351 / 1,955
騎士団長と副騎士団長
しおりを挟む「おっと」
「っ! ちぃ!」
「ほいっと」
真っ直ぐ俺に走り込み、木剣を振り下ろす騎士団長さん。
俺はその木剣を、左に体をずらして避ける。
受けるのではなく、避けた事に一瞬だけ驚いた顔をした騎士団長さんは、すぐに振り下ろした木剣を下から俺に向かって斬り上げる。
踏み込むわけでもなく、その場で斬り上げられたので、少しだけ後ろに下がって避けた。
「まだまだ! っ!」
「っと! 今度は、こっちの番です……っよ!」
「ぐあっ!」
避けた俺を見据え、斬り上げた木剣をさらに振り下ろす騎士団長さん。
俺に向かって来る木剣を、自分で持っている木剣を横にし、両手で持って受ける。
そのまま声をかけつつ、野球のバットを振るように騎士団長さんの木剣ごと、力で薙ぎ払うように振り抜いた。
「ぐぅっ!」
「そこまで! 場外により、リク様の勝ちと致します」
「ふぅ……」
「「「おぉぉぉぉ……」」」
俺に弾き飛ばされ、場外へと背中から落ちた騎士団長さん。
それを見て審判の執事さんが止め、俺の勝ちを宣言してくれた。
騎士団長さんは体ががっしりしているし、金属の鎧を着ているから、重いと思ってそれなりに力を込めたんだけど……思ったより遠くまで飛んだね。
飛ばされた騎士団長さんが地面に付いたのは、模擬戦の範囲外よりもさらに外側、運動場になってる場所の端で、外と内を遮る塀の近くだった。
もう少しで塀に激突しそうだったけど、惜しいとは思わない。
むしろもう少し力を弱めて、近くに飛ばそうと思うくらいだ……手加減の練習みたいなものだね。
周囲で見ている人達の、歓声にも似たどよめきを聞きながら、騎士団長さんの方を見る。
「ゴホッ、ゴホッ……ふぅ……」
飛ばされた騎士団長さんは、背中を打った痛みで咳き込みながらも、立ち上がった。
ある程度の痛みはあっても、怪我はないようで安心した。
「では、次は俺が行きます」
「副団長さんですか。では、中央へ。リク様も」
「はい」
騎士団長さんの様子を見ていると、すぐに次の騎士さんが進み出て、木剣を構えた。
審判さんに促され、少し動いていた場所から中央に戻り、向き合う。
副団長って言ってたから、それなりに強いんだろう。
確かに体は騎士団長さんに負けず劣らず、がっしりしていて、しっかり鍛えていそうだし、構えも様になってるね。
ちょっと気になるのは、騎士団長さんがロングソードくらいの木剣を使っていたのに対し、こっちの副団長さんは、ナイフより長く、ショートソードよりも短い木剣を2本持っている事だ。
二刀流って事かな?
両手にそれぞれ武器を……というのは、ヤンさんと合同訓練の時に見たユノくらいでしか見た事がない。
はてさて、どうなるのかな……?
「では……始め!」
「しっ!」
「おっと」
審判さんの合図で、すぐにこちらに突進して来るのは、騎士団長さんと同じだった。
しかしその速度は騎士団長さんよりも速く、一瞬にして俺に肉薄する。
副団長さんは自分の体の前に木剣を交差させて、真っ直ぐ突っ込んでくる。
そのまま交差させた木剣を、俺に向かったバツ印になるように斬りかかって来た。
頭上から真っ直ぐ振り下ろすよりは、横に避けるのも難しそうだし、速度も速い。
すぐに俺は、後ろに軽く飛んで木剣の届く範囲から逃れた。
「しっ! ふっ! はぁ!」
「うぉ! っと、くっ!」
木剣の届く範囲から逃れた俺を、すぐに足を使って追いかけて来た副団長さんは、右手の木剣を右下から斬り上げ、それを右に避けた俺に、左手の木剣を上から振り下ろす。
続けざまの攻撃に、避ける余裕のなくなった俺は、木剣で上から振り下ろされる木剣を受け止める。
ガチッという音がして、俺の木剣に左手の木剣を受け止められた副団長さんは、さらに上から右手の木剣も振り下ろす。
それぞれに力と勢いを乗せて、俺に木剣を落とさせる気かも!?
思わぬ体勢で剣を受けたため、騎士団長さんの時と違って、今は木剣を持っているのは右手だけ。
しかも、力自体は両手で、力いっぱい振り下ろした騎士団長さんの方があったと思うけど、副団長さんは別々に木剣を振り下ろして来るから、受ける力のバランスが難しい。
両方勢いがあるうえ、片手で受けてるせいで木剣を持つ力が少し弱まってしまった。
最初から、俺に不安定な形で防御させ、持っている武器を落とさせようという考えだったのかもしれない。
「くぅ……」
「ふ……せい!」
「うぉ!?」
「なんと!?」
力が入らないながらも、なんとか副団長さんの木剣を押し返そうと、体に力を込め始めた時、目の前にある副団長さんの顔が、一瞬だけ笑ったような気がした。
次の瞬間、上から来ていた圧力が軽くなり、副団長さんの左腕が動く。
俺に上から来る攻撃に集中させ、動けないように釘付けにしてから、最終的に下から木剣を体に当てる事を狙ってたのか!
さっきまで考えていた事が外され、一瞬どうしようか迷う俺。
その間にも、副団長さんの左腕は動いており、俺の体の右下辺りから木剣が体に迫って来る。
上からはまだ右手の木剣を受け止める形になっているので、今こちらを下げるわけにはいかない。
下げて下からの攻撃を防御したら、上から追撃が来るだろうしね。
迷っている俺には、どうすればいいのか考えがまとまらず、体に木剣が当たってしまう……と考えて、少し身を固くした瞬間、無意識に今まで使っていなかった左手が動き、少々不格好にはなったけど、手の平で副団長さんの木剣を受け止めた。
「っ……このっ!」
「くっ! せいや!」
一瞬自分でも驚いたけど、それは副騎士団長さんも同じ。
まさか素手で、木剣を受け止めるとは思ってなかったんだろう。
驚いて目を剥いている副団長さんをそのままに、左手をそのまま握り込んで木剣を捕まえる。
それを力任せに引っ張ってぶん投げようとする俺に、副団長さんはすぐに剣を手放した。
「くっおっと……」
副団長さんを引っ張ろうと力を込めていたので、なんの抵抗もなく手放された木剣は軽く、俺の体勢を崩した。
すぐにそこに狙いを付けて、もう一度副団長さんの残っていた右手の木剣が振り下ろされる。
「くっ……でも、片方だけならっ! せいやぁ!」
「ぬっ……ぐあ!」
俺の肩に当たるギリギリのところで、副団長さんの木剣を受け止める。
今回は片方だけだから、さっきよりも上から来る圧力は少ない。
それを補おうと、副騎士団長さんは木剣に左手を添えようと動くが、こちらの方が早い。
俺も左手を受けていた木剣に添え、そのまま真っ直ぐ上に向かって弧を描くように振り上げる。
自分が込めてる力以上の力で、上へと跳ね上げられた副団長の木剣は、そのまま手から離れ、場外へと飛んで行った。
「それまで! 武器を失った事により、勝者、リク様!」
「「「うぉぉぉぉぉ……」」」
審判さんが試合を止め、俺が勝者であると宣言。
ルールでは、武器を落としたら負けとあるので、2本持っていた木剣を両方失った副団長さんの負けという事だ。
実践なら、ここで組手とか素手での戦いに持ち込まれたり……なんて事があるかもしれないけど、これはあくまで訓練だしね。
11
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる