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迂闊なリク
しおりを挟む「高い……それは、飛ぶ高さという事か?」
「うん、そうだね。いつもなら……えっと、王城の一番高い場所の上くらいだけど、今回はそれすらもほとんど見えないくらいの高さに上がったから。まぁ、夜中で暗かったから、見えにくいというのはあったと思うけど」
「それは……想像するのも少し怖いわね……」
「ひょっひょ、面白そうだのう。とんでもない高さを飛ぶ魔物だっているのじゃ、ドラゴンならもっと高く飛ぶのじゃろうの」
ソフィーから首を傾げて聞かれるのに、昨夜飛んだ時の事を思い出しながら答える。
昼間だったら、もう少し王城がはっきり見えたと思うけど……夜だったからね。
それでも、明かりがついているはずの城や町の姿が見えないというのは相当な高さだっただろうし……光も少ししか見えなかった。
モニカさんはどれだけの高さかを想像して、神妙な表情になっているけど、それが正しい反応なのかもしれない。
エアラハールさんは面白そうだと笑っているから、もしかしたら高所でも平気な顔をしていそうだけど……こちらはエルサに乗っている時に変な事をして、ユノに叩き落されたりしないかの方が心配かな。
さすがにエアラハールさんでも、そんな事はしないとは思うけど……多分。
「リク様、お食事の用意ができました」
「ありがとうございます、ヒルダさん」
「……食べ物なのだわー。キューが不足しているのだわ、直ちに食べるのだわ!」
「お腹すいたのー」
「……起きるの早いな……エアラハールさんに起こされた時は、不機嫌だったのに……」
モニカさん達に、昨夜空を飛んだ時の事を話していると、昼食の準備をしてくれていたヒルダさんが料理を持って戻ってきた。
すると、すぐに食べ物の匂いを嗅ぎつけたのか、エルサとユノがベッドから起きて来る。
昼まで寝ていたから、朝食抜きだったという事もあるんだろうけど、エルサにしろユノにしろ、食べ物に対して反応し過ぎだろう……俺もお腹は減っているけどさ。
「エルサ、寝起きでいきなりキューに飛びつくんじゃない。行儀が悪いぞ? ちゃんと用意ができてから、皆で食べるんだ。……ユノは、先に顔を洗って来ような?」
「……仕方ないのだわ。キューが……だわ……」
「はーいなの」
「はいはい、後で思う存分食べていいからな。――ヒルダさんすみません、ユノをよろしくお願いします」
「あ、私も行くわ。髪も手入れしないとね」
「畏まりました。――モニカ様、よろしくお願いします」
「なんだか、リクが子供達の面倒を見る兄とか親のようになっているな……」
「そうかな?」
ヒルダさんが手伝いのためと連れてきたメイドさんが、まだテーブルに置く前のキューに飛びついて困っているエルサを引きはがし、俺の近くに座らせる……犬がお座りした状態で、前足を上げているような感じだね。
ユノの方は、寝起きだし寝癖もついていたのでまずは顔を洗うように促す。
エルサの方は、キューを未練がましく見ていたけど、すぐに食べられるんだから我慢して欲しい。
ユノは素直に返事をして、お風呂場の方へ顔を洗いに向かったので、ヒルダさんにお願いするとモニカさんも手伝ってくれるようで、席を立ってそちら行ってくれた。
結構酷い寝癖が付いていたので、ヒルダさん一人じゃ大変だと思ったんだろう、ありがたい。
エルサやユノを注意していた俺を見て、ソフィーが呟いていたけど……俺にはそんなつもりがなくとも、そう見えるものなのかな、と首を傾げた。
……マナーとまでは言わないけど、こういう事は以前、姉さんから色々言われたからなぁ……ちゃんとしなかったら、怒られる事もあったし、染みついているのかもしれないね。
あの時は、少しだけ姉さんを口うるさくも思ったりしたけど、エルサやユノの面倒を見ていられるのなら、良かったんだと思う。
心の中で感謝をするけど、姉さんに今の姿を見られたら変に盛り上がりそうだから、あの人の前でやらなくて良かった……。
「りっくん……ちゃんと他の子の面倒も見れるようになって……成長したわね……」
ほらこんな風に……って!
「姉さん!? いつの間に!」
「いつの間にって、ヒルダと一緒に部屋に入っていたわよ? りっくんはエルサちゃんやユノちゃんの事を見ていて、気づいていなかった様子だけど。ちょうど時間が空いたからね、一緒に昼食を取ろうと思ったのよ。それはともかく……私が昔、散々注意した事を覚えていたのね……嬉しいわぁ……」
「いや……あの……まぁね」
ヒルダさんと一緒に姉さんが入って来ていたらしい……気付かなかった……もう少し周囲に気を配っておかないといけないかな?
ともあれ、姉さんの真似をしたというわけではないけれど……同じような行動をしていて、それを見られていたというのは少し恥ずかしい。
まぁ、俺にとってはそこまで昔……と言える程の事ではないけど……まだ数年前だしね。
とはいえ、姉さんはこちらの世界に来て数十……十数年以上経っているから、感覚としては昔に感じるんだろうね。
恥ずかしくて、言葉を濁す俺に対し、姉さんは片手で目頭を押さえて泣いているような仕草をしている。
そんな、嘘泣きまでしなくても……あれ? ちょっと本当に目が潤んでない?
「姉さん……?」
「ごめんねぇ……りっくんが立派になったと思ったら、急に目頭が熱くね……。考えてみると、王城で会ってから、りっくんには助けられてるなぁって。以前は私が色々してあげてたのにねぇ……」
「いや、俺だって成長しているからね。……でも、泣かなくても……」
涙が零れ落ちる程じゃないけど、目を完全に潤ませている姉さん。
さすがに、こんな事で姉さんに泣かれるのは少々居心地が悪い。
初めて姉さんを見たはずのエアラハールさんは、面白そうなものを見るような感じだし、ソフィーはなぜかうんうん頷いているし……なんだろうこの空間。
モニカさんとヒルダさん、ユノがこの場を離れていて良かった。
とにかく、姉さんを泣き止ませないと……簡単に泣き止ませる方法はあるけど、後が怖いなぁ……仕方ないか。
「……姉さん、年を取ったら涙もろくなるって本当なんだねー……」
「なんですって!? そんな事ないわよ、私はまだそこまでの年齢ではないはずだわ!」
あまり使いたくはなかったけど、このまま姉さんがしんみりとしているのは嫌だったので、最終手段に出た。
瞬間沸騰と言えるのか、顔を真っ赤にした姉さんが俺につかみかかった。
すぐに涙は引っ込んだようだけど、次は俺が危ない……どうしよう。
唯一止められそうなヒルダさんは、ユノとお風呂場に行っていないし……エアラハールさんは変に関わらせるべき人じゃない。
だとしたらソフィーを頼れば……と思って見たけど、俺と視線を合わせないように逸らされてしまった……うぅ。
鬼の形相で俺を睨み付けて来る姉さんが、平手を持ち上げるのがスローのように感じる……いや、ごめんなさい……鬼ではないですね、美しい女王様です、はい。
ユノー、ヒルダさーん、早く戻って来てー!
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