずらした。
 右往左往に瞳が揺れている。

 婚約破棄を要求してから色んな表情を見せるのね。
 何とも皮肉なものだ。
 なんでそんなに婚約破棄をしたがらないんだろうか。
 婚約破棄をしたら私に合わせることもないのに。

 セリーヌはそんなルーカスに呆れを覚え、馬を指差した。

 「ルーカス様、私たちも行きましょう」

 

 この乗馬大会は馬に乗って森に入り、自然を感じながらゴールを目指すというものだ。
 
 「(意外と紳士的なのね)」

 そうセリーヌが思うほど、ルーカスの馬の操縦は丁寧だった。
 普通、騎士はスピードを重視する。
 乱雑に操縦するだろうと身構えていたセリーヌは拍子抜けだった。

 「気分は大丈夫か?」とルーカスが定期的に声をかける。
 その度セリーヌは適当に返事を返した。

 
 小鳥のさえずりや木の木漏れ日が心地よい。
 
 綿に包まれているみたい。
 ふわふわとしていて、何故か懐かしい。
 
 セリーヌは夢見心地だった。
 婚約破棄を要求したものの、いきなりルーカスへの想いが消えるはずもない。
 これが最後だとしても最愛の婚約者、ルーカスと心地よい時間を過ごす事ができているのだ。

 微睡まどろみかけた瞳でセリーヌがルーカスを見つめる。
 ルーカスの瞳はやはりトパーズのよう。

 やっぱり、好きだなあ。

 そんな気持ちがセリーヌの頭に浮かんだ。


 「そんなに、見つめないでください」
 
 ルーカスの声で我にかえる。
 やはり、ルーカス様は私のことを……。

 「……恥ずかしいので」
 
 ルーカスがボソッと呟き、ルーカスの耳が赤くなる。
 セリーヌは何が何だかわからない。

 ルーカス様は私のことを愛していないのではなかったの。

 セリーヌは戸惑いながらもルーカスに声をかけようとした。
 
 「ルーカ……」
 「セリーヌ!!」

 セリーヌの声はルーカスの怒声のようなものでかき消された。


 ルーカスがセリーヌを突き飛ばす。


 「えっ……」





 セリーヌの頬にが飛び散った。






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