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一章:さようなら、私の愛したひと
兄と妹
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念の為、指を壁に沿わせて防音魔法をかけてから話しだす。
「フェルニタお兄様、私はラインハルト様と離縁します」
この思いは、お兄様に言っておきたかった。
お兄様の方をチラリと盗み見る。
お兄様は、当たり前だと言わんばかりの顔をしていた。
「それは僕もアリだと思う。まあ、なんにせよ僕はロザリーの意思を尊重する」
予想通りの答えだった。
私が両親に離縁がしたい旨を報告すれば侯爵家との縁を大切にしたいだのなんだの言って反対するに決まっている。私の両親は“そういう人間”だから。それに反してお兄様は何よりも私のことを第一に考えている。もし、私が離縁したいと言えば彼は応援してくれるだろう。
だけど。
「お兄様、本当に宜しいのですか?」
クロツェル家には想像を絶するほどの影響力がある。円満に離縁できなかった場合や、ラインハルト様がゴネた時の対処も考えなければならない。最悪の事態が起これば、お兄様の魔導師人生にも関わってくるのだ。
お兄様は、優しい。
私が何を言おうと肯定してくれる。笑顔でそうだね、と頷いてくれる。
彼の優しさは何よりも強い私の助けになってくれるけれど、それ以上に怖いのものだ。お兄様の優しさが彼自らの首を絞めてしまったらどうしよう、といつも思う。
お兄様が私を大切にするように、私もお兄様が大切なのだ。
「離縁は私だけの問題ではないのです。お兄様のお考えを聞かせてください」
「……、ああ」
お兄様は柔らかい笑みを浮かべた。そして──私の頬に手を当てた。
「──えっ」
驚きのあまり硬直する。
「ロザリー、なるべく早く彼と離縁しよう」
お兄様は清々しいとまで言える爽やかな声を発する。
「ちょ、お兄様、私の話聞いてました……?」
「うん、一言一句ちゃんと聞いていたよ。元々気に入らなかったんだ、アイツの態度」
アイツ、というのはラインハルト様のことだろうか。いきなりの流れに面食らう。
「僕の天使を見てニコリとも笑わないのは人間としての何かが欠けているとしか思えないね。大体──」
話が謎の方向にカーブしていく。
毒、というか最早猛毒を吐こうとするお兄様を必死の思いで止める。
「お兄様のお気持ちは十分わかりました。わかりましたから!」
「それなら良かった」
お兄様は先ほどまでと別人かと疑ってしまいそうになる程麗しい笑顔になった。
「離縁の報告を楽しみにしているね」
……私の兄はどこかおかしいのかもしれない。
「フェルニタお兄様、私はラインハルト様と離縁します」
この思いは、お兄様に言っておきたかった。
お兄様の方をチラリと盗み見る。
お兄様は、当たり前だと言わんばかりの顔をしていた。
「それは僕もアリだと思う。まあ、なんにせよ僕はロザリーの意思を尊重する」
予想通りの答えだった。
私が両親に離縁がしたい旨を報告すれば侯爵家との縁を大切にしたいだのなんだの言って反対するに決まっている。私の両親は“そういう人間”だから。それに反してお兄様は何よりも私のことを第一に考えている。もし、私が離縁したいと言えば彼は応援してくれるだろう。
だけど。
「お兄様、本当に宜しいのですか?」
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お兄様は、優しい。
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彼の優しさは何よりも強い私の助けになってくれるけれど、それ以上に怖いのものだ。お兄様の優しさが彼自らの首を絞めてしまったらどうしよう、といつも思う。
お兄様が私を大切にするように、私もお兄様が大切なのだ。
「離縁は私だけの問題ではないのです。お兄様のお考えを聞かせてください」
「……、ああ」
お兄様は柔らかい笑みを浮かべた。そして──私の頬に手を当てた。
「──えっ」
驚きのあまり硬直する。
「ロザリー、なるべく早く彼と離縁しよう」
お兄様は清々しいとまで言える爽やかな声を発する。
「ちょ、お兄様、私の話聞いてました……?」
「うん、一言一句ちゃんと聞いていたよ。元々気に入らなかったんだ、アイツの態度」
アイツ、というのはラインハルト様のことだろうか。いきなりの流れに面食らう。
「僕の天使を見てニコリとも笑わないのは人間としての何かが欠けているとしか思えないね。大体──」
話が謎の方向にカーブしていく。
毒、というか最早猛毒を吐こうとするお兄様を必死の思いで止める。
「お兄様のお気持ちは十分わかりました。わかりましたから!」
「それなら良かった」
お兄様は先ほどまでと別人かと疑ってしまいそうになる程麗しい笑顔になった。
「離縁の報告を楽しみにしているね」
……私の兄はどこかおかしいのかもしれない。
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