352 / 1,955
マルクスさんとの模擬戦
しおりを挟む「ふぅ……リク様、さすがでございます。まさか全て対処されるとは。素手で木剣を受け止めたのも驚きましたが……全て予想されてましたかな?」
「ははは、それは買いかぶりですよ。上かと思えば下から……ずっと翻弄されっぱなしでした」
負けた事を理解し、息を吐きながら話しかけて来る副団長さん。
さすがに俺自身も、木剣を素手で防御する事になるとは思ってなかった。
武器が2本という事もあったとは思うけど、ずっと予想を外されてばかりで、危ない所が多くあった。
やっぱり、技術という点で言うと、俺はまだまだだと実感させられる1戦だったと思う。
お互い笑い合いながら、副団長さんは周囲で見ていた人達の元へ、俺は中央へと戻った。
今の戦いを、思い返して色々学びたいと思うけど……俺はまだ、戦わないといけないんだよなぁ……。
ともかく、落ち着いて考えるのは、全部終わってからだな。
「次は私です。よろしくお願いします」
「はい、お願いします」
3人目の騎士さんは、標準的なロングソードを持って俺に礼をする。
俺もそれに返しながら考える。
今度の人は、副団長さんのように技術で押すのではなく、騎士団長さんのように力で押すタイプなのかもね。
……騎士団長、副団長と、向こうから来るのを待つばかりだったから、今度は俺から向かってみようか。
「それでは、始め!」
「ふっ!」
「っ! ぐぅ!」
審判さんの合図と共に、向かい合っている騎士さんの方へ、足に力を込めて突進する。
お互いの空けている空間は、大体3メートル程度。
頑張れば一瞬で詰めれる距離だ。
俺が合図と同時に飛び出した事に気付いた騎士さんは、すぐさま持っていた木剣を体の前に構え、防御の姿勢を取る。
そのまま、飛び込んだ勢いと一緒に、俺が持っている木剣を防御している木剣に当て、振り抜く。
その衝撃にくぐもった声を出しながら、騎士さんは騎士団長と同じように弾き飛ばされ、場外へと背中から落ちた。
「それまで! 場外により、勝者リク様!」
「ふぅ……これなら、すぐに終わって俺も体力を削らなくても良さそうだね」
弾き飛ばした騎士さんが、怪我をした様子もなく立ち上がり、一瞬で終わった事に落ち込む姿を見ながら、少しだけ申し訳ないと思いつつも、できるだけ体力を減らさないように決着を付ける方法を考えた。
訓練だからと、相手が攻撃するのを待ち、冷静にそれを見て、自分の足りない技術を学ぼうと思ってたんだけどね。
さっきの副団長のように、攻められてばかりというのも辛いから。
なにより、対処する俺の方が疲れてしまうからね。
そのまましばらく、次々と出て来る騎士さんを、弾き飛ばしては終わらせるというやり方で、決着を付け続けた。
訓練だから、もっとやり合わないと相手のためにもならない……とは思うんだけど、人数が多いからね、体力が持つかわからないから、できるだけ節約するように切り替える。
長く多くの相手と戦うコツを掴むのも、訓練と言えなくもない……と考える事にした。
「最後は、私ですね」
「マルクスさん……」
ほぼ無心の状態で、騎士さんや兵士さんを弾き飛ばし、その後に落ち込む様子を見て申し訳なく思いながらも、淡々と進めて行った模擬戦。
最後と言いながら、マルクスさんが進み出て来た。
って、もう35人相手にしたのか……集中してたからわからなかった、数も数えてなかったし。
36人目のマルクスさんは、俺を見ながら不敵な笑み。
何か勝算があるのかと思ったけど、こめかみからは一筋の汗が流れていた。
もしかして、強がってるだとか?
マルクスさんの実力は知らないけど、王都からここに来るまで、一番俺の動きを見ていた人だからね。
それに、ヴェンツェルさんにも鍛えられてた事もあるだろうし、油断はしちゃいけない。
「では、両者中央に……」
審判さんの声で、お互い中央に来て向き合った。
ゆっくりと構えて相手を見据える。
マルクスさんは、俺と同じショートソードを片手に持ってるだけだ。
ロングソードを使って力で押すとか、2本持ったり奇抜な武器で意表を突くタイプではないようだね。
「それでは、始め!」
「ふっ!」
「ぬあっ……っとっと」
審判さんの合図で模擬戦が開始すると同時、俺がマルクスさんに向かって一足飛びに接近する。
そのまま、勢いを利用して右手に持って木剣を振り下ろした。
これがここまで、1回の模擬戦を最短で終わらせる方法だったからね。
しかしマルクスさんは、俺が剣を振り下ろしたのを防御したりする事はなく、全力で左側へ飛んだ。
バランスを崩す事も厭わない勢いだったためか、少しもたついていたけど、俺の初撃はあっさり躱されてしまったようだ。
「はぁ……さっきまでと同じ事をして来たので、なんとか避けられましたね。リク様、ずっと同じ事をして、それを見られていたら、避けるくらいはできますよ?」
「そのようですね。……上から振り下ろしたのが、いけなかったのかな?」
「ははは、避けられても特に気にしてませんね……。あの速度と威力……普通の人間なら、渾身の一撃となっているはずなんですが、リク様にとってはそうではないようですね」
体のバランスを取りながら、俺に木剣を向けて構え直しつつ、マルクスさんが話しかけて来る。
さすがに、30人以上同じ攻撃をしてたら、見るのも慣れて避けられてもおかしくないか。
一応、避けられないくらい速度を出す事を意識してたんだけどね……さすがは王都の兵士さんだ。
左横に飛んだから、そちらの方向から木剣を振れば良かったかな? と思い、呟いているとマルクスさんが苦笑した。
確かにさっきまでの攻撃は、足に力を込めて、速度と勢い任せにしてる分、渾身の一撃になる人もいるだろう。
でも、ヴェンツェルさんとか……さっき戦った副団長とかなら、もしそれが避けられた時、すぐに次の行動ができるように考えてると思う。
やっぱり、まだまだ俺は想定が甘いんだろうなぁ。
「……このまま、こうして見合っているだけというのでは、何も始まりませんね。では、次はこちらから行きます!」
「っ!」
模擬戦中だというのに、マルクスさんに木剣を向けたまま、頭の中で考え込んでしまっていた俺に対し、膠着した状態にしびれを切らしたのか、体に力を込めてこちらへ向かって来ようとしている。
実践だったら、相手の様子を窺って、隙を見せないように膠着状態でもじっと待つ……という事が考えられるんだろうけど、これは訓練だからね。
待ってるだけじゃいけない、と考えたんだろう。
マルクスさんを見て、考え込むのを後にし、木剣を持つ右手に力を込めて身構えた。
「スゥー……行きます! はいやぁ!」
「っと!」
息を大きく吸い込んで、体に力を溜めたマルクスさんが、一気に俺へと迫る。
マルクスさんは右手を大きく横に広げ、そこから俺へ向かって大振りの一撃。
木剣を両手で縦に持ち、それを受け止める俺。
走り込む勢いと全身の力がこもっているからか、それなりに強い衝撃だったけど、難なく受け止める事ができた。
これ、本当は両手でとか、大きな剣でやる攻撃じゃないかな?
そう思いつつも、そのまま木剣でマルクスさんの木剣を押し返す。
「くっ! ぬあ!」
「んっ! せい!」
押し返された木剣を、すぐに自分の体の前へ引き戻すマルクスさんだが、その時には既に俺が剣を振る動作に入っていた。
こっちを見て驚いた顔をしながらも、木剣で受け止めたマルクスさんは、そのまま他の騎士さんや兵士さん達と同じように弾き飛ばされて行った。
良かった、ちゃんと木剣に当たってくれた……これで俺の木剣が、マルクスさんの体に当たったら、骨が折れてる可能性もあるからね。
まぁ……その時は、治癒魔法を使って治すんだけど。
11
あなたにおすすめの小説
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる
暁刀魚
ファンタジー
社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。
なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。
食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。
そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」
コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。
かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。
もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。
なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。
カクヨム様にも投稿しています。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
湖畔の賢者
そらまめ
ファンタジー
秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。
ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。
彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。
「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」
そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。
楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。
目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。
そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる