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都市伝説になる/テーマ:ニセモノ
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私の周りでは、とある噂が広がっていて、それは遂に噂の域を超えて現実だと知らされた。
ここ暫くずっと、同じニュースばかりがテレビで流れている。
自分とそっくりな人間を見たという人が次々に亡くなっているという内容。
まるでドッペルゲンガー。
自分と同じ人間が三人いるというあれだけど、都市伝説がニュースにまでなっても、自分の知り合いでそっくりさんを見たなんて聞かないし、現実味を感じていなかった。
「私、自分のそっくりさん見かけたんだ」
友達二人と話していたとき、一人が突然そんなことを言い出すものだから、時間が止まったような空気になる。
けどそれは、もう一人の友達の笑い声でかき消された。
「あー、アンタは数日後にはいなくなるのか」
「ちょっと、勝手に殺さないでよ」
二人が笑いながら話す姿を見ながら私も笑っていた。
その数日後、友達は亡くなった——。
私ももう一人の友達も、身近で初めて起きた事に恐怖を感じ、その日から会話はしていない。
ただの噂はニュースとなり、そして友達が亡くなったことで次は自分の番なんじゃないかと思い始めた。
いつ遭遇するかわからない毎日。
家に閉じ籠もりたくてもそれを家族が許すはずもなく、学生は学校に、社会人は職場へ行く。
いつ自分の番が来るのかという不安と恐怖を心に秘めて。
テレビをつければ自分のニセモノの話ばかり。
私はテレビを見ることをやめた。
そんなある日の帰り道、私は遂に自分そっくりな人を見てしまった。
翌日も、その次の日も、私は同じ場所で自分を見かける。
話通りなら、私は死んでしまう。
見かけた数日後に亡くなるという共通点。
既に三日目で後はない。
私は震える手をギュッと握り締め、自分へと近づく。
殺される前に、殺してしまえば助かるかもしれない。
ナイフを握った手を何度も何度も振り下ろす。
「その後、学生は警察に取り押さえられました。供述によりますと『ニセモノを殺した』と述べており——」
私の話を聞いた警察は「あの人は普通の一般人だ」なんて言っているけど、あれは間違いなく私。
あんなにそっくりなニセモノが一般人なわけがない。
その後は牢屋に入れられたけど、これで私は助かったんだと喉を鳴らし笑う。
ずっと怯えていた恐怖がこんな簡単に亡くなるなら、最初からこうしていればよかったんだ。
「速報です。刃物で刺された女性ですが、搬送中に死亡が確認され——」
俯いていた私はどうやら眠っていたらしい。
顔を上げれば、私がニヤリと笑っていた。
「臨時ニュースです。今日の午後、女性を刃物で刺したとされる学生が牢屋の中で亡くなっているのが発見され——」
まるで固定されたように、全身だけでなく瞳さえも動かせず、恐怖で歪む私の顔をニセモノは楽しむように眺めている。
朦朧としてきたからだろうか。
ふと違和感に気づく。
私の目の前にいるニセモノは、見える範囲で何処にも傷を負った形跡がない。
なにより、まだ数時間しか経っていないというのに、今この場にいる事自体ありえない。
たとえ一命をとりとめていたとしても、動けるような状態ではないはず。
最後の瞬間までニセモノを瞳に映し続けた私は、意識が途絶える瞬間ようやく理解した。
この世には、自分にそっくりな人が自身を含めて三人存在し、そのうち二人が出会うと死んでしまう。
一人は私が刺した相手。
もう一人は、今私の目の前にいる。
そっくりな自分二人が出会ったら死ぬ。
なら、三人目は如何なるのか、答えは——。
《完》
ここ暫くずっと、同じニュースばかりがテレビで流れている。
自分とそっくりな人間を見たという人が次々に亡くなっているという内容。
まるでドッペルゲンガー。
自分と同じ人間が三人いるというあれだけど、都市伝説がニュースにまでなっても、自分の知り合いでそっくりさんを見たなんて聞かないし、現実味を感じていなかった。
「私、自分のそっくりさん見かけたんだ」
友達二人と話していたとき、一人が突然そんなことを言い出すものだから、時間が止まったような空気になる。
けどそれは、もう一人の友達の笑い声でかき消された。
「あー、アンタは数日後にはいなくなるのか」
「ちょっと、勝手に殺さないでよ」
二人が笑いながら話す姿を見ながら私も笑っていた。
その数日後、友達は亡くなった——。
私ももう一人の友達も、身近で初めて起きた事に恐怖を感じ、その日から会話はしていない。
ただの噂はニュースとなり、そして友達が亡くなったことで次は自分の番なんじゃないかと思い始めた。
いつ遭遇するかわからない毎日。
家に閉じ籠もりたくてもそれを家族が許すはずもなく、学生は学校に、社会人は職場へ行く。
いつ自分の番が来るのかという不安と恐怖を心に秘めて。
テレビをつければ自分のニセモノの話ばかり。
私はテレビを見ることをやめた。
そんなある日の帰り道、私は遂に自分そっくりな人を見てしまった。
翌日も、その次の日も、私は同じ場所で自分を見かける。
話通りなら、私は死んでしまう。
見かけた数日後に亡くなるという共通点。
既に三日目で後はない。
私は震える手をギュッと握り締め、自分へと近づく。
殺される前に、殺してしまえば助かるかもしれない。
ナイフを握った手を何度も何度も振り下ろす。
「その後、学生は警察に取り押さえられました。供述によりますと『ニセモノを殺した』と述べており——」
私の話を聞いた警察は「あの人は普通の一般人だ」なんて言っているけど、あれは間違いなく私。
あんなにそっくりなニセモノが一般人なわけがない。
その後は牢屋に入れられたけど、これで私は助かったんだと喉を鳴らし笑う。
ずっと怯えていた恐怖がこんな簡単に亡くなるなら、最初からこうしていればよかったんだ。
「速報です。刃物で刺された女性ですが、搬送中に死亡が確認され——」
俯いていた私はどうやら眠っていたらしい。
顔を上げれば、私がニヤリと笑っていた。
「臨時ニュースです。今日の午後、女性を刃物で刺したとされる学生が牢屋の中で亡くなっているのが発見され——」
まるで固定されたように、全身だけでなく瞳さえも動かせず、恐怖で歪む私の顔をニセモノは楽しむように眺めている。
朦朧としてきたからだろうか。
ふと違和感に気づく。
私の目の前にいるニセモノは、見える範囲で何処にも傷を負った形跡がない。
なにより、まだ数時間しか経っていないというのに、今この場にいる事自体ありえない。
たとえ一命をとりとめていたとしても、動けるような状態ではないはず。
最後の瞬間までニセモノを瞳に映し続けた私は、意識が途絶える瞬間ようやく理解した。
この世には、自分にそっくりな人が自身を含めて三人存在し、そのうち二人が出会うと死んでしまう。
一人は私が刺した相手。
もう一人は、今私の目の前にいる。
そっくりな自分二人が出会ったら死ぬ。
なら、三人目は如何なるのか、答えは——。
《完》
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