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どんなに楽しいことや哀しいことがあっても必ず朝はやってくる...碧は昨日のことの一件で睡眠があまり取れず、気が付けばスマホのアラームが鳴りカーテンの隙間から光が部屋へと入り込んでいた。
(眠り浅くて頭ぼーっとするな...休みたいな、休もうかな)
そんなことを考えながら布団を被ると枕元に置いてあったスマホから通知音が聞こえディスプレイにメッセージが届いたことを知らせる画面が現れた。碧はモゾモゾと動きながら布団の中で確かめると、
“おはよ、昨日はほんとごめんな。身体大丈夫か?辛かったら車で迎えに行くよ”
(ここで休んだら絶対うちに来そうだな...)
貴斗からのメッセージに碧は断りを含めた無難な内容を送り、渋々学校へ行く準備をすることにした。
碧は眠い頭でぼんやりしながら何とか学校に着き教室へ入ると中では亜梨咲と取り巻きたちが貴斗を囲み何やら揉めていた。
「阿部くん酷いよっ!亜梨咲、阿部くんに誕生日祝ってもらえるの楽しみにしてたんだよ、それなのに直ぐ帰っちゃうしそのあと何度も連絡したのにかけ直してもくれないし」
「別に他の連中もいっぱいいたし俺一人抜けたって問題ないだろ?」
「私の気持ち知ってるくせに......楽しみにしてたのにひどいよ」
亜梨咲は両手で顔を覆い泣いているのかそれを見た周りの女子たちは慰めていた。碧はその光景をなるべく視界に入れないように自席へと座った。
「ねえ貴斗...あのあとどこに行ってたの?誰に会ってたの?」
「誰とも会ってないよ...用があったから済ませるのに帰っただけ」
亜梨咲は覆っていた指の隙間から貴斗に目線を送ると貴斗は面倒くさそうに視線を逸らし窓の外を見つめた。その行動に亜梨咲は憎悪を募らせながらも周りに悟られぬよう“可哀想な自分”を演じていた。
☆☆☆
碧は一時間目、二時間目と眠い目を擦りながら何とか耐え、休み時間になり友人の教室へ向かおうと席を立つと今時分終わった授業の教師に呼び止められてしまった。
「桐野と工藤、すまんがそこにある集めたノート職員室の先生の机に置いといてくれないか?今から会議があって急いで行かなくちゃいけなくなってな、悪いが頼む」
教師は碧のたまたま近くにいた大人しめの女子生徒にも声をかけ、二人は教卓に置かれたノートを半分ずつに分け職員室へと向かった。
「桐野さん、顔色悪いけど大丈夫?私もう少し持てるから貰うよ?」
「ううん、大丈夫。寝不足で頭働いてないだけで元気だから」
心配そうに此方を気にする工藤に碧は作り笑顔を向け問題ないことを告げた。工藤もそれ以上は触れることを止め二人は職員室に着き先ほどの教師の机にノートを置いた。
(やばっ、何かクラクラしてきた)
軽く眩暈のようなものが碧を襲い一瞬足元がグラついた。
「工藤さん、やっぱり体調悪いからこのまま保健室寄ってくし戻らなかったら申し訳ないけど次の教科の先生に伝えてもらっていいかな?」
隣にいた工藤にそう伝えると彼女は頷き、一緒に保健室まで付き合うと言ってくれた。
しかし次の授業は移動教室ということもあり遅れると申し訳ないからと碧は「そんな酷くないから一人で行けるし大丈夫だよ、ありがとう」とやんわり断り工藤は後ろ髪を引かれるように碧から離れ教室へと戻って行った。
一人になった碧は蟀谷を押さえながらふらつく足取りで階段を下りていると踊り場付近に誰かが立っているのが見えた。
「桐野さん、どこ行くの?もう授業始まるわよ」
その声に碧はどくん、と心臓が大きく響いたのがわかった。普段の声とは違い碧に対して憎しみ、妬みといった複数の敵意を持った声色と表情を碧へ突き刺すように向けてきた。
「松本さん...ちょっと体調悪くて今保健室に向かうとこで」
碧は得体のしれない恐怖と危機感から壁伝いに身体を寄せ通り抜けようとしたが何故か亜梨咲に通路を塞ぐように立たれた。
「...松本さん?」
「ねぇ、桐野さんと貴斗って今まで接点なかったのに何で最近仲良くなったの?そもそもアンタみたいな地味女が貴斗に引っ付いて迷惑だと気づかない?」
「引っ付かれてるのこっちだし!!」
...なんてことは言えるわけもなく心の中で叫ぶ本音をぐっと堪えた。
「やっとあの三年の女が邪魔しなくなったと思ったのに...大体貴斗と釣り合うとか思ってないよね?!この前までは亜梨咲の傍にいてくれたのに...アンタがちょっかいかけるようになってきてから貴斗変になったのよ、最近付き合いも悪くなって......アンタのせいよ...アンタみたいな女相手にするからおかしくなっちゃったんだわ!だってそうでしょ?!私みたいなタイプと桐野さんみたいなタイプ、普通に考えてどちらか選ぶってなったら一目瞭然でしょ?!そーだ、きっと貴斗、私にヤキモチ焼いてほしくてこんなことしてるのね、だったら理解できるわ、まぁ桐野さんみたいな人をそういう相手に選んだのは理解出来ないけど」
独りよがりで話す亜梨咲に碧は溜息を吐いた。
「貴女、阿部くんのこと好きなのに彼のこと何もわかってないのね。彼、チャラいし女性関係にだらしないところはあるけど人を偏見の目で見る人じゃないし試すようなことはしないと思う...それよりもあなたは彼の何に惹かれたの?もしかして顔だけ?」
碧は無意識にムキになりそうになったのを抑えながら亜梨咲に問いかけた。
少しの間とはいえ中学の時から彼を知っているがいい加減な人ではないしちゃんと真っ直ぐな気持ちで向き合ってくれていたのは外見が変わった今でも伝わっていた。
だからこそ、彼の気持ちを素直に受け止めることができない自分がいる、そんな人だからもし彼を心から想う人が現れたら自分はきっと迷いなく彼を跳ねのけることができるだろう...でも亜梨咲はそれに値する人物とは正直碧の中では思うことができなかった。
「阿部くんは人をちゃんと見れる人だと思う、松本さんは彼の内面じゃなくて外見だけしか見てないんじゃないかな...それじゃあ彼に想いはきっと届かないし本質も見ることなんて出来ない」
「はあ?!何で亜梨咲がアンタみたいなモブにそんなこと言われなきゃいけないのよっ何様?!ふざけんなっ!ちょっと!聞いてんの?!」
(一気に喋りすぎて気分も悪くなってき.......)
碧は片手で片目付近を押さえ、ふらつく身体に容赦ない罵倒を浴びせる亜梨咲から肩を掴まれそのまま碧はふわっと浮いた感覚が身体に纏わり倒れるように階段から落ちていった。
亜梨咲の悲鳴が近くから聞こえていたのが遠ざかり同時に目の奥から闇が広がり意識もなくなっていった。
(眠り浅くて頭ぼーっとするな...休みたいな、休もうかな)
そんなことを考えながら布団を被ると枕元に置いてあったスマホから通知音が聞こえディスプレイにメッセージが届いたことを知らせる画面が現れた。碧はモゾモゾと動きながら布団の中で確かめると、
“おはよ、昨日はほんとごめんな。身体大丈夫か?辛かったら車で迎えに行くよ”
(ここで休んだら絶対うちに来そうだな...)
貴斗からのメッセージに碧は断りを含めた無難な内容を送り、渋々学校へ行く準備をすることにした。
碧は眠い頭でぼんやりしながら何とか学校に着き教室へ入ると中では亜梨咲と取り巻きたちが貴斗を囲み何やら揉めていた。
「阿部くん酷いよっ!亜梨咲、阿部くんに誕生日祝ってもらえるの楽しみにしてたんだよ、それなのに直ぐ帰っちゃうしそのあと何度も連絡したのにかけ直してもくれないし」
「別に他の連中もいっぱいいたし俺一人抜けたって問題ないだろ?」
「私の気持ち知ってるくせに......楽しみにしてたのにひどいよ」
亜梨咲は両手で顔を覆い泣いているのかそれを見た周りの女子たちは慰めていた。碧はその光景をなるべく視界に入れないように自席へと座った。
「ねえ貴斗...あのあとどこに行ってたの?誰に会ってたの?」
「誰とも会ってないよ...用があったから済ませるのに帰っただけ」
亜梨咲は覆っていた指の隙間から貴斗に目線を送ると貴斗は面倒くさそうに視線を逸らし窓の外を見つめた。その行動に亜梨咲は憎悪を募らせながらも周りに悟られぬよう“可哀想な自分”を演じていた。
☆☆☆
碧は一時間目、二時間目と眠い目を擦りながら何とか耐え、休み時間になり友人の教室へ向かおうと席を立つと今時分終わった授業の教師に呼び止められてしまった。
「桐野と工藤、すまんがそこにある集めたノート職員室の先生の机に置いといてくれないか?今から会議があって急いで行かなくちゃいけなくなってな、悪いが頼む」
教師は碧のたまたま近くにいた大人しめの女子生徒にも声をかけ、二人は教卓に置かれたノートを半分ずつに分け職員室へと向かった。
「桐野さん、顔色悪いけど大丈夫?私もう少し持てるから貰うよ?」
「ううん、大丈夫。寝不足で頭働いてないだけで元気だから」
心配そうに此方を気にする工藤に碧は作り笑顔を向け問題ないことを告げた。工藤もそれ以上は触れることを止め二人は職員室に着き先ほどの教師の机にノートを置いた。
(やばっ、何かクラクラしてきた)
軽く眩暈のようなものが碧を襲い一瞬足元がグラついた。
「工藤さん、やっぱり体調悪いからこのまま保健室寄ってくし戻らなかったら申し訳ないけど次の教科の先生に伝えてもらっていいかな?」
隣にいた工藤にそう伝えると彼女は頷き、一緒に保健室まで付き合うと言ってくれた。
しかし次の授業は移動教室ということもあり遅れると申し訳ないからと碧は「そんな酷くないから一人で行けるし大丈夫だよ、ありがとう」とやんわり断り工藤は後ろ髪を引かれるように碧から離れ教室へと戻って行った。
一人になった碧は蟀谷を押さえながらふらつく足取りで階段を下りていると踊り場付近に誰かが立っているのが見えた。
「桐野さん、どこ行くの?もう授業始まるわよ」
その声に碧はどくん、と心臓が大きく響いたのがわかった。普段の声とは違い碧に対して憎しみ、妬みといった複数の敵意を持った声色と表情を碧へ突き刺すように向けてきた。
「松本さん...ちょっと体調悪くて今保健室に向かうとこで」
碧は得体のしれない恐怖と危機感から壁伝いに身体を寄せ通り抜けようとしたが何故か亜梨咲に通路を塞ぐように立たれた。
「...松本さん?」
「ねぇ、桐野さんと貴斗って今まで接点なかったのに何で最近仲良くなったの?そもそもアンタみたいな地味女が貴斗に引っ付いて迷惑だと気づかない?」
「引っ付かれてるのこっちだし!!」
...なんてことは言えるわけもなく心の中で叫ぶ本音をぐっと堪えた。
「やっとあの三年の女が邪魔しなくなったと思ったのに...大体貴斗と釣り合うとか思ってないよね?!この前までは亜梨咲の傍にいてくれたのに...アンタがちょっかいかけるようになってきてから貴斗変になったのよ、最近付き合いも悪くなって......アンタのせいよ...アンタみたいな女相手にするからおかしくなっちゃったんだわ!だってそうでしょ?!私みたいなタイプと桐野さんみたいなタイプ、普通に考えてどちらか選ぶってなったら一目瞭然でしょ?!そーだ、きっと貴斗、私にヤキモチ焼いてほしくてこんなことしてるのね、だったら理解できるわ、まぁ桐野さんみたいな人をそういう相手に選んだのは理解出来ないけど」
独りよがりで話す亜梨咲に碧は溜息を吐いた。
「貴女、阿部くんのこと好きなのに彼のこと何もわかってないのね。彼、チャラいし女性関係にだらしないところはあるけど人を偏見の目で見る人じゃないし試すようなことはしないと思う...それよりもあなたは彼の何に惹かれたの?もしかして顔だけ?」
碧は無意識にムキになりそうになったのを抑えながら亜梨咲に問いかけた。
少しの間とはいえ中学の時から彼を知っているがいい加減な人ではないしちゃんと真っ直ぐな気持ちで向き合ってくれていたのは外見が変わった今でも伝わっていた。
だからこそ、彼の気持ちを素直に受け止めることができない自分がいる、そんな人だからもし彼を心から想う人が現れたら自分はきっと迷いなく彼を跳ねのけることができるだろう...でも亜梨咲はそれに値する人物とは正直碧の中では思うことができなかった。
「阿部くんは人をちゃんと見れる人だと思う、松本さんは彼の内面じゃなくて外見だけしか見てないんじゃないかな...それじゃあ彼に想いはきっと届かないし本質も見ることなんて出来ない」
「はあ?!何で亜梨咲がアンタみたいなモブにそんなこと言われなきゃいけないのよっ何様?!ふざけんなっ!ちょっと!聞いてんの?!」
(一気に喋りすぎて気分も悪くなってき.......)
碧は片手で片目付近を押さえ、ふらつく身体に容赦ない罵倒を浴びせる亜梨咲から肩を掴まれそのまま碧はふわっと浮いた感覚が身体に纏わり倒れるように階段から落ちていった。
亜梨咲の悲鳴が近くから聞こえていたのが遠ざかり同時に目の奥から闇が広がり意識もなくなっていった。
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