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11 再会
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夕暮れが修道院を赤く染めていた。
その日の奉仕を終え、リリエルは礼拝堂の片隅でロザリオを手に祈っていた。
静寂の中、蝋燭の火がわずかに揺れている。
誰もいないと思っていた──その時、小さな音がした。
「……ああ、ごめん。邪魔したかな?」
ふいにかけられた声に、リリエルは顔を上げた。
振り返ると、少し煤けた旅装の男──ユリアンが、扉の陰に立っていた。
彼は礼拝堂に不釣り合いな気だるげな笑みを浮かべている。
「……ユリアンさん。ここは……、修道女以外は……」
「うん、知ってる。ほんとは入っちゃいけないんだろうけど、あんまりにも静かで……つい。
それに──君の背中が、あまりにも綺麗だったから」
リリエルは何も言わず、視線をそらした。
赤く染まるステンドグラスが、彼女の頬に淡い光を映す。
ユリアンは近づくこともなく、その場にしゃがみ込んだ。
まるで、祈る人の邪魔をしないために、自分を小さく見せるように。
「子どもの頃、教会の鐘の音が好きだった。何かこう……すべてを許される気がしてさ。
でも、祈ることそのものは苦手だったんだ。
……何を願っていいか、わからなかったから」
リリエルは、そっとロザリオを胸に戻し、静かに口を開いた。
「祈りは……願いだけではありません。
自分の中の声に耳を澄ませて……何を手放すべきかを、見つけていく、そういった側面もあるのです」
ユリアンは少し目を丸くし、それからふっと息をついた。
「なるほど。」
ユリアンは自分の顎先をなぞりながら
「何を手放すか…か。やっぱり君は、ちょっと特別な人だね。
言葉に重さがある。まるで風に乗せられない石みたいだね。」
(特別な人?、石?)
「私は大したものではございません…
風に乗らない石は……きっと、どこかに留まって、根を張るためのものでしょう。」
その瞬間、ユリアンの目がわずかに柔らかくなった。
彼の表情に浮かぶ笑みは、いつもの軽口ではない、どこか遠い過去を見つめるようなものだった。
「……いいね。
君と話すと、不思議と“何か”に引き止められてる気がするよ。
俺は今まで、どこへでも行けると思ってた。けれど……君のそばにいると、ここにいてもいい気がする」
リリエルは答えなかった。
けれど、胸の奥に何かが微かに灯った気がした。
それは、言葉にしない優しさのようなもの──
そして、二人の間を隔てていた空気が、ほんの少し、静かに溶けていった。
その日の奉仕を終え、リリエルは礼拝堂の片隅でロザリオを手に祈っていた。
静寂の中、蝋燭の火がわずかに揺れている。
誰もいないと思っていた──その時、小さな音がした。
「……ああ、ごめん。邪魔したかな?」
ふいにかけられた声に、リリエルは顔を上げた。
振り返ると、少し煤けた旅装の男──ユリアンが、扉の陰に立っていた。
彼は礼拝堂に不釣り合いな気だるげな笑みを浮かべている。
「……ユリアンさん。ここは……、修道女以外は……」
「うん、知ってる。ほんとは入っちゃいけないんだろうけど、あんまりにも静かで……つい。
それに──君の背中が、あまりにも綺麗だったから」
リリエルは何も言わず、視線をそらした。
赤く染まるステンドグラスが、彼女の頬に淡い光を映す。
ユリアンは近づくこともなく、その場にしゃがみ込んだ。
まるで、祈る人の邪魔をしないために、自分を小さく見せるように。
「子どもの頃、教会の鐘の音が好きだった。何かこう……すべてを許される気がしてさ。
でも、祈ることそのものは苦手だったんだ。
……何を願っていいか、わからなかったから」
リリエルは、そっとロザリオを胸に戻し、静かに口を開いた。
「祈りは……願いだけではありません。
自分の中の声に耳を澄ませて……何を手放すべきかを、見つけていく、そういった側面もあるのです」
ユリアンは少し目を丸くし、それからふっと息をついた。
「なるほど。」
ユリアンは自分の顎先をなぞりながら
「何を手放すか…か。やっぱり君は、ちょっと特別な人だね。
言葉に重さがある。まるで風に乗せられない石みたいだね。」
(特別な人?、石?)
「私は大したものではございません…
風に乗らない石は……きっと、どこかに留まって、根を張るためのものでしょう。」
その瞬間、ユリアンの目がわずかに柔らかくなった。
彼の表情に浮かぶ笑みは、いつもの軽口ではない、どこか遠い過去を見つめるようなものだった。
「……いいね。
君と話すと、不思議と“何か”に引き止められてる気がするよ。
俺は今まで、どこへでも行けると思ってた。けれど……君のそばにいると、ここにいてもいい気がする」
リリエルは答えなかった。
けれど、胸の奥に何かが微かに灯った気がした。
それは、言葉にしない優しさのようなもの──
そして、二人の間を隔てていた空気が、ほんの少し、静かに溶けていった。
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