もう演じなくて結構です

梨丸

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18 初めまして

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 マルクは王都騎士団の副団長から降格し、地方へ半年間見習い兵として赴くこととなった。

 「セリーヌちゃん、ごめんね」 
 「しっかり罰を受けて下さい」

 マルクはセリーヌのブレない言動に苦笑しながら、ルーカスの方を見た。

 「ルーカス、ごめん」

 笑みを消し、頭を下げる。

 「……ちゃんと償ってこい」
 「うん」

 返事の後、マルクはいきなりルーカスの耳元で囁いた。

 「に気をつけて」
 
 ルーカスの目が見開かれる。
 
 「まさか……!」
 「それじゃあね、セリーヌちゃん、ルーカス。幸せになりなね」

 マルクが手を振る。
 その手にはもう何も聞くな、という拒絶の念が含まれていた。
 



 「あいつに久しぶりに会うな。楽しみすぎて吐き気がしてくるよ」
  
 その男は完璧な笑みを浮かべていた。
 貴族のご令嬢が見れば一瞬で恋に落ちる様な笑みだった。




 セリーヌとルーカスは屋敷の庭で秋桜コスモスを眺めていた。

 「綺麗……ですね」
 「そう、だな」

 二人とも最早放心状態であった。

 セリーヌは手紙をマルクが偽装し、魔毒を混入させたという事実を知って唖然としたし、ルーカスはルーカスで大切な友人があんな真似をするとは思っていなかった。

 孤児院の子供たちは全員無事全快し、今は孤児院の庭で走り回っているそうだ。
 セリーヌはそのことを聞いて安心したと同時に疑問を覚えた。

 マルクさんが手紙を偽装した理由はわかるとして、何故魔毒を混入させたの。
 魔毒は効き目はあるものの命に関わるほど強いものではなかったし、わざわざなんであんな真似を。

 セリーヌが一人で考え込んでいるとルーカスが頭をポンと撫でた。

 「あまり、気にするな」

 そして目を逸す。
 何か心当たりがあるのだろうか。

 ルーカスの行動に不信感を覚えたセリーヌは問い詰めようと立ち上がった。

 「あの、何か知っていれば……」
 「君がセリーヌかあ」

 突然何者かによってセリーヌの言葉は阻まれた。
 男はセリーヌの顔を覗き込んでこう言った。
 

 「初めまして、僕はラウドーリ。ラウドーリ・レーフクヴィストだよ。そこにいるの異母兄弟、なんだ」


 男はニコリと綺麗な笑みを浮かべ、会釈した。




 マルクの肌が潮風に晒される。

 計画はもう失敗したんだ。
 ももう、懲りたよね。
 
 マルクは願う。
 二人にさらなる波乱が訪れないことを。
 

 

 
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