525 / 1,955
寝坊するリク
しおりを挟む「いつまで寝とるんじゃ! 早く起きんかい!!」
「っ!?」
「……うるさいのだわ」
「んにゃんにゃ……」
深い眠りから、怒号で目を覚ます。
怒鳴られて起きるなんて経験がほとんどないから、驚いて心臓がバクバクだ……。
「まったく……昨日は割と早く起きて来たかと思いきや、今日はこのざまじゃ。昨日の訓練がきつかったとは思えんが……何かしておったのかのう……」
「エアラハール様、リク様達は昨夜、少々遅くまで起きておりましたので……」
「リクさん達が遅くまで起きて、何かやっていたのかしら?」
「町に繰り出して遊び……というわけではないだろうな。ユノもいるし……」
「……あれ、皆?」
驚いた反動で体を起こし、心臓を落ち着かせているとベッドの傍で複数の声。
怒鳴り声があったから、エアラハールさんがいるのはなんとなくわかってたけど、他にも誰かがいるようだ。
ゆっくりそちらへ視線を向けると、エアラハールさんだけでなく、モニカさんとヒルダさんがいて、さらに後ろにはヒルダさんの姿も見えた。
ヒルダさんは昨夜遅くまで起きていてくれたのに、疲れた様子はない……侍女として表には出さないようにしているのかもしれないけど。
「あれ……? ではないわい! もう昼じゃぞ!? 一体いつまで寝ておるん……グフォ!」
「うるさいの! 朝から大きな声を出さないの!」
「……今のは綺麗に入ったわね」
「あぁ。しばらく動けそうにないな」
「……ユノはいつも、寝起きが悪かったりはしないんだけど……エアラハールさんにだけは当たりが強いよね。あとユノ、もう朝じゃないみたいだぞ?」
俺がぼんやりとした声を出したからか、エアラハールさんが再び怒鳴る。
確かに、日の入っている部屋は明るく、依頼のための準備をしているはずのモニカさんやソフィーがいることからも、時間は昼に近いんだろう。
だけど、それを認識できたくらいに、エアラハールさんの怒鳴り声を遮って、ユノがベッドから飛び上がってお腹に向かってドロップキック。
いつものように、衝撃を和らげるために体を逃すような事もできず、鈍い音と共に部屋の壁まで飛ばされて動かなくなった。
多分、大丈夫だとは思うんだけど……ユノはやたらとエアラハールさんに当たりが強い気がする。
もしかすると、初対面の時に色々と小さいと言われた事をまだ、根に持っているのかもしれないね。
モニカさんとソフィーは、飛ばされたエアラハールさんの方を見て、ドロップキックの感想を言い合っていた。
二人の傍には、パンパンになった鞄が置いてあるから、ちゃんと必要な物を買いそろえて準備してくれたようだ。
エアラハールさんはともかく、早くから動いてくれた二人を余所に、悠長に寝ていたと考えると、申し訳ない。
ちなみにエルサは、ユノにエアラハールさんが蹴り飛ばされたのを確認して、再びベッドで寝始めた。
うん、お前はそれくらい気楽でいいと思うよ……できるなら、機嫌が悪そうなユノと一緒に寝ていて欲しかったけど。
「とんでもない嬢ちゃんじゃ……死ぬかと思ったわい」
「その割には、平気そうに動いていますが……」
ちょっとした騒動の後、ササッと朝……ではないけど支度を済ませる。
その間に、ユノはエルサに抱き着くようにしてふて寝し、エアラハールさんは何食わぬ顔でソファーに座ってお茶を啜っていた。
……あれだけの一撃を、身構える事もなく受けたのに、痛がる素振りすらなく平気とは……これが元Aランクの実力かぁ。
多分、ほとんど関係ないような気もするけど。
とりあえず、昼食の用意をしてくれると言うヒルダさんに、お礼を言いつつ見送り、俺もソファーへ座る。
すでにヒルダさんによるお茶は用意されていた……さすがだね。
ふて寝しているユノと、まだ暢気に鼻提灯でも膨らませそうなくらい気持ち良さそうに寝ているエルサは、食べ物の用意が終わったら起きてくるだろう。
「それでリクさん。昨夜は何かしていたの? リクさんが寝坊なんて、珍しいわよね? 獅子亭にいた頃は一度もなかったと思うけど」
「まぁ……寝るのが遅かったからね。ちょっと、エルサの気晴らしに付き合ってたんだよ」
「エルサちゃんの?」
「……ドラゴンの気晴らし、と考えると……壮絶な事を考えてしまうのだが」
「そんなに大したことじゃないよ。ただ、全力で飛ぶエルサに乗ってただけだから」
「「全力で……」」
「ドラゴン殿が飛べるのはわかるが、それが気晴らしになるのかの?」
ソファーに座った俺に、早速とばかりにモニカさんから質問される。
簡単にモニカさんやソフィー、エアラハールさんに何をしていたかの説明。
気晴らしと聞いて、ソフィーは別の事を想像していたみたいだね。
まぁ確かに、ドラゴンの気晴らし……というイメージだけで考えると、戦闘をしたりとか、破壊活動に近い事を想像してしまうのかもしれないけども。
多分、この世界でエルサと出会ってなかったら、俺も近い想像はしていただろうし。
「エルサは、空を飛ぶのが好きみたいですからね。それに、いつもは全力で飛んでないみたいなので。何も気にせず、力を出し切るというのは気持ちいいようですね」
「ふむ、なんとなくわからんでもないの。ワシも、時折全力でおなごの尻を触りたいと思うものじゃ。それと同じという事かの」
「……いや、それはちょっと……」
エルサが空を飛ぶ事と、エアラハールさんが痴漢を働く事を、一緒にしないで欲しい。
空を飛ぶ事が崇高だとは言わないけど、さすがに比べるのもおかしい事だしね。
「そういう事なら、私も参加したかったけど……エルサちゃんの事だから、結構無茶したんじゃないの?」
「無茶って程ではなかったかなぁ……? 思ったより乗り心地は悪くなかったよ。いつもの移動する速度の方が、ゆったりしていてのんびりできるのは間違いないけどね。多分、もう少し結界の使い方を改善したら、俺やユノ以外も乗れるんじゃないかな?」
「それは、一度乗ってみたいな。空を飛ぶ事だけでも特別なのだが、ドラゴンの全力というのを見てみたいしな」
「そうね。けど、乗り心地以外にも何かありそうな気もするけどね……」
「んー、まぁそうだね。エルサに乗って結界に守られているから、危険な事はほぼないんだけど……ちょっと高すぎるかなぁ……」
モニカさんやソフィーも、エルサに乗るのに慣れているから、全力でというのも試してみたいとは考えているようだね。
結界の使い方を少し変えたり、方向転換の時に揺れる事、あとは……下降する時の浮遊感や全力で前進している時に、少しだけ感じる圧力のようなものに耐えられれば、なんとかなると思う。
どれも、慣れればいいだけだしね。
万が一落ちても、結界を張っていればそれに乗っかるだけだし……いや、それはそれで危険でもあるんだけどね……エルサの体が大きいから、数メートルの高さから落ちるようなものかな。
あとは、モニカさんがなんとなく考えているように、別の問題があって……早い話が高すぎる事だね。
俺は飛行機に乗ったり、空からの空撮されている写真を見たりといった経験を日本にいる時にしていた。
ジェットコースターにも乗った事があるし、高い建物の展望台に行った事だってある。
けど、この世界の人達はそういった事に慣れ親しんだりはできないから……高所恐怖症になってしまってもおかしくない。
好奇心でエルサに乗って、高所恐怖症で乗れなくなる……なんて事も考えられるから、あまりお勧めはできない。
地上との距離が数十メートルくらいに保たれている、いつものエルサがやる飛行移動よりも、数倍……いや十倍以上高いように感じたからね。
2
あなたにおすすめの小説
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる