神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
243 / 1,955

キューを欲するエルサの強行

しおりを挟む


 フィリーナとアルネが、モニカさん達の意見に反対し、どうするのかを悩む事になった。
 皆、エルサのキューのために、そんなに真剣に悩まなくても良いと思うんだけどなぁ
 とりあえず今は、俺の頭にくっ付いているから、それをさらに上から押さえて、暴れないようにしてる。
 ……まぁ、もしエルサが大きくなってキューを求めて暴れたりしたら、地形が変わるくらい大きな事になってしまう……という考えも、もしかしたらあるのかもしれないけど。

「痛いのだわ、リク! 離すのだわ!」
「あ、こらエルサ!」

 押さえつけていたエルサが、もがいて俺の頭から離れる。
 すぐに体を大きくしたエルサ……何をする気だ?

「そんなにワイバーンが欲しいなら、全て持って行ければ良いのだわ! こうしてやるのだわ!」

 皆が急に大きくなったエルサに驚いているうちに、巨大な体をワイバーンが山積みになっている方へ向ける。
 そこへ向け、叫んだ瞬間、魔法を発動するのを感じた。

「エルサ!?」
「これで全て持って帰れるのだわ!」

 エルサがワイバーンに向けて発動した魔法は、結界。
 俺達が皮を剥ぎ取り、別の場所へ置いていた物以外を全て結界で包み込み、それを浮かばせる。

「結界……こんな使い方ができたのか……」
「これで、簡単に持って行く事ができるのだわ!」

 結界で浮かばせたワイバーンの塊……全て包み込まれているため、中は鞄に無理矢理詰め込まれたようになっている。
 それを浮かばせたうえで、こちらへ移動させて来たエルサ。
 ……結界は、外側と内側を隔てる壁を作る事で、外部からの攻撃全てを防ぐ物だとばかり、俺は考えていた。
 確かに以前、エルフの集落で使った時は、中から誰かが触れても、外へ突き抜ける事は無かったけども……。
 結界を動かしたり、部分的に薄くしたり穴を開けるなど、応用は効くのは知っていたから、目の前で行われたエルサの使い方も、見てみると納得できる。

「エルサちゃん……そんなにキューを求めて……」
「好きな物を求める欲求による行動……ドラゴンも人間も、本質は変わらないのかもしれないな」
「そんな、遠くを見る目で……」

 モニカさんとソフィーは、エルサの行動に対し、明後日の方を見て呟いている。
 何かを諦めたような、達観したような、そんな雰囲気だけど……エルサのやった事ってそこまでの事なのかな?

「魔法の応用ね。……もしかすると、エルサ様は私達エルフよりも、魔法の使い方を知っているのかもしれないわね」
「うむ。勉強になるな」

 エルフの二人の方は、エルサの行動を見て頷いているけど……ただキューが欲しいだけだから、褒められた行動には思えないのは俺だけなのかな……?

「カチカチなの!」
「ユノ、止めてなのだわ! せっかくの結界が壊れるのだわ!?」

 ユノが楽しそうに剣の先で、ワイバーンを包んでいる結界をツンツンして楽しそうだ。
 それを見てエルサが叫んだけど……結界ってそこまで簡単に壊れたりしないんじゃないだろうか?
 いやまぁ、ユノなら全力でやれば、剣で結界も斬れそうだけど。

「ユノ、いじるのは止めなさい。しかしエルサ、このまま飛べるのか?」
「問題無いのだわ。ちょっと魔力を多めに使うくらいなのだわ」

 ユノを止め、エルサに聞いたけど、問題無く飛べるらしい。
 俺が以前結界を使った時は、移動とかできそうに無かったんだけどなぁ。
 使い慣れてる事と、あの時の俺は、集落全体を覆っていたから、規模が大きすぎた……という事もあるのかもしれないね。

「仕方ない。それじゃあこのまま王都に戻って、そこで皮を剥ぎ取る事にしよう」
「……そうね。それが良いわね」
「これ以上、エルサのキューをお預けすると、他に被害が及ぶかもしれんな……」
「凄い魔力の流れね……これを近くで感じるだけでも、学ぶことがありそうだわ」
「複雑な事と、魔力そのものの規模が違うから、俺達が使えるとは思えんがな」
「ふわふわ浮いてるのー」
「全員、早く乗るのだわー」

 皆に声をかけ、エルサに乗って王都に帰る準備。
 手早く食事の後片付けを済ませ、エルサに急かされてその背中へと乗り込む。
 全員が乗った事を確認したエルサが、ワイバーンを包んだ結界と一緒に、ふわりと浮かび上がる。

「いつもよりちょっと、揺れるし風がきついのだわ。我慢するのだわー」
「え、ちょ?」

 エルサがそう声をかけて来た瞬間、俺がどういう事か聞き返す時間も無く、浮かび上がったエルサが王都のある南へ向かった。

「きゃあっ!」
「ぐっ……これは……きついな……」
「息が……ちょっと苦しいわね……」
「むっ……結構揺れるな……」
「あははは、いつもより風を感じて気持ち良いの!」
「……正面からの風が強いね」

 エルサがいつものような速度を出しているけど、いつもと違ってすごい風が襲って来る。
 揺れる事もあって、皆しっかりエルサのモフモフした毛に掴まっているんだけど、風のせいで呼吸が辛そうだ。
 平気な顔をしてるのは、俺とユノくらいなものだね。

「エルサ、いつもより風が強く感じるのは、何でなんだ?」
「結界を他に使ってるからなのだわー。今は私のまわりにいつも張っていた結界が、かなり薄くなっているのだわー」
「あぁ……だからか」

 ワイバーンに結界のリソースを割いているため、自分達……俺達を風圧から守る結界が、今は薄くなっている、という事だろうね。
 それならいつもより風が強い事も、揺れを感じる事も納得なんだけど……皆の方を見ると、呼吸が思うようにできなくて、かなり苦しそうだ。
 ……俺はユノと同じく、ちょっと強めだけど、風が気持ちいいくらいなんだけどなぁ。
 これも、ドラゴンと契約して、身体強度とやらが上がったからなのかもしれない。

「……仕方ないね。俺が代わりに結界を張るよ、エルサ」
「……大丈夫なのだわ?」
「心配しなくても、俺だって魔力の使い方に慣れて来たんだからな?」

 俺が結界を使う事に、心配そうな声を出すエルサ。
 俺だって、色んな戦いをしてきて、色んな魔法を使って魔力の扱い方に慣れて来たつもりだ。
 きっと大丈夫……なはず……実はそんなに自信ないけど。
 でも、皆の苦しそうな表情を見ていたら、このままにはしてられないからね。

 風圧が強いと呼吸が苦しくなる……というのは俺も経験がある。
 日本で、とある施設に行った時、強風や暴風の体験……という事で巨大な扇風機の前で風に立たされた事がある。
 あの時も、皆と同じようにうまく呼吸ができなくなって、苦しくなったからね。
 何でああなるのか俺にはわからないけど、このままだと皆、呼吸困難になって危険かもしれない。
 ……速度を出して飛ぶって、危険なんだなぁ……と今更の事を考えながら、結界の魔法をイメージ。

「……結界!」
「ぶべ!?」
「あ……」
「はぁ……息ができる……けど、エルサちゃんはどうしたの?」
「はぁ……ふぅ……リクが何かしたのか?」

 結界を、エルサの結界に包まれているワイバーンごと、全て包むように張り巡らせた。
 イメージは、俺達が入り込めるくらい大きな箱だね。
 しかしその瞬間、俺の張った結界にエルサが顔からぶち当たった。
 皆、結界を張った事と、エルサが止まった事で、呼吸が普通にできるようになったようだけど……エルサは……。

「痛いのだわ! 鼻が折れ曲がるかと思ったのだわ! 何をするのだわ!」
「すまん……エルサの動きに合わせて、結界を動かすのを忘れてた……」

 エルサは飛んでいるのだから、当然それに合わせて結界も動かさないといけない。
 ただ結界をその場に張っただけだと、飛んで進んでるエルサがそれに激突するのは当然だね。
 幸い、思いっきり鼻をぶつけたエルサは、墜落する事無く空に留まってるけど……これも俺の結界に包まれてるからか……エルサの大きな体が乗ってる感覚があった。
 ……重いとは考えないぞ? 後が怖いから。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

処理中です...