交わることのない二人

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サプライズの裏

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 あやめんの名前を聞いてから何回か、トミーに行っては、あやめんにスイーツの感想を聞いた。

 あやめんが美味いって言うものはどれもハズレがなく、毎回あやめんに聞く事も楽しみになっていた。


 その日もいつものように、トミーに行こうと、中を覗くといつも、ほんまにこの人数でやっていけてんのか? ってくらい少ない客が、今日はやたらと多く、珍しく店内は満席になっていた。
 

 何でや? 天変地異でも起きたか? いや、そう言えば今日、商店街でなんかある言うてたな。

 それでか~……やめとこ。


 あやめんに会いたかったなぁ、なんて思いながら、自分に誰かに会いたいって言う感情がある事に驚く。

 母親が死んだ時も、父親がおらんくなった時も、そんな事一回も思った事ないのに。


 そう考えていた時、何処からか『払えへんねんやったら、その身で償ってもらおうか』と言う、チンピラの声が聞こえて来る。

 その声に、え~……真っ昼間から暇なやつやなぁ、と声のした方を見ると、そこにはあからさまにチンピラと言うおっさんと、そんなおっさんに肩を組まれ『こっちきぃ』と連れて行かれそうになっているあやめんがおった。


 その光景を見た瞬間、よく分からん怒りが湧いてき、気づくと『何や、楽しそうな事してるやん。俺も混ぜてぇな』と声をかけていた。

 『何やお前?』と声をかけて来るおっさんは無視し、あやめんに『怪我してへんか?』と聞く。


 すると、あやめんは泣きそうなのを我慢しながら『怪我、してないです』と返す。

 怪我をしてないと聞き、安心するも、おっさんに対しての怒りは収まらない。


 ほんまは全身の骨折って、埋めてやりたいけど、そんな事したらあやめんが怖がってまうよな。

 あやめんが怖がるようなものは見せられんわ。


 そう思い、おっさんの指を一本折る事だけで済ますも、次にまた、あやめんが絡まれんように脅しをかける。

 若月組のこと知ってるみたいやし、指一本折ってるから、下手な真似はせんやろうけど。

 おっさんは逃げて行き、あやめんに『怖かったな。よう頑張った』と声をかけると、あやめんはポロポロと涙を流し出す。


 あのおっさんのせいで、あやめんが泣いてしもうた。

 やっぱ、後であのおっさん探させるか。


 俺はあやめんの涙を拭い『送ってく』と自分の車に乗せた。

 のは良いものの、先からずっと沈黙が続いていた。
 
 
 何でずっと無言なんやろ……さっき、おっさんの指おったし、どっちかって言うと、俺もあのおっさんと同じ部類やから、もしかして怖がられてる……?

 さっきあやめんが泣いたのも、俺の顔見てやったし……。


 それからあやめんを家に送り届けるまで、車内は無言で、その日から一週間が経った。



 やっぱり、行かんほうがいいかな。

 一週間、あやめんを怖がらせてしもたかもしれへんと、トミーに行くのに躊躇をしてたけど、ちょっと顔出すだけと思い一週間ぶりにトミーへと向かう。


 とりあえず、あやめんに会ったら怖がらせへんように……そう思いながらトミーの扉を開くと、直ぐにあやめんと目が合い一瞬驚くも『おはよう、あやめん』と声をかける。

 自分なりに愛想良く出来たと思っていたけど、あやめんは『おはようございます……』とそっぽを向く。


 あかん……やっぱり嫌われてしもうてるわ。

 そう思い予想以上に、ショックを受けながら、とりあえず甘いもの食べよと、いつものメロンクリームソーダとショートケーキを頼む。


 とりあえず謝らな。そんで怖くないで~って腹踊りでもするか?

 いや、あかん。あやめんの中で俺の印象が怖いおっさんに頭のイカれたおっさんがプラスされてまう。

 そうなったら、ほんまにいよいよ嫌われるわ。


 今まで、人に嫌われようがどうでも良かったから、どうすればいいかわからん……。

 そう頭を抱えてた時『お待たせいたしました』と言う声とともに、あやめんはメロンクリームソーダとショートケーキ、それから頼んでないフォンダンショコラを机に置く。


 フォンダンショコラ?
  
 『頼んでへんで?』とあやめんに言うと、あやめんは『これは、僕からです……』と言うと、この前チンピラから助けてくれたことへのお礼だと言う。


 その事に驚く俺にあやめんは『いらなかったら残してもらってもいいんで……!』と慌てたように言う。

 そんなあやめんに『いや……』と言うと『俺はてっきり、怖がられてしもたもんやと思ってたから、びっくりして……』と伝える。


 車内でずっと無言やったし、泣かせてしもうたし、絶対怖がらせたって思ってたのに。

 そう言う俺にあやめんは『違います!! 大学生になって、人前で大泣きしたことの恥ずかしさと、助けてもらった上に、家まで送ってもらった事への申し訳なさのせいで、僕が勝手に気まずくなってただけなんです!』と珍しく大きめの声を出し言う。



 『それに、顔見て泣いたのも、怖くてじゃなくて……あ、安心、したから……』



 俺の顔見て安心したから……初めて会った時、あんなに怖がってたのに。

 予想外の言葉に、嫌われてないと言うことへの安心感から俺は思わず笑う。


 『何笑ってるんですか……』と睨んでくるあやめんに、謝りながらも、何かおかしくなって笑ってしまう。

 笑い続ける俺を更に睨むあやめん。


 ほんま『菖蒲くんは可愛いな』と口から出ていた。

 その言葉にあやめんは『……可愛くありません』と怒ったように言う。


 そんな所も可愛いけど、これ以上言ったら、嫌われてしまいそうやな。

 俺は『ありがたく頂くわ。あやめんの気持ち』と言う。



 『出来てたの出しただけですけどね』

 『それでも嬉しい。ありがとう』



 そう笑うと、あやめんも笑い、そんなあやめんを見てもっと笑ってる顔が見たくなった。



 そんなやり取りがあった日から、俺とあやめんは、二人でスイーツを食べにいく仲になっていた。

 成り行きは、俺がほぼ強制的にあやめんをパンケーキ屋に連れて行った事。


 毎度、俺のチョイスにあやめんは嫌そうにしながらも、何だかんだ付き合ってくれていた。



 『なぁ、晴臣。トゥンカロン食べたいねん。トゥンカロン買ってきて』



 親父の家で、あやめんと次食べに行くところを探してた時、お嬢が勢いよく、部屋の襖を開けたかと思えば聞き馴染みのない単語を言い出す。

 『何ですか? その謎の響きのお菓子は』と言う俺に続け、親父や他の奴らも『トゥカローン??』『マリトッツォォォオなら知ってんで』と騒つき出す。


 そんな俺らを見たお嬢は『これやからおっさんは……』と盛大にため息をつく。

 そんな中、組員の中でも歳が若いもんが『最近の間で流行ってるやつですよね?』と言う。


 若い人の間で流行ってる? そんなん聞いたことないわと『俺も若いけど知らんわ』と言うと、お嬢は何言うてんねんお前と言いたそうな表情を浮かべ『え? 何言うてんの、晴臣はおっさんやろ』と言ってくる。


 その言葉に驚き俺はしばらくフリーズし、お嬢に『待って。俺っておっさんなんですか?』と聞くも、お嬢は『あーあ、トゥンカロン食べたいなー』と俺の話を聞いていない。



 『まじで……俺っておっさんなん……』



 そう頭を抱える俺に『おっさんやで』と肩に手を置いてくるオジキ。



 『まぁじで~……』



 そう落ち込む俺を無視し、お嬢は『トゥンカロンも知らんおっさんたちとか嫌やわ。彼氏と会お~』と部屋から出て行こうとし、すかさず親父が『雅! 刺青入ってない男は認めん言うたやろ!!』と止める。

 そんな親父にお嬢は『刺青入ってるんなんかほぼヤクザやろ。嫌やわ』と言って出て行く。


 二人のやり取りを聞いていた若いのが『この前組長、刺青入ってる男はあかん言うてませんでした?』とコソッと言ってき、俺は『入ってても入ってなくてもあかんねやろ。』と返す。



 そんな事があり、俺は直ぐにあやめんをトゥンカロン屋さんに誘い、トゥンカロンを食べにきていた。

 そして、気になっていた29はおっさんなんか問題をあやめんに聞くも、あやめんは『まぁ、正直。僕と晴臣さん10個も離れてるから、僕からしてもおっさん、ですよね』と容赦なく言ってき、俺は見事におさハラを受けた。



 しばらく話をしていた時、あやめんのスマホが鳴り、あやめんは『すみません』と断り、画面を確認する。

 そんなあやめんを、そう言えばあやめんの連絡先知らんな。なんて思いながら見てると、あやめんが『う、わー……まじか……』と眉を顰めるもんやから、何かあったんかと尋ねる。


 どうやら、あやめんの好きなお笑い芸人のライブに当たらんかったらしく、そういや好きや言うてたなと『お笑いが好きやねんやったな。なんて言う芸人のライブなん?』と聞くと、あやめんは悔しそうに『おおきに倶楽部って言う、関西の芸人で。大阪でもライブやるんですけど、それも当たらなくて』と説明する。


 おおきに倶楽部? 何かどっかで聞いたことあるな。

 そんな事を考えながら、トゥンカロンを食べ終え、あやめんを家まで送り届け、組長宅に寄る。



 『そう言えば高良たから、この前、彼女と行く予定やったけどあかんなった言うてた芸人のライブあるやん? あれ誰の?』



 親父の肩を揉む高良にそう聞くと、高良は『おおきに倶楽部ですけど……それがどうしたんですか?』と聞き返してくる。

 やっぱり。と俺は『チケット余ってるんやんな? 二枚分けてくれへん?』と頼む。


 すると高良は『いいですけど……紫藤さんがいつも女の子たちと行ってる焼肉屋さん、今度連れてってくださいね。』と交換条件を出してくる。



 『えぇ……野郎の顔見ながら高い肉食べんの嫌やわ』

 『じゃあ、おおきに倶楽部のチケットは山南やまなみにあげるんで、あげれません。』



 そう言う高良に『……山南は何と交換なん?』と聞くと、高良は『サモエドカフェに連れてってくれるって』と言う。
 

 
 『サモエド? 何やそれ。』

 『今流行りの犬っす』

 『おぉ……もふもふでかわええなぁ。』



 あやめんが好きそうやな、ええの知れたわ。今度連れて行こ。

 俺は『ええの知れたし、焼肉連れてったるからちょうだい』と言うと、高良は『よっしゃぁ……!』とチケットを譲ってくれることになる。


 そんな会話を側でずっと聞いてた親父が『何や、晴臣。俺も連れてってぇな、その高級焼肉屋』と言ってくる。



 『えぇ……親父も行ったことある所ですよ。親父が連れてってくださいよ』

 『何や冷たいなぁ』



 親父はそう言うと、タバコに火をつけると『そんな事より、お前がお笑いに興味あるなんか珍しいな。新しい女でもできたんか?』と聞いてくる。



 『いや、そんなんちゃいますよ。もっとちゃんとしたやつです』

 『……まぁお前の人たらしは今に始まった事やないからええけど。ケーキは一日三個までやで』



 親父はそう言うと、口から煙を吐く。

 そんな親父に俺は『分かってますよ~』と部屋から出る。


 そして早速あやめんの事をライブに誘い、約束の時間にトミーの前であやめんと会う。

 あやめんは、どこに行くか気づいてなくて、そんなあやめんを、喜んでくれるかなって見ているうちに目的地に着く。


 『ついたで』と足を止めると、あやめんは『え……』と驚いた表情を浮かべる。

 そんなあやめんに『ここが、今日あやめんを連れて来たかった場所や』とチケットを渡すと『こ、これって……おおきに倶楽部のライブチケット……!!』と驚きながら言う。


 その顔が見たかってん。そう思いながらあやめんを見て言う。



 『サプライズ大成功や』

 
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