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14 陽だまりのような日々
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翌朝、カーテンの隙間から差し込む柔らかな朝日が、静かな寝室を金色に染めていた。
アリシアは、ルーカスの腕の中で目を覚ました。彼の胸に頬を寄せると、規則正しい鼓動と微かな寝息が伝わってくる。ルーカスはまだ眠っているようだった。
(夢じゃないんだね)
昨夜のことを思い出して、頬が熱くなる。自分でも信じられないような気持ちだったけれど、不思議と後悔はなかった。
むしろ、心が静かで、あたたかい。
そっと体を起こそうとした時、腕に力がこもり、ルーカスが彼女を引き寄せた。
「・・・おはよう、アリシア」
「・・・うん、おはよう、ルーカス」
目を細めて微笑むルーカスの顔に、昨夜よりもほんの少し、大人びた影が見えた。
「なんだか・・・変な感じだね。こうして目が覚めても、君が隣にいるなんて」
「ふふ、私もそう思ってたところ」
「寒くなかった?ちゃんと眠れた?」
「ルーカスの隣だったから、すごくあったかかったわ。あなたは?」
「うん・・・安心して眠れた。たぶん、久しぶりに」
「なら良かった」
「その・・・アリシア、身体の方は大丈夫・・・?」
「!!」
ルーカスの言葉の意味がわかったアリシアは途端に恥ずかしくなり顔を赤くしながら答える。
「・・・大丈夫・・・。ルーカスが優しくしてくれたから」
2人はしばらく、言葉もなく見つめ合っていた。言葉にしなくても伝わるものがある。そんな空気だった。
けれど、アリシアの胸の奥底に、小さな不安が芽を出していた。
(これは現実で、夢じゃない。でも――)
ルーカスは、自分を選んだのではなく、マーガレット様への気持ちから逃げるようにして、自分に縋ったのではないか。
その問いが喉元まで出かかったが、アリシアは唇を噛んで飲み込んだ。
「・・・お腹、すいたね?」
「・・・ああ、うん。何か買いに行こうか」
ルーカスは身を起こし、シャツを拾って羽織った。その仕草に、オリビアは改めてまた赤くなる。昨夜の記憶が身体に残っていた。
そんな彼女を見て、ルーカスは照れたように微笑んだ。
「・・・アリシア。昨夜のこと、僕は後悔してない。ほんとうに」
「・・・ありがとう。私も、よ」
そう言いながらも、心の奥の不安は拭いきれなかった。
~~~~~~~~~~~
薄曇りの朝。
通りを吹き抜ける風に、秋の気配が混じりはじめていた。
アリシアは、寮の門を出たところで空を見上げた。今日は少しだけ早く仕事が終わる。
そう思うだけで、自然と歩調が速まる。
──ルーカスに会いに行ける。
仕事が終わり、ルーカスがいる宿へと向かった。小さなテーブルと寝台、それだけの簡素な部屋。けれど、そこに立つルーカスの姿を見た瞬間、アリシアはその空間すべてが輝いて見えるような気がした。
「よく来てくれたね」
ルーカスは笑って言った。左手に湯気の立つポット、右手はまだ不自由なままだが、工夫してティーカップを出してくれる。
「今日はベンチで少し日向ぼっこでも、どうかな?」
「うん。ちょうど、そういう気分だった」
寄り添って歩く途中、ルーカスは人目を気にするように、ふと距離を取る。アリシアの手がそっとルーカスの袖を引けば、それだけで彼の表情は緩んだ。
まだ日は明るかった。日向で並んで座る。木漏れ日がゆらゆら揺れる中、オリビアが口を開いた。
「ねえ、ルーカス。絵を描きたいって、今も思う?」
彼は一瞬だけ、黙り込んだ。
けれどすぐに、ゆっくりと首を振る。
「思うよ。でも……今の僕には、それを選ぶ余裕がない。まずは、自分で立つことから始めなきゃ」
その横顔に、決意がにじんでいた。
自分の力で生きること。もう、誰かに頼るだけの生き方はしないと──そう言うように。
アリシアは、ただそっと彼の手を握る。
「私、信じてるよ。ルーカスがまた、夢を描ける日が来るって」
ルーカスが目を見開いてアリシアを見つめる。
「アリシアがそう言ってくれると
本当に出来そうな気がしてくるよ」
~~~~~~~~~~~
ある日、ルーカスはアリシアに頼らず、一人で宿を出て仕事探しに出た。
不自由な右手を隠すこともなく、彼は何件もの店や作業場を回った。
門前払いを受けることもあった。
けれど彼は、それでも笑顔を崩さず言うのだった。
「大丈夫です。やってみせますから」
その背中は痩せていて、少し頼りなかった。
でも、誇りだけは、誰にも奪えない強さを持っていた。
そして数日後──
アリシアが勤める商会の会長であるイーサンから、ひとつの提案が届く。
アリシアは、ルーカスの腕の中で目を覚ました。彼の胸に頬を寄せると、規則正しい鼓動と微かな寝息が伝わってくる。ルーカスはまだ眠っているようだった。
(夢じゃないんだね)
昨夜のことを思い出して、頬が熱くなる。自分でも信じられないような気持ちだったけれど、不思議と後悔はなかった。
むしろ、心が静かで、あたたかい。
そっと体を起こそうとした時、腕に力がこもり、ルーカスが彼女を引き寄せた。
「・・・おはよう、アリシア」
「・・・うん、おはよう、ルーカス」
目を細めて微笑むルーカスの顔に、昨夜よりもほんの少し、大人びた影が見えた。
「なんだか・・・変な感じだね。こうして目が覚めても、君が隣にいるなんて」
「ふふ、私もそう思ってたところ」
「寒くなかった?ちゃんと眠れた?」
「ルーカスの隣だったから、すごくあったかかったわ。あなたは?」
「うん・・・安心して眠れた。たぶん、久しぶりに」
「なら良かった」
「その・・・アリシア、身体の方は大丈夫・・・?」
「!!」
ルーカスの言葉の意味がわかったアリシアは途端に恥ずかしくなり顔を赤くしながら答える。
「・・・大丈夫・・・。ルーカスが優しくしてくれたから」
2人はしばらく、言葉もなく見つめ合っていた。言葉にしなくても伝わるものがある。そんな空気だった。
けれど、アリシアの胸の奥底に、小さな不安が芽を出していた。
(これは現実で、夢じゃない。でも――)
ルーカスは、自分を選んだのではなく、マーガレット様への気持ちから逃げるようにして、自分に縋ったのではないか。
その問いが喉元まで出かかったが、アリシアは唇を噛んで飲み込んだ。
「・・・お腹、すいたね?」
「・・・ああ、うん。何か買いに行こうか」
ルーカスは身を起こし、シャツを拾って羽織った。その仕草に、オリビアは改めてまた赤くなる。昨夜の記憶が身体に残っていた。
そんな彼女を見て、ルーカスは照れたように微笑んだ。
「・・・アリシア。昨夜のこと、僕は後悔してない。ほんとうに」
「・・・ありがとう。私も、よ」
そう言いながらも、心の奥の不安は拭いきれなかった。
~~~~~~~~~~~
薄曇りの朝。
通りを吹き抜ける風に、秋の気配が混じりはじめていた。
アリシアは、寮の門を出たところで空を見上げた。今日は少しだけ早く仕事が終わる。
そう思うだけで、自然と歩調が速まる。
──ルーカスに会いに行ける。
仕事が終わり、ルーカスがいる宿へと向かった。小さなテーブルと寝台、それだけの簡素な部屋。けれど、そこに立つルーカスの姿を見た瞬間、アリシアはその空間すべてが輝いて見えるような気がした。
「よく来てくれたね」
ルーカスは笑って言った。左手に湯気の立つポット、右手はまだ不自由なままだが、工夫してティーカップを出してくれる。
「今日はベンチで少し日向ぼっこでも、どうかな?」
「うん。ちょうど、そういう気分だった」
寄り添って歩く途中、ルーカスは人目を気にするように、ふと距離を取る。アリシアの手がそっとルーカスの袖を引けば、それだけで彼の表情は緩んだ。
まだ日は明るかった。日向で並んで座る。木漏れ日がゆらゆら揺れる中、オリビアが口を開いた。
「ねえ、ルーカス。絵を描きたいって、今も思う?」
彼は一瞬だけ、黙り込んだ。
けれどすぐに、ゆっくりと首を振る。
「思うよ。でも……今の僕には、それを選ぶ余裕がない。まずは、自分で立つことから始めなきゃ」
その横顔に、決意がにじんでいた。
自分の力で生きること。もう、誰かに頼るだけの生き方はしないと──そう言うように。
アリシアは、ただそっと彼の手を握る。
「私、信じてるよ。ルーカスがまた、夢を描ける日が来るって」
ルーカスが目を見開いてアリシアを見つめる。
「アリシアがそう言ってくれると
本当に出来そうな気がしてくるよ」
~~~~~~~~~~~
ある日、ルーカスはアリシアに頼らず、一人で宿を出て仕事探しに出た。
不自由な右手を隠すこともなく、彼は何件もの店や作業場を回った。
門前払いを受けることもあった。
けれど彼は、それでも笑顔を崩さず言うのだった。
「大丈夫です。やってみせますから」
その背中は痩せていて、少し頼りなかった。
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