【完結】祈りの果て、君を想う

とっくり

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41 愛する人と共に

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 朝の光が、修道院の中庭にやさしく降り注いでいた。
花壇には薄紅の花々が揺れ、静寂の中にも小さな命の鼓動が確かに息づいている。

リリエルは白い修道服に身を包みながら、最後の祈りを捧げていた。
静かに組んだ両手。
彼女の瞳は涙を湛えながらも、凛と澄んでいた。

「神よ。どうか、私の歩むこの道に光を。
あなたの元で過ごした日々に、感謝と祝福を」

後ろで院長がそっと微笑んで頷いた。
その視線には寂しさと、深い祝福と、ひとつの誇りが宿っていた。

「リリエル。あなたは、清く、強く、美しく生きてきました。これからも、神があなたの傍にあるでしょう。今度は、愛する人と共に」

 院長の声は、どこまでも穏やかで優しかった。

リリエルはその言葉を胸に抱き、そっと目を伏せる。何度も祈りを捧げたこの聖堂の光の中で、最後に院長の前に立つこと――それが彼女にとって、どれほど意味のあることか、言葉では言い表せなかった。

 リリエルは歩み寄り、両手で院長の手を包み込むように握った。


「ありがとうございました……院長様。
ここがあったから、私という人間が育まれました。ここで、祈りを知り、赦しを知ることができました」

声がわずかに震えた。

リリエルの瞳は澄み切っていた。
涙が溢れても、それは迷いの涙ではない。
感謝と、別れの温かい涙だった。

「私はきっと、どこにいても祈ります。修道服を脱いでも、心は神と共にあります」

「ええ、知っておりますとも」

院長はほほえみ、リリエルの額にそっと手を当てた。

「愛しなさい、リリエル。そして、愛されなさい。神は、人が愛し合うことを、何よりも喜ばれるのですから」

「……はい」

最後の言葉に、リリエルは深く頭を下げた。静かな祝福の中で、彼女の祈りは、新たな人生へと歩み出していった。



修道女たちが並んで見送る中、リリエルはゆっくりと門へと歩みを進めた。

修道院の門が静かに閉じられた。

その音は、まるでひとつの時代に幕を下ろす鐘のようだった。
リリエルは振り返らない。
心の中で何度も別れを告げ、胸いっぱいの感謝を抱いて、真っ直ぐに前を見据えた。

石畳の道を歩くたび、緊張と期待が入り混じった鼓動が高鳴る。
小さな手荷物と、胸の中に抱いた確かな決意。それだけを携えて、彼女は歩いた。

門を抜けた先、白く光の差す小道の向こうに――ユリアンが立っていた。

遠くからでもすぐにわかった。
彼女がどんな姿で現れるかを知っていたかのように、彼はずっとそこにいた。

リリエルの姿を見つけたユリアンが、ゆっくりと歩み寄ってくる。

金の髪が陽に揺れ、漆黒のマントが風にたなびく。
その姿は、まるで誰かの夢のように美しく、凛としていた。

リリエルは小さく笑みをこぼした。
緊張がふと緩み、目に熱いものが込み上げる。

「リリエル……」

ユリアンは静かに彼女の前で立ち止まり、彼女の名を、まるで祈るように呼んだ。

「――来てくれて、ありがとう」

「……私の方こそ、待っていてくださって、ありがとうございます」

 リリエルがそっと一歩踏み出すと、ユリアンは彼女を柔らかく、しっかりと抱きしめた。その腕は、迷いのない決意と、深い愛情に満ちていた。

「リリエル、君を愛している。どんな困難も、一緒に越えていこう。君が、俺の未来だ」

 リリエルはユリアンの胸に顔を預け、そっと目を閉じる。優しい鼓動が耳に届くたび、心が静かに満ちていく。

「はい。私も、あなたと共に生きます。祈りの果てに見つけた、私の光と――共に」   

ユリアンに優しく抱きしめられながら
リリエルは思っていた。

(私の光ーーーそれは貴方) 



風が静かに、花の香りを運んだ。

二人は並んで歩き出す。
もう過去に囚われることなく。
未来を、共に歩んでいくために。

空は澄み渡り、光は、彼らの歩む道を優しく照らしていた。






おわり




※ここまで、読んでくださりありがとうございました。皆さまの応援がとても励みになりました。感謝申し上げます。

拙い文章&物語で、突っ込み所が満載だったかと思います。どうか寛大な気持ちでお見逃しください。

この後、おまけ話が2話続きます。

もう一つのお話の「時計台の約束」も
読んでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。


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