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22 あたたかい夜
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2人で抱きしめ合った後、冬の風がぴたりと止み、世界が一瞬、呼吸を忘れたような静けさに包まれた。
吐く息は白く溶けていくけれど、頬に触れる空気は、彼女の温もりを映してどこか柔らかく思えた。
ルーカスはアリシアの手をそっと、まるで壊れものを扱うように優しく包み込んだまま、指先に少し力をこめた。
その手を、離したくなかった。いや、もう二度と手放したくはなかった。
言葉は要らなかった。ただ寄り添うだけで、互いの鼓動がゆっくりと重なっていく。彼女の肩が、自分にそっと傾いてくる感覚が、胸の奥に染み渡っていく。
アリシアがふと、彼を見上げて微笑んだ。雪が積もる前の澄んだ空に浮かぶ月のような、優しい笑顔だった。
「じつは・・・」
ルーカスは、どこか照れくさそうにうなずきながら、彼のポケットからくしゃくしゃになった給料袋を取り出して見せた。
「今日、給金が出たんだ。アリシアの食べたいもの、なんでもごちそうしたい」
どこか不器用で、けれど誇らしげなその声に、アリシアの頬が少し赤く染まった。
「ほんとう?……気になってたお店があるの。ちょっと、おしゃれだけど……いい?」
「もちろん」
ルーカスの声には自然と笑みが滲み、アリシアも笑った。
ふたりの間に、寒さも遠ざかるほどのぬくもりが満ちていく。
そうしてふたりは、ほの暗くなりはじめた街を肩を寄せ合って歩いた。
店内のあたたかな灯りに包まれて、美味しい料理を味わい、笑い合いながら静かに時間を重ねていく。
箸を置いたアリシアが、ふとルーカスの顔を見つめて微笑む。その笑みには、安堵と幸福、そして少しの戸惑いと決意が混ざっていた。
「……ほんとは、今日はもっと一緒にいたいって思ってるの。・・・でも、ルーカスは仕事が大変だろうと思って……明日も朝は早いでしょう?」
アリシアは、恥ずかしそうに言葉を続ける。
「でも……その……うん・・・ルーカスの部屋に行ってもいい・・・?」
その言葉に、ルーカスの胸が静かに波打つ。
アリシアは不安げに目を伏せたが、ルーカスは黙って彼女の手をぎゅっと握り返した。
「もちろん。歓迎するよ」
お店を出た瞬間、ルーカスはアリシアを
抱きしめてキスをした。
「僕に気遣う必要なんてないよ。僕もアリシアといたいと思っていたんだ」
帰り道、ふたりは言葉少なに歩いた。
けれどその沈黙は不安でも気まずさでもなく、心の奥に宿った、ひとつの想いをそっと育てるための静けさだった。
~~~~~~~~~~~
アリシアを迎え入れたルーカスの部屋は、質素ながら清潔に整えられていた。小さな机に、数冊の本とペン立て。窓辺には枯れかけた観葉植物がひとつ。生活感の中に、どこか寂しげな静けさが漂っていた。
「・・・部屋、あったかいね」
アリシアが窓辺を見渡しながら言うと、ルーカスは照れたように微笑んだ。
「君が来てくれたから、そう感じるだけだよ」
ストーブのぬくもりが、部屋の隅々までじんわりと染み渡っていく。
アリシアのコートを預かりながら、ルーカスはその手をそっと取った。いつものように、でも少しだけ長く、掌を包む。言葉は交わさなくても、心は静かに触れ合っていた。
やがてふたりはベッドサイドに腰を下ろす。部屋の灯りは落とされ、代わりに小さなランプの柔らかな光が、互いの輪郭を優しく浮かび上がらせていた。
「……ルーカス」
呼ばれただけなのに、胸の奥が静かに熱くなる。彼女の声には、なにかを求める響きがあった。
ルーカスはそっと彼女を見つめ、ゆっくりと肩を抱き寄せる。
アリシアは何も言わず、彼の胸に顔を埋めた。鼓動が近くで重なり合う。抱きしめ合うと、お互いの体温を感じ、境目が少しずつ曖昧になっていく。
「君とずっと一緒にいたい」
「・・・わたしも」
囁くようなルーカスの声に、アリシアは頷いた。言葉はなくても、すべてを受け止めているようだった。
手が、頬に触れた。
指が、髪をすくった。
唇が、唇を探した。
そのキスは、今夜が終わらないことを祈るような熱を孕んでいた。
やがて息が絡み、指が服の布越しに肌を求める。アリシアはルーカスの首筋に腕を回し、言葉も声も飲み込んだ。
ベッドへ倒れ込むように身を預け合い、ふたりの吐息が近づき、混ざる。
シャツの裾がめくられ、スカートの皺が伸びていく。布越しの温度が高まり、感覚が鋭くなる。
「……ルーカス……」
その声は、甘く、震えていた。
何度も名前を呼び合いながら、お互いの存在を深く確かめあった。夜の静寂が、ふたりのためだけに広がっていく。
ブランケットに包まれ、肌と肌が触れ合うたび、ふたりの心はより深く溶け合っていく。やわらかく、愛おしい時間――それは夜の深まりと共に、長く長く続いた。
そして、すべてが静かになったあと。
ベッドの中、ルーカスはアリシアの髪を指先でなぞりながら、ぽつりと呟いた。
「……こういう時間が、ずっと続いたらいいのに」
「続くよ。ふたりで、そうしていこう。ね?」
アリシアの囁きが、ルーカスの心に静かに染み込んだ。
抱き合ったまま眠りに落ちるその夜、ふたりの夢はきっと、同じ場所を歩いていた。
吐く息は白く溶けていくけれど、頬に触れる空気は、彼女の温もりを映してどこか柔らかく思えた。
ルーカスはアリシアの手をそっと、まるで壊れものを扱うように優しく包み込んだまま、指先に少し力をこめた。
その手を、離したくなかった。いや、もう二度と手放したくはなかった。
言葉は要らなかった。ただ寄り添うだけで、互いの鼓動がゆっくりと重なっていく。彼女の肩が、自分にそっと傾いてくる感覚が、胸の奥に染み渡っていく。
アリシアがふと、彼を見上げて微笑んだ。雪が積もる前の澄んだ空に浮かぶ月のような、優しい笑顔だった。
「じつは・・・」
ルーカスは、どこか照れくさそうにうなずきながら、彼のポケットからくしゃくしゃになった給料袋を取り出して見せた。
「今日、給金が出たんだ。アリシアの食べたいもの、なんでもごちそうしたい」
どこか不器用で、けれど誇らしげなその声に、アリシアの頬が少し赤く染まった。
「ほんとう?……気になってたお店があるの。ちょっと、おしゃれだけど……いい?」
「もちろん」
ルーカスの声には自然と笑みが滲み、アリシアも笑った。
ふたりの間に、寒さも遠ざかるほどのぬくもりが満ちていく。
そうしてふたりは、ほの暗くなりはじめた街を肩を寄せ合って歩いた。
店内のあたたかな灯りに包まれて、美味しい料理を味わい、笑い合いながら静かに時間を重ねていく。
箸を置いたアリシアが、ふとルーカスの顔を見つめて微笑む。その笑みには、安堵と幸福、そして少しの戸惑いと決意が混ざっていた。
「……ほんとは、今日はもっと一緒にいたいって思ってるの。・・・でも、ルーカスは仕事が大変だろうと思って……明日も朝は早いでしょう?」
アリシアは、恥ずかしそうに言葉を続ける。
「でも……その……うん・・・ルーカスの部屋に行ってもいい・・・?」
その言葉に、ルーカスの胸が静かに波打つ。
アリシアは不安げに目を伏せたが、ルーカスは黙って彼女の手をぎゅっと握り返した。
「もちろん。歓迎するよ」
お店を出た瞬間、ルーカスはアリシアを
抱きしめてキスをした。
「僕に気遣う必要なんてないよ。僕もアリシアといたいと思っていたんだ」
帰り道、ふたりは言葉少なに歩いた。
けれどその沈黙は不安でも気まずさでもなく、心の奥に宿った、ひとつの想いをそっと育てるための静けさだった。
~~~~~~~~~~~
アリシアを迎え入れたルーカスの部屋は、質素ながら清潔に整えられていた。小さな机に、数冊の本とペン立て。窓辺には枯れかけた観葉植物がひとつ。生活感の中に、どこか寂しげな静けさが漂っていた。
「・・・部屋、あったかいね」
アリシアが窓辺を見渡しながら言うと、ルーカスは照れたように微笑んだ。
「君が来てくれたから、そう感じるだけだよ」
ストーブのぬくもりが、部屋の隅々までじんわりと染み渡っていく。
アリシアのコートを預かりながら、ルーカスはその手をそっと取った。いつものように、でも少しだけ長く、掌を包む。言葉は交わさなくても、心は静かに触れ合っていた。
やがてふたりはベッドサイドに腰を下ろす。部屋の灯りは落とされ、代わりに小さなランプの柔らかな光が、互いの輪郭を優しく浮かび上がらせていた。
「……ルーカス」
呼ばれただけなのに、胸の奥が静かに熱くなる。彼女の声には、なにかを求める響きがあった。
ルーカスはそっと彼女を見つめ、ゆっくりと肩を抱き寄せる。
アリシアは何も言わず、彼の胸に顔を埋めた。鼓動が近くで重なり合う。抱きしめ合うと、お互いの体温を感じ、境目が少しずつ曖昧になっていく。
「君とずっと一緒にいたい」
「・・・わたしも」
囁くようなルーカスの声に、アリシアは頷いた。言葉はなくても、すべてを受け止めているようだった。
手が、頬に触れた。
指が、髪をすくった。
唇が、唇を探した。
そのキスは、今夜が終わらないことを祈るような熱を孕んでいた。
やがて息が絡み、指が服の布越しに肌を求める。アリシアはルーカスの首筋に腕を回し、言葉も声も飲み込んだ。
ベッドへ倒れ込むように身を預け合い、ふたりの吐息が近づき、混ざる。
シャツの裾がめくられ、スカートの皺が伸びていく。布越しの温度が高まり、感覚が鋭くなる。
「……ルーカス……」
その声は、甘く、震えていた。
何度も名前を呼び合いながら、お互いの存在を深く確かめあった。夜の静寂が、ふたりのためだけに広がっていく。
ブランケットに包まれ、肌と肌が触れ合うたび、ふたりの心はより深く溶け合っていく。やわらかく、愛おしい時間――それは夜の深まりと共に、長く長く続いた。
そして、すべてが静かになったあと。
ベッドの中、ルーカスはアリシアの髪を指先でなぞりながら、ぽつりと呟いた。
「……こういう時間が、ずっと続いたらいいのに」
「続くよ。ふたりで、そうしていこう。ね?」
アリシアの囁きが、ルーカスの心に静かに染み込んだ。
抱き合ったまま眠りに落ちるその夜、ふたりの夢はきっと、同じ場所を歩いていた。
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