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5 貴方の瞳に映すもの
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「なぜだ」
「・・・あなたの瞳は、私を見ていない」
言葉に棘はなかった。ただ、事実だけを、
静かに伝えるようだった。
「……ミレイアのことを、思っていてください。それが、ラズ様の幸せなら、私は――祝福します」
リリエルは、泣かなかった。
ラズを写すリリエルの灰緑の瞳が静かに揺れた。
この瞳を見つめるのはいつぶりだろうか。
ラズの胸のどこかが、ひどく締めつけられるのを感じた。
ゆっくりと瞬きをするリリエルの瞳から
光を反射する雫が溢れているのに気づく。
リリエルは涙を堪えている。
下を向いた瞬間、蜂蜜色の柔らかな髪が耳から垂れ下がった。
思わず、ラズはその一房の髪を指にかけ、
リリエルの耳にかけていた。
柔らかな髪の感触に、その髪に触れたのはいつだったか・・・
幼き頃、お互いの庭を行き来し、笑い合って遊んでいた日以来だったろうか。
髪に触れられたリリエルは目を大きく見開き驚いた表情でラズを見つめた。
「……少し、時間をくれ。答えを出すには……」
「いいえ、もう……待つのは、やめました」
そう言って、一筋の涙が流れた後、
リリエルは微笑んだ。
悲しみよりも、解放に近い笑みだった。
ラズは、リリエルの流れた涙と微笑んだ表情に思わず息を呑んだ。
彼女の背が離れていく。
このままではダメだ!
いや、どうやってリリエルに
声を掛けたら良いのか・・・
ミレイアに気持ちがあるのに
君と婚約を続けたいと言うのか?
引き止めなければと思えば
思うほど、声を発することが出来ない。
喉が張り付いて、言葉が出ない。
遠ざかるリリエルの背中を見つめ、
扉の向こうに消えたリリエルの気配に
胸を痛める。
引き止められなかった──
そう自分に言い訳をしながら。
そして──
それからしばらく経ったある春の日。
ミレイアが、静かに瞼を開いた。
「……ラズ?」
最初に発したのは、彼の名前だった。
その瞬間、ラズの胸に熱が広がる。
「……目を、覚ましたのか……!」
言葉が震える。ミレイアの目が、自分を映している。
こんなにも、求めていた瞬間だったはずなのに──
何かが、ほんの少し、噛み合わなかった。
ミレイアの吉報に、両親に代わり、家の事をしていたリリエルも駆けつけた。
「ミレイア!あぁ、ミレイア・・・!」
ミレイアを抱きしめて、涙を流すリリエルの姿に、婚約解消を告げられた日の事を思い出す。
ラズは締め付けられるような痛みを感じていた。
「・・・あなたの瞳は、私を見ていない」
言葉に棘はなかった。ただ、事実だけを、
静かに伝えるようだった。
「……ミレイアのことを、思っていてください。それが、ラズ様の幸せなら、私は――祝福します」
リリエルは、泣かなかった。
ラズを写すリリエルの灰緑の瞳が静かに揺れた。
この瞳を見つめるのはいつぶりだろうか。
ラズの胸のどこかが、ひどく締めつけられるのを感じた。
ゆっくりと瞬きをするリリエルの瞳から
光を反射する雫が溢れているのに気づく。
リリエルは涙を堪えている。
下を向いた瞬間、蜂蜜色の柔らかな髪が耳から垂れ下がった。
思わず、ラズはその一房の髪を指にかけ、
リリエルの耳にかけていた。
柔らかな髪の感触に、その髪に触れたのはいつだったか・・・
幼き頃、お互いの庭を行き来し、笑い合って遊んでいた日以来だったろうか。
髪に触れられたリリエルは目を大きく見開き驚いた表情でラズを見つめた。
「……少し、時間をくれ。答えを出すには……」
「いいえ、もう……待つのは、やめました」
そう言って、一筋の涙が流れた後、
リリエルは微笑んだ。
悲しみよりも、解放に近い笑みだった。
ラズは、リリエルの流れた涙と微笑んだ表情に思わず息を呑んだ。
彼女の背が離れていく。
このままではダメだ!
いや、どうやってリリエルに
声を掛けたら良いのか・・・
ミレイアに気持ちがあるのに
君と婚約を続けたいと言うのか?
引き止めなければと思えば
思うほど、声を発することが出来ない。
喉が張り付いて、言葉が出ない。
遠ざかるリリエルの背中を見つめ、
扉の向こうに消えたリリエルの気配に
胸を痛める。
引き止められなかった──
そう自分に言い訳をしながら。
そして──
それからしばらく経ったある春の日。
ミレイアが、静かに瞼を開いた。
「……ラズ?」
最初に発したのは、彼の名前だった。
その瞬間、ラズの胸に熱が広がる。
「……目を、覚ましたのか……!」
言葉が震える。ミレイアの目が、自分を映している。
こんなにも、求めていた瞬間だったはずなのに──
何かが、ほんの少し、噛み合わなかった。
ミレイアの吉報に、両親に代わり、家の事をしていたリリエルも駆けつけた。
「ミレイア!あぁ、ミレイア・・・!」
ミレイアを抱きしめて、涙を流すリリエルの姿に、婚約解消を告げられた日の事を思い出す。
ラズは締め付けられるような痛みを感じていた。
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