『冒険者ギルドへようこそ(最強剣士と娘巫女) ~全ての謎を解き明かし、全てを救う物語~』

此木、大(しばいぬ)

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第0章 神在月の占い師(かみなきせかいのうらないし)

第47話 狩られる者

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「喰いながら聞いてくれ」
ラシードはそう言うと、手に持っていたカジキを口の中に放り込んだ。
「次は島に犯人がアジトを構えていないか確認しに行くが、冒険者の3人と俺、あと二人くらい連れて行く。 残りは船に残ってくれ」
ラシードの言う通り、もし犯人が島にアジトを構えていた場合、全員でぞろぞろと行くのは正直邪魔だった。
「腕に覚えのある奴はいるか?」
ラシードの問い掛けに船員達は互いに苦笑いを浮かべて誰かが手を挙げるのを待っている様だった。
「なら、自分が…」
トチローが小さく手を挙げるが、ラシードは目を閉じて右手の手のひらをトチローに向けた。
「いや、すまない、やはり俺達4人で行く」
ラシードの言葉に俺も頷いた。
「船の方が襲われる可能性もある、船に残す人数は多い方が安心だ」
「そうね…」
ティファが伏し目がちに同意するが、あまり乗り気では無さそうだ。

「ティファさん、何か悩み事でも?」
アイリスがティファを案じて声を掛けるが
「いえ、何でもないわ、ありがとう」
ティファはそう言うと、手元の貝殻に視線を落とした。
やはりティファは未来が分かっている…
そしてその未来はあまり良い物ではないのだろう。
彼女と二人だけで話しがしたい…
しかし
「よし、早めに行かないと日が暮れちまう、さっさと出掛けようぜ」
ラシードに急かされてそれどころではない。
「船は任せたぞ、いざとなれば階段を外しても構わないからな」
「お気をつけて!」
トチローにも声を掛けられて、結局そのまま出掛ける事になってしまった。
ティファの事だ、もし最善の手があるのなら提案してくれただろう。
そう自分に言い聞かせて再び島へと降り立った。

再び降り立った砂浜は、先程と何も変わらない。
だが、俺達の目的は変わっていた。
「さて、と…」
ラシードの視線は島の北、鬱蒼と茂る木々のその先にあるだろう崖の方へと向けられていた。
「他に候補が無い以上、崖を目指すのが正解だと思うが、専門家としてはどう思う?」
「そうね、ラシードさんの言う通りだと思うわ」
ティファはラシードの意見を支持し、俺達にはそれを断る理由も無かった。
「行こう、先頭は俺が行くけど、良いかな?」
俺の言葉に、その場にいる全員が頷いた。

ドナルドとディアルが通ったであろうルートを辿って行くのが理想的だ。
ティファが訝しんでいた通り、海岸線沿いを通って行けば、山に入って行くべき理由が見つかるかもしれない。
俺は山の方に注意を払いながら海岸線を北上した。
「船乗りとしての経験から言わせて貰うと、崖はここから4キロ程北へ行った辺りだ」
ラシードは慎重に進む俺にそう声を掛けて来た。
「助かるよ、 闇雲に探すよりずっと良い」
ラシードの言う通り、4キロという具体的な距離が分かっただけでも、無駄な探索をしなくて済む。
俺は、それとなく山の方に目を向けながら北へと進んだ。
サラサラの砂浜に埋まっている巨大な岩は、波の浸食により角が鋭利な刃物の様に削られている。
転生者の身体能力なら大した障害ではないが、ラシードもかなり鍛えられている様で軽々と踏み越えていく。

アイリスはティファに神代魔法の基礎を教えて貰っている様で、その文法について話しながら俺の後に続く。
ラシードは、油断なく背後に警戒しながらその後をついて来る。
島の東側は海のすぐ側から林が始まっており、山も崖も直接見えそうにない。
30分程北上したあたりで、アイリスが足を止めた。
「お? トイレか?」
「違います!」
ラシードの配慮に欠ける問い掛けにアイリスが即答する。
「今、何かが…」
アイリスが見ているのは木々の上の方だった。
俺が想定していたよりずっと高い位置だったが、梢の向こうに青く澄んだ空が透けて見えていた。
「猿か鳥の類か?」
ラシードは「ふむ」と唸った。
「猿なら色々な問題をクリア出来そうだな…」
なるほど、ラシードの言う通り、猿なら身軽に船に忍び込んで帆を破ったり、船長の首を投げ込んだりも出来るかもしれない。

「でも待って、おかしいわ」
ラシードと俺が猿の可能性について考えを巡らせていると、ティファが静かに口を開いた。
「この島では、鳥の声も殆ど聞こえない。もし猿の群れがいるのなら、もっと他の生き物の気配があっても良いはずよ。それに…」
ティファの発言に俺も頷いて続けた。
「この島には水場が無い」
俺達の発言を受けてラシードは両手を挙げた。
「参った、その通りだ」
ラシードはそう言うとニヤリと笑って続けた。
「それじゃ答え合わせに行こうじゃないか」
ラシードはそう言うと山刀を鞘から抜き放つ。

「ねぇ、あそこ」
ティファが指差す方を見ると、刃物で切り裂かれたような鋭い切り口を見せる雑草が散らばっていた。
「正解のようだな」
ラシードの言う通り、それはつい最近、誰かが通った証拠だった。
「このやり口は、ディアル達じゃないな…」
西の海岸線を通った時、リック達の足跡は藪の中をそのまま進んでいた。
しかし、これは藪を刃物で切り裂いて進んでいる。
藪を雑に切り開いた、道なき道を俺達も進む。
その道は、見た目よりずっと歩きやすく、木の枝も顔の高さまで打ち払われており、長身の俺ですら屈む必要が無かった。
「これは、俺達の仲間の仕業だな…」
逆にラシードが確信を持って言う。
「何かあった時、走って逃げられるように道を確保するんだ」
なるほど…色々な考え方もあるもんだ。
10分程そうして進むと、不意に目の前の木々が途切れ、視界が一気に開けた。

俺達は思わず足を止めた。
木々が奇妙に途切れた広場のような場所だった。
足元は土ではなく、ゴツゴツとした硬い岩盤がむき出しになっており、その広場の奥には、天を衝くような切り立った崖が聳え立っていた。
「これがリック達が言っていた…」
想像以上に高く険しい崖に、見上げる背筋が気持ちよく伸ばされる。
崖のてっぺんには丁度太陽が重なり、眩しくてよく見えない。
コートの裾を引っ張る感覚に視線を落とすとアイリスだった。
その視線の先には革袋や腰ベルト、片方だけのブーツなどが散乱していたが、アイリスが言いたい事はそんな事では無いのは明白だった。
岩盤に染みついたどす黒い染み。
先日の雨で洗い流されたであろうその地面には、新たな血だまりがあった。
「おいおい、誰の血だよ…」
ラシードの質問は質問になっていなかった。
見覚えのある帽子。
ハーロックの物に間違いない。
しかし、首だけになって帰って来た船長の身体はここには無かった。



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