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「桐野さんっ!!」
教室を出た碧を追いかけるように飛び出した徳田に後ろから呼び止められた。
「あいつを庇うとかそういうんじゃないけど、本当にあの写真は違うと思うよ。大体彼女とは接点ないし、イベントの時だって彼女と一緒にいるとこ見てない。あいつのことだから『俺と勘違いしてヤキモチでも妬いた?』なんて上から目線で笑って言ってくるに決まってるよ」
「はは、確かに。でもほんと気にしてないから・・・ありがと」
碧は徳田に微笑むとそのまま廊下を歩いて行った。
「・・・・・・」
“貴斗・・・?なんであの子が・・・碧ちゃんと”
あのイベントで芽久の呟くような言葉を近くで聞いていた徳田は、彼女の今まで見たことのない表情に何故か畏怖を覚えたのを思い出す。接点はその時点で確信していたが、無駄に不安を増幅させないためそのことを碧には隠した。
「あいつ・・・何やってんだよ」
碧の小さくなっていく背中を見据えながら徳田は軽く舌打ちをした。
(大丈夫、大丈夫。貴斗に限って有り得ないし。あれは別の男の人、絶対に貴斗じゃない)
今までなら正直こんなことを気にする事はなかった。校内では自分たちの交際は内緒にしている手前、彼の周りには少なからず自分にはない魅力的な可愛らしい女子生徒たちがいつもくっ付いている現場を何度も見ている。
それでも碧を見つけると気付かれないよう彼女たちには見せない表情を自分に向けてくれていた。
でも、今は会うこともままならず声すらほぼ聞けていない。そんな状況下だからなのか今まで感じたことのない不安が碧の中を侵食していた。
碧はすぐさまトイレの個室に入るとポケットからスマートフォンを取り出し貴斗にメッセージを送るため文字を打った。
“今日って忙しいかな?もし時間あれば顔だけでもいいから見たいなと思って”
文字を打ち終わり送信すると今回はすぐ既読がつき貴斗からの返信が届いた。
“ごめん”
いつもならダメであっても文字と一緒にスタンプなどが送られて来ていたが、ここ最近は送られても簡素な言葉しか返って来なくなっていた。そういった一つ一つの積み重ねが碧の心を窮追した。
貴斗からの返信に返事をしアプリを閉じると碧は小さく溜息を吐いた。ディスプレイに映し出された時刻に次の授業が始まる時間が迫っているのに気づきそのままスリープボタンを押すと再びポケットにしまい個室から出た。
☆☆☆
放課後、貴斗から会えないとは言われていたもののやはり直接話がしたく彼の自宅外で待つことにした。
案の定、貴斗は家にはまだ帰宅しておらず家政婦のキヨに中へ入って待つよう促されるも約束もしてない手前それは出来ず帰るふりをし外で待ち伏せする形をとるしかなかった。
(いくら何でもこんなの迷惑だよね・・・とは言え、あっちだって私にしてたし・・・でも、やっぱり迷惑か)
貴斗の今までの行動を想い出し自分の行動に肯定しながらも後ろめたさも拭えず小さく息を吐き出した。スマートフォンのディスプレイ画面には刻々と電車の時間が近づいているのが嫌でも目に入り一旦諦め来た方向へ片足を前へ出し歩み始めた。
「あれ、碧ちゃん?」
貴斗の自宅から数百メートルほど歩いていると前から身に覚えのある端正な顔立ちの男性が碧に声を掛けてきた。
「智広・・・さん?」
染めた髪色が夕焼けで更に明るく赤みを増した智広がコンビニの袋をクロスバイクのハンドルに引っ掛け笑顔で碧の元へ走らせた。
「うちに寄ってたの?貴斗に送ってもらえばいいのにー。いくらまだ明るいからって一人で帰すなんて、ったく大事にしてる割には抜けてるんだよなー、俺と違って」
「あ、いえ・・・そのまだ帰ってないみたいで、私が勝手に・・・えっと・・・そのー・・・」
俯き落ち着かない様子の碧に察した智広は人差し指で頬をポリポリと爪先で掻きながら小さく唸った。
「あー、んー・・・そのさー、ああいうのはお互い様だし。俺もね、あいつに何回か見られたりしてるけど全然気にする素振りもないし、えーっとー、だから俺的には二人のそういうの気にしてないっていうか・・・って配慮ないね、ごめんなさい」
「あっ、いえっ!そんなこっちこそなんかすみませんでした」
互いの謝罪合戦にどちらともなく自然と笑みが零れさっきまでの虚ろな想いが少しだけ和らいだ。
「それより、約束してたんじゃないの?貴斗に連絡した?」
「その・・・そもそも今日会うのは断られてて・・・でも少しだけでも顔見て話せれたらと思って来たんですが・・・約束もしてないですし勝手に来ただけなので帰ります。・・・それで出来れば今日来たこと言わないで下さい。・・・じゃあ、失礼します」
苦笑いを浮かべ軽く頭を下げるとそのまま碧は智広から離れようとした時、自身の腕を掴まれ歩みを阻止されてしまった。
「別に帰んなくてもいいでしょー。帰りは車で送ってあげるし、それに貴斗には偶然碧ちゃんに会って無理やり家に呼んだ、って言えば済むことなんだし・・・ねっ♪」
「え?いや、でも・・・って、あっ、ちょっ!」
「はいはーい、おうちに戻りまーす♪」
そのまま腕を引っ張られ元来た路を再び歩ませられた。
教室を出た碧を追いかけるように飛び出した徳田に後ろから呼び止められた。
「あいつを庇うとかそういうんじゃないけど、本当にあの写真は違うと思うよ。大体彼女とは接点ないし、イベントの時だって彼女と一緒にいるとこ見てない。あいつのことだから『俺と勘違いしてヤキモチでも妬いた?』なんて上から目線で笑って言ってくるに決まってるよ」
「はは、確かに。でもほんと気にしてないから・・・ありがと」
碧は徳田に微笑むとそのまま廊下を歩いて行った。
「・・・・・・」
“貴斗・・・?なんであの子が・・・碧ちゃんと”
あのイベントで芽久の呟くような言葉を近くで聞いていた徳田は、彼女の今まで見たことのない表情に何故か畏怖を覚えたのを思い出す。接点はその時点で確信していたが、無駄に不安を増幅させないためそのことを碧には隠した。
「あいつ・・・何やってんだよ」
碧の小さくなっていく背中を見据えながら徳田は軽く舌打ちをした。
(大丈夫、大丈夫。貴斗に限って有り得ないし。あれは別の男の人、絶対に貴斗じゃない)
今までなら正直こんなことを気にする事はなかった。校内では自分たちの交際は内緒にしている手前、彼の周りには少なからず自分にはない魅力的な可愛らしい女子生徒たちがいつもくっ付いている現場を何度も見ている。
それでも碧を見つけると気付かれないよう彼女たちには見せない表情を自分に向けてくれていた。
でも、今は会うこともままならず声すらほぼ聞けていない。そんな状況下だからなのか今まで感じたことのない不安が碧の中を侵食していた。
碧はすぐさまトイレの個室に入るとポケットからスマートフォンを取り出し貴斗にメッセージを送るため文字を打った。
“今日って忙しいかな?もし時間あれば顔だけでもいいから見たいなと思って”
文字を打ち終わり送信すると今回はすぐ既読がつき貴斗からの返信が届いた。
“ごめん”
いつもならダメであっても文字と一緒にスタンプなどが送られて来ていたが、ここ最近は送られても簡素な言葉しか返って来なくなっていた。そういった一つ一つの積み重ねが碧の心を窮追した。
貴斗からの返信に返事をしアプリを閉じると碧は小さく溜息を吐いた。ディスプレイに映し出された時刻に次の授業が始まる時間が迫っているのに気づきそのままスリープボタンを押すと再びポケットにしまい個室から出た。
☆☆☆
放課後、貴斗から会えないとは言われていたもののやはり直接話がしたく彼の自宅外で待つことにした。
案の定、貴斗は家にはまだ帰宅しておらず家政婦のキヨに中へ入って待つよう促されるも約束もしてない手前それは出来ず帰るふりをし外で待ち伏せする形をとるしかなかった。
(いくら何でもこんなの迷惑だよね・・・とは言え、あっちだって私にしてたし・・・でも、やっぱり迷惑か)
貴斗の今までの行動を想い出し自分の行動に肯定しながらも後ろめたさも拭えず小さく息を吐き出した。スマートフォンのディスプレイ画面には刻々と電車の時間が近づいているのが嫌でも目に入り一旦諦め来た方向へ片足を前へ出し歩み始めた。
「あれ、碧ちゃん?」
貴斗の自宅から数百メートルほど歩いていると前から身に覚えのある端正な顔立ちの男性が碧に声を掛けてきた。
「智広・・・さん?」
染めた髪色が夕焼けで更に明るく赤みを増した智広がコンビニの袋をクロスバイクのハンドルに引っ掛け笑顔で碧の元へ走らせた。
「うちに寄ってたの?貴斗に送ってもらえばいいのにー。いくらまだ明るいからって一人で帰すなんて、ったく大事にしてる割には抜けてるんだよなー、俺と違って」
「あ、いえ・・・そのまだ帰ってないみたいで、私が勝手に・・・えっと・・・そのー・・・」
俯き落ち着かない様子の碧に察した智広は人差し指で頬をポリポリと爪先で掻きながら小さく唸った。
「あー、んー・・・そのさー、ああいうのはお互い様だし。俺もね、あいつに何回か見られたりしてるけど全然気にする素振りもないし、えーっとー、だから俺的には二人のそういうの気にしてないっていうか・・・って配慮ないね、ごめんなさい」
「あっ、いえっ!そんなこっちこそなんかすみませんでした」
互いの謝罪合戦にどちらともなく自然と笑みが零れさっきまでの虚ろな想いが少しだけ和らいだ。
「それより、約束してたんじゃないの?貴斗に連絡した?」
「その・・・そもそも今日会うのは断られてて・・・でも少しだけでも顔見て話せれたらと思って来たんですが・・・約束もしてないですし勝手に来ただけなので帰ります。・・・それで出来れば今日来たこと言わないで下さい。・・・じゃあ、失礼します」
苦笑いを浮かべ軽く頭を下げるとそのまま碧は智広から離れようとした時、自身の腕を掴まれ歩みを阻止されてしまった。
「別に帰んなくてもいいでしょー。帰りは車で送ってあげるし、それに貴斗には偶然碧ちゃんに会って無理やり家に呼んだ、って言えば済むことなんだし・・・ねっ♪」
「え?いや、でも・・・って、あっ、ちょっ!」
「はいはーい、おうちに戻りまーす♪」
そのまま腕を引っ張られ元来た路を再び歩ませられた。
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