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第0章 神在月の占い師(かみなきせかいのうらないし)
第46話 真実
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船から降りて海岸を右手に北へと進んでいた。
俺も普段の釣りの時とは違い皮鎧を着用しているが、ティファとアイリスも漁の時の軽装とは違い、素足が出ないパンツスタイルにローブを着用、冒険者御用達のブーツも着用していた。
久しぶりに見る服装だが、アイリスの白かったローブはあちこちが泥で汚れてしまっていた。
アイリスは髪が邪魔にならないようにポニーテイルに、ティファは後ろで一つに束ねた後、左で留め、後頭部を通して右に留めて垂らしていた。
普段と違う服装と髪型を見て、こんな状況なのに女子のお洒落に少しドキドキした。
100メートルも進むと見た事も無い景色が広がっており、俺は思わず苦笑いをした。
女性陣の護衛を目的としていたとは言え、こんなに近くすら足を運んだことが無かったとは、我ながら呆れた話しだった。
岩場には絡まった釣り糸や餌が散らばっており、リック達が真面目に釣りをしていた形跡が見て取れた。
「やれやれ、こういうのを放置すると鳥が怪我するんだっての」
船員の一人がぼやきながら釣り糸を回収していく。
俺達はその何気ない光景を横目に、さらに北へと足を進めた。
潮風が強くなり、波が岩に当たって砕ける音が不気味に響いた。
船員達のペースに合わせてゆっくり進み、1時間程歩くと島の北端に到達した。
「崖っていうのはアレの事か?」
今俺達が立っているのは島の北端。
アレと言ってラシードが指を差しているのは、南に見える山の斜面だった。
「思ってたより高いのね」
ティファが意外そうに呟いた。
俺もラシードが見つめる先、山の斜面に目を向けた。
「リック達の話しにあった崖だな。 あそこからなら島の全体が見渡せるかもしれないな」
「あぁ、だがあそこへ登るのは骨が折れそうだ。 まずはこのまま海岸線を進んで、本当にここが島なのかどうかを確かめるのが先決だろう」
ラシードは山刀の柄に親指を掛けながら、現実的な判断を下した。
思いのほか悪路を進むが、船員達は誰一人として音を上げる事無くついて来る。
島の西側を南へと進むと、海岸線は段々切り立った崖になり、目の前は鬱蒼とした林になってきた。
「ちっ、ここから先は進めそうにねぇな」
ラシードは行く手を阻む崖と、そのすぐ脇に広がる林を交互に見比べて忌々し気に舌打ちした。
「でもここ、リックさん達は抜けたんですよね?」
アイリスが不思議そうな顔でそう言うと俺達は思わず顔を見合わせた。
「本当にここを抜けたのか?」
ラシードはそう言うと鬱蒼と茂った雑草を山刀で薙ぎ払う。
「それ、足跡か?」
船員の一人がラシードが草を刈った地面を指差して言う。
確かに金属鎧で踏まれたような足跡がしっかりと残っている。
「あいつら、マジか」
リック達に懐疑的だった船員達の声色に変化を感じた。
ちゃんと島の調査をした痕跡が確かに残っていたのだ。
それはラシードも同じ事だったらしい。
「おい、お嬢さん達が歩きやすい様に草を刈りながら行くぞ」
ラシードは船員達にそう声を掛けると、山刀を振るいながら木の間を進む。
船員達もナイフで草を切り、草を踏み倒しながら後に続く。
ティファとアイリスは軽く笑い合うと、船員達が踏み固めた道を歩き始めた。
二人の言いたい事は聞かなくても分かった。
そこまでしてくれなくても良いけど、気持ちは受け取っておく、といったところか。
俺はその後ろを黙ってついて行く。
今のところ、周囲には何の気配もしないが、用心するに越した事はない。
林の中は想像以上に鬱蒼としていた。
頭上を覆う木の葉が陽の光を遮り、昼間だというのに薄暗い。
秋の冷たい空気が肌を刺し、鳥や虫の声すら聞こえて来ない。
時折、手のひらほどもある大きな蜘蛛が巣を張っているのが目に入るだけで、虫や鳥の声も気配も殆どない。
ラシード達の草刈りは雑にはなったが、スピードは増して来た。
リック達の足跡は落ち葉や草に隠れて見えなくはなっていたが、彼らがこの辺りを通ったであろう事は誰も疑いはしなかった。
時折急な傾斜に足を滑らせながら進むこと2時間、見覚えのある砂浜に出た。
島の最南端に到達したようだ。
この瞬間、ここが間違いなく島である事が確定した。
「あは、やっぱり島でしたね…」
アイリスが力無く笑い、呟く。
「ここまでは来た事があるようだな」
ラシードが俺達の反応を見て声を掛けて来た。
「ディアルとドナルドを探した時に、ね」
ラシードにそれだけ答えると、俺達は砂浜をゆっくりと歩き始めた。
ラナが貝殻を拾っていた姿が目に浮かぶ。
誰がこんな状況を予想出来ただろう…
予想…?
俺は脳裏をよぎった疑問を表情に出さないようにする為にかなりの自制を余儀なくされた。
ティファはこの状況を占いで知っていたのだろうか?
数歩先を歩くティファの横顔は垂らされた髪に遮られてよく見えないが、一時期、随分と熱心に占いをしていたのを思い出していた。
ティファの事まで疑い始めた自分にうんざりし、その思い付きを振り払う様に頭を振った。
その時、不意に隣から小さな声がした。
「…どうかしたんですか? 颯竢さん?」
見ると、いつの間にかすぐそばまで来ていたアイリスが、心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「いや、何でも無いんだ。 少し考え事をしていただけさ」
俺はそう言って、努めて穏やかに微笑んで見せた。
砂浜を東へ抜け、海岸線を北上すると、船のマストが見えてきた。
ラシードの表情は硬いが、ここが島だという事は途中から確信があったからだろうか。
それほどショックを受けている感じではない。
俺達が島の探索をしている間、もしかして船が荒らされるのでは無いかとも思っていたが、結局何も変化は無かった。
船内を一通り確認し終わると、食堂から良い香りがしてきた。
「朝食ってないから腹減ってもう無理だ…」
毒を疑って朝食を食べなかった船員が音を上げる。
「食いたくない奴は食わなくて良いからな」
オスロ―は強気にそう言うと、テーブルにカジキの切り身と貝を焼いたものを大皿に盛って置いた。
確かに銘々に盛るより残る心配もなく、毒の混入の心配も少ないように思えた。
「食わないと飢えて死ぬけど、毒が入って無ければ食っても死なない、なら食うさ」
腹を減らした船員はそう言うと貝とカジキの切り身を手掴みで貪り喰い始めた。
「喰わない奴の分は取るから急いで食えよ」
ラシードはそう宣言すると、カジキの切り身を喰い始めた。
「急いで食べなくても取らない、っていうのはたまに聞くけど、それは斬新ね」
ティファは少しおかしそうにそう言うと、大あさりの浜焼きを指で摘まみ上げた。
船員達と同じ手掴みなのに、食べる姿は随分優雅に見えた。
アイリスもティファに倣うように、大あさりの浜焼きを指で摘まみ上げる。
その仕草はどこかぎこちなく、小動物が木の実を食べるようで微笑ましかった。
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俺も普段の釣りの時とは違い皮鎧を着用しているが、ティファとアイリスも漁の時の軽装とは違い、素足が出ないパンツスタイルにローブを着用、冒険者御用達のブーツも着用していた。
久しぶりに見る服装だが、アイリスの白かったローブはあちこちが泥で汚れてしまっていた。
アイリスは髪が邪魔にならないようにポニーテイルに、ティファは後ろで一つに束ねた後、左で留め、後頭部を通して右に留めて垂らしていた。
普段と違う服装と髪型を見て、こんな状況なのに女子のお洒落に少しドキドキした。
100メートルも進むと見た事も無い景色が広がっており、俺は思わず苦笑いをした。
女性陣の護衛を目的としていたとは言え、こんなに近くすら足を運んだことが無かったとは、我ながら呆れた話しだった。
岩場には絡まった釣り糸や餌が散らばっており、リック達が真面目に釣りをしていた形跡が見て取れた。
「やれやれ、こういうのを放置すると鳥が怪我するんだっての」
船員の一人がぼやきながら釣り糸を回収していく。
俺達はその何気ない光景を横目に、さらに北へと足を進めた。
潮風が強くなり、波が岩に当たって砕ける音が不気味に響いた。
船員達のペースに合わせてゆっくり進み、1時間程歩くと島の北端に到達した。
「崖っていうのはアレの事か?」
今俺達が立っているのは島の北端。
アレと言ってラシードが指を差しているのは、南に見える山の斜面だった。
「思ってたより高いのね」
ティファが意外そうに呟いた。
俺もラシードが見つめる先、山の斜面に目を向けた。
「リック達の話しにあった崖だな。 あそこからなら島の全体が見渡せるかもしれないな」
「あぁ、だがあそこへ登るのは骨が折れそうだ。 まずはこのまま海岸線を進んで、本当にここが島なのかどうかを確かめるのが先決だろう」
ラシードは山刀の柄に親指を掛けながら、現実的な判断を下した。
思いのほか悪路を進むが、船員達は誰一人として音を上げる事無くついて来る。
島の西側を南へと進むと、海岸線は段々切り立った崖になり、目の前は鬱蒼とした林になってきた。
「ちっ、ここから先は進めそうにねぇな」
ラシードは行く手を阻む崖と、そのすぐ脇に広がる林を交互に見比べて忌々し気に舌打ちした。
「でもここ、リックさん達は抜けたんですよね?」
アイリスが不思議そうな顔でそう言うと俺達は思わず顔を見合わせた。
「本当にここを抜けたのか?」
ラシードはそう言うと鬱蒼と茂った雑草を山刀で薙ぎ払う。
「それ、足跡か?」
船員の一人がラシードが草を刈った地面を指差して言う。
確かに金属鎧で踏まれたような足跡がしっかりと残っている。
「あいつら、マジか」
リック達に懐疑的だった船員達の声色に変化を感じた。
ちゃんと島の調査をした痕跡が確かに残っていたのだ。
それはラシードも同じ事だったらしい。
「おい、お嬢さん達が歩きやすい様に草を刈りながら行くぞ」
ラシードは船員達にそう声を掛けると、山刀を振るいながら木の間を進む。
船員達もナイフで草を切り、草を踏み倒しながら後に続く。
ティファとアイリスは軽く笑い合うと、船員達が踏み固めた道を歩き始めた。
二人の言いたい事は聞かなくても分かった。
そこまでしてくれなくても良いけど、気持ちは受け取っておく、といったところか。
俺はその後ろを黙ってついて行く。
今のところ、周囲には何の気配もしないが、用心するに越した事はない。
林の中は想像以上に鬱蒼としていた。
頭上を覆う木の葉が陽の光を遮り、昼間だというのに薄暗い。
秋の冷たい空気が肌を刺し、鳥や虫の声すら聞こえて来ない。
時折、手のひらほどもある大きな蜘蛛が巣を張っているのが目に入るだけで、虫や鳥の声も気配も殆どない。
ラシード達の草刈りは雑にはなったが、スピードは増して来た。
リック達の足跡は落ち葉や草に隠れて見えなくはなっていたが、彼らがこの辺りを通ったであろう事は誰も疑いはしなかった。
時折急な傾斜に足を滑らせながら進むこと2時間、見覚えのある砂浜に出た。
島の最南端に到達したようだ。
この瞬間、ここが間違いなく島である事が確定した。
「あは、やっぱり島でしたね…」
アイリスが力無く笑い、呟く。
「ここまでは来た事があるようだな」
ラシードが俺達の反応を見て声を掛けて来た。
「ディアルとドナルドを探した時に、ね」
ラシードにそれだけ答えると、俺達は砂浜をゆっくりと歩き始めた。
ラナが貝殻を拾っていた姿が目に浮かぶ。
誰がこんな状況を予想出来ただろう…
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俺は脳裏をよぎった疑問を表情に出さないようにする為にかなりの自制を余儀なくされた。
ティファはこの状況を占いで知っていたのだろうか?
数歩先を歩くティファの横顔は垂らされた髪に遮られてよく見えないが、一時期、随分と熱心に占いをしていたのを思い出していた。
ティファの事まで疑い始めた自分にうんざりし、その思い付きを振り払う様に頭を振った。
その時、不意に隣から小さな声がした。
「…どうかしたんですか? 颯竢さん?」
見ると、いつの間にかすぐそばまで来ていたアイリスが、心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「いや、何でも無いんだ。 少し考え事をしていただけさ」
俺はそう言って、努めて穏やかに微笑んで見せた。
砂浜を東へ抜け、海岸線を北上すると、船のマストが見えてきた。
ラシードの表情は硬いが、ここが島だという事は途中から確信があったからだろうか。
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俺達が島の探索をしている間、もしかして船が荒らされるのでは無いかとも思っていたが、結局何も変化は無かった。
船内を一通り確認し終わると、食堂から良い香りがしてきた。
「朝食ってないから腹減ってもう無理だ…」
毒を疑って朝食を食べなかった船員が音を上げる。
「食いたくない奴は食わなくて良いからな」
オスロ―は強気にそう言うと、テーブルにカジキの切り身と貝を焼いたものを大皿に盛って置いた。
確かに銘々に盛るより残る心配もなく、毒の混入の心配も少ないように思えた。
「食わないと飢えて死ぬけど、毒が入って無ければ食っても死なない、なら食うさ」
腹を減らした船員はそう言うと貝とカジキの切り身を手掴みで貪り喰い始めた。
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ラシードはそう宣言すると、カジキの切り身を喰い始めた。
「急いで食べなくても取らない、っていうのはたまに聞くけど、それは斬新ね」
ティファは少しおかしそうにそう言うと、大あさりの浜焼きを指で摘まみ上げた。
船員達と同じ手掴みなのに、食べる姿は随分優雅に見えた。
アイリスもティファに倣うように、大あさりの浜焼きを指で摘まみ上げる。
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