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貴斗と共に先ほど乗車した車で家まで送ってもらい、玄関のドアを恐る恐る開けると部屋から鬼の形相かという表情の母親が出てくる...かと思われたが全くそんな様子もなく「おかえり、心配するからこれからはちゃんと連絡しなさい」と言いながら機嫌よく玄関へと出てきた。
「僕のせいで桐野さんにご迷惑をかけてしまった上に連絡もせず申し訳ございませんでした」
貴斗は頭を深々と下げると母は慌てて顔を上げるように促した。碧は母親の予想だにしなかった態度に怪訝な表情を向けながら隣で神妙な面持ちで謝罪する猫かぶりの貴斗にも呆れていた。
「阿部くんと一緒なら碧も言ってくれれば良かったのに、こちらこそわざわざ送って頂いてごめんなさいね...そうだ時間も時間だから一緒に夕食どうかしら?」
「ちょっと、何言ってんのよっ」
母親の突拍子もないセリフに碧は思わず前のめりの姿勢で抗議すると貴斗は小さく頭を横に振った。
「ありがとうございます、そうしたいのは山々なんですが外に車を待たせてるのでお気持ちだけ受け取らせてもらいます。今日は本当にすみませんでした」
「いいのよー、どうせ碧が鈍くさいことしてそうなったんでしょうから、気にしないでー」
貴斗が再び頭を下げると自分に対して母親からこき下ろされ苛立った感情で視線を逸らし廊下に目をやると壁に寄り掛かり腕を組みながら虹志がじっと此方を睨むように見ていた。
「では、失礼します」
「碧、外までお見送りしてらっしゃい」
碧は母親から指示され渋々外へと出る羽目になった。家の前ではハザードランプを点滅させながら高級車が場違いのように停車している。
「お母さん怒ってなくて良かったよ、電話口では結構怒ってたし。ここで嫌われたら俺もう碧と会えなくなっちゃう」
「いや...」
(あれは貴斗だからだと思うけど...)
貴斗は振り向き微笑みながら碧の頬に指先を掠め、感情が読み取れない曖昧な表情に碧は複雑な視線を送った。
「たか、「行くよ...今日はごめんな」
碧に背を向けそのまま貴斗は車の後部座席へと乗り込み、車は静かに碧の家から遠ざかって行った。
「............」
碧は車が見えなくなるまで外に佇み彼が去って行った方向を見つめていた。
「碧っ!もう阿部くんと一緒なら一緒って言えばいいのにー。あの子、見た目は派手だけど礼儀正しいし言葉遣いとかもしっかりしてるし何と言ってもイケメンっ!!しかも何?外に停まってた車、高級車じゃない!彼良いとこのお坊ちゃまなのね!!阿部くんみたいな彼氏ならお母さん安心できるわー」
(安心って......その安心な阿部くんについさっき襲われてたんですけど)
「何言ってんのよ、彼氏じゃないし。しかも良いとこのお坊ちゃまと私が釣り合うわけないでしょ」
「えっ?そうなの?!あんた何やってんのよ!あんな素敵な男の子滅多に現れるもんじゃないわよ、お姉ちゃんを見てみなさい、仕事ばっかりで浮いた話もなくて、」
「あー、もうわかったから!私疲れてるしとりあえず着替えたいから部屋行くよ」
碧は母親の言動に苛立ちながら会話を途中で中断させ二階へと上がった。階段を上がると廊下で虹志が碧のドア前に背を凭れながら立っていた。
「何?」
「別に」
碧が近づくと虹志はドアから離れ隣にある自身の部屋へと向かった。碧は怪訝な表情で軽く息を吐きドアノブに手をかけると虹志が振り向き碧に話しかけた。
「さっきの...男、前に......やっぱ何でもねー。碧、今度はもう助けてやんねーからな。自分で何とかしろよ」
それだけ一方的に話し虹志は部屋へと入って行った。碧は黙ったまま自身も自室へと入りベッドにそのままダイブし寝転がった。
(最近いろいろあり過ぎて疲れた.....とりあえず着替えなきゃ)
碧は一度起き上がり仕舞ってあった部屋着を取り出した。借りた服からはほんのり貴斗の匂いが香り、払拭するように勢いよく上衣を脱いだ。
(うわ.......)
鏡に映る自身に思わず絶句してしまった。上半身の至る所に紅い所有印が鏤められているのに気づき碧は深い溜息をついた。
「...身体測定なくて良かった、体育は......しばらく休も」
「僕のせいで桐野さんにご迷惑をかけてしまった上に連絡もせず申し訳ございませんでした」
貴斗は頭を深々と下げると母は慌てて顔を上げるように促した。碧は母親の予想だにしなかった態度に怪訝な表情を向けながら隣で神妙な面持ちで謝罪する猫かぶりの貴斗にも呆れていた。
「阿部くんと一緒なら碧も言ってくれれば良かったのに、こちらこそわざわざ送って頂いてごめんなさいね...そうだ時間も時間だから一緒に夕食どうかしら?」
「ちょっと、何言ってんのよっ」
母親の突拍子もないセリフに碧は思わず前のめりの姿勢で抗議すると貴斗は小さく頭を横に振った。
「ありがとうございます、そうしたいのは山々なんですが外に車を待たせてるのでお気持ちだけ受け取らせてもらいます。今日は本当にすみませんでした」
「いいのよー、どうせ碧が鈍くさいことしてそうなったんでしょうから、気にしないでー」
貴斗が再び頭を下げると自分に対して母親からこき下ろされ苛立った感情で視線を逸らし廊下に目をやると壁に寄り掛かり腕を組みながら虹志がじっと此方を睨むように見ていた。
「では、失礼します」
「碧、外までお見送りしてらっしゃい」
碧は母親から指示され渋々外へと出る羽目になった。家の前ではハザードランプを点滅させながら高級車が場違いのように停車している。
「お母さん怒ってなくて良かったよ、電話口では結構怒ってたし。ここで嫌われたら俺もう碧と会えなくなっちゃう」
「いや...」
(あれは貴斗だからだと思うけど...)
貴斗は振り向き微笑みながら碧の頬に指先を掠め、感情が読み取れない曖昧な表情に碧は複雑な視線を送った。
「たか、「行くよ...今日はごめんな」
碧に背を向けそのまま貴斗は車の後部座席へと乗り込み、車は静かに碧の家から遠ざかって行った。
「............」
碧は車が見えなくなるまで外に佇み彼が去って行った方向を見つめていた。
「碧っ!もう阿部くんと一緒なら一緒って言えばいいのにー。あの子、見た目は派手だけど礼儀正しいし言葉遣いとかもしっかりしてるし何と言ってもイケメンっ!!しかも何?外に停まってた車、高級車じゃない!彼良いとこのお坊ちゃまなのね!!阿部くんみたいな彼氏ならお母さん安心できるわー」
(安心って......その安心な阿部くんについさっき襲われてたんですけど)
「何言ってんのよ、彼氏じゃないし。しかも良いとこのお坊ちゃまと私が釣り合うわけないでしょ」
「えっ?そうなの?!あんた何やってんのよ!あんな素敵な男の子滅多に現れるもんじゃないわよ、お姉ちゃんを見てみなさい、仕事ばっかりで浮いた話もなくて、」
「あー、もうわかったから!私疲れてるしとりあえず着替えたいから部屋行くよ」
碧は母親の言動に苛立ちながら会話を途中で中断させ二階へと上がった。階段を上がると廊下で虹志が碧のドア前に背を凭れながら立っていた。
「何?」
「別に」
碧が近づくと虹志はドアから離れ隣にある自身の部屋へと向かった。碧は怪訝な表情で軽く息を吐きドアノブに手をかけると虹志が振り向き碧に話しかけた。
「さっきの...男、前に......やっぱ何でもねー。碧、今度はもう助けてやんねーからな。自分で何とかしろよ」
それだけ一方的に話し虹志は部屋へと入って行った。碧は黙ったまま自身も自室へと入りベッドにそのままダイブし寝転がった。
(最近いろいろあり過ぎて疲れた.....とりあえず着替えなきゃ)
碧は一度起き上がり仕舞ってあった部屋着を取り出した。借りた服からはほんのり貴斗の匂いが香り、払拭するように勢いよく上衣を脱いだ。
(うわ.......)
鏡に映る自身に思わず絶句してしまった。上半身の至る所に紅い所有印が鏤められているのに気づき碧は深い溜息をついた。
「...身体測定なくて良かった、体育は......しばらく休も」
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