神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
1,021 / 1,955

貴族は忙しいらしい

しおりを挟む


 部屋に戻って抱いているエルサを撫でつつ、軽口のようななんでもないやり取りをする。
 いつもは俺の頭にくっ付いている事が多いため、あまり抱いている状態なのは少なかったっけ。
 まぁ、外を移動している時は荷物を持っている事が多いし、頭にくっ付いていてもらう方が便利なんだけど。
 手でエルサの毛……モフモフを撫でながら、部屋にあるソファーに座る。

 キューをたらふく食べた満足感があるからか、抗議か注意かよくわからないエルサの言葉には、あまり力がなかった。
 ただ、人聞きが悪いのでこちらも言い返すけど、特に気にせずエルサを撫で続ける。
 というか、エルサの言う変な所ってどこだろうか……? 犬とそう変わらない形なのはともかく、お腹とか? あとお尻とか……

 でも、その辺りを触っても何も言われないんだよね。
 もしかすると、エルサにとって触られて嫌な場所があるのかもしれない……くすぐったいとか。

「あ、さすがにちょっと毛が絡まっている部分があるか」
「リクが戦闘したから仕方ないのだわ。くっ付いているのも一苦労なのだわ」
「いや、そうまでしてくっ付いていなくていいと思うんだけど……戦闘になったら離れればいいのに」

 エルサを撫でる手が、絡まった毛に引っかかって止まる。
 戦闘や空を飛んだりして、動いているからそうなるのも仕方ないか……お風呂で洗って、ちゃんと梳かさないとな。
 エルサ自身は、簡単な戦闘の時は離れる気があまりなさそうだけど、多分俺の魔力が漏れているからとかなんだろう。
 以前、漏れた魔力を吸収するような事を言っていたし、それが心地いいとも言っていたから。
 だからって、歩いている時より激しく動いているのは間違いないのに、それでも頭にくっ付いて寝ているのは、どうかと思うんだけどね。

 その後、エルサを撫でてのんびりと過ごし、フィリーナが上がったと執事さんが報せてくれたので、体を洗いにお風呂場へ。
 エルサを丹念に洗って、手が引っかかるような事がないよう梳かしていたら、昨日に引き続きシュットラウルさんの登場。
 仕事は? と思ったけど、息抜きも兼ねてらしい……隣の宿にもそれなりに広いお風呂があるみたいなのに、わざわざこちらに来なくても。
 一人で入るより、誰かと入りたいお年頃? なのかもしれないね、という事にしておこう。

 さすがに連日お風呂場で長話をしたりはせず、適当に雑談をして仕事に戻るシュットラウルさん……遅くまでお疲れ様です。
 俺は、エルサをドライヤーもどきで乾かして、モフモフの維持をしてから就寝。
 明日は、エルサと別行動か……ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、寝る時にエルサを強く抱きしめてモフモフを堪能させてもらったけど。
 寝苦しかったのか、朝起きた時は人間くらいの大きさになっていた……小さくて潰れかけたとかではないと思いたい――。


「リク様、シュットラウル様が来られました」
「はい、わかりました」

 翌日、朝食後にエルサを連れ去って行くソフィー……というか、調査をしに行くモニカさん達を見送り、部屋で一人暇を持て余していた俺。
 そろそろ昼も近くなって来たなぁ、という頃になって、シュットラウルさんが迎えにきた。
 俺が迎えに行くと、朝食後にすぐ行っていただろうから、向こうの予定に合わせて良かった。

「おはよう、リク殿」
「おはようございます、シュットラウルさん」

 もうすぐ、こんにちはと言った方が相応しい頃合いになるけど、とりあえずその日最初の挨拶として朝の挨拶。

「……大丈夫ですか?」
「問題ない。これくらいの事はよくあるからな、慣れている」

 シュットラウルさん、目の下にはっきりとした隈があって見るからに疲れている様子。
 昨日はあまり寝られなかったのだろうか? と思って声をかける。
 俺の貴族に対するイメージとしては、毎日優雅に景色を眺めてお茶を飲んで過ごすとかだけど、慣れているって事は、忙しいのはいつもの事なんだろう。
 そりゃそうか……領地に拘わる様々な事をしなきゃいけないんだから、ずっとのんびりなんてしていられないか。

「昨夜は、空が明るみ始める頃まで起きていたからな……少々寝不足なだけだ」
「明るみ始めるって、ほぼ徹夜じゃないですか……」

 いつまで寝ていたかはわからないけど、明るくなり始めた頃に寝たのなら、ほとんど寝られていないと言っていいと思う。
 やっぱり、姉さんから貴族にならないかという誘いが来た時、断っておいて良かった。
 今でも色々忙しい事はあるけど、徹夜はあんまりしたくない。
 報告書を読んだり、書類仕事が多そうだし……机についてずっと仕事をするよりは、今のように色んな所に行って体を動かしていた方が、性に合っているだろうからね。

「領主として、管轄の街にきた以上は報告だなんだとやる事が多くてな。昨日はほぼリク殿に付いていたし、今日は兵士の訓練だ。先んじて仕事を片付けておいたのだよ。それに、昨日話した魔物に関する事や、兵士をセンテに来させたので、それに関する処理も必要だしな」
「そんなものなんですね。大変そうですけど……今日は大丈夫ですか?」
「なに、訓練をするのは兵士だからな。私は、高みの見物というと印象が悪いが、じっくりと見させてもらうさ」
「まぁ、あまり無理をしないのであれば、大丈夫なんでしょうけど」

 兵士を動かすのにも、色々手続きというかやっておかないといけない事があるんだろう。
 それに、昨日に続いて今日も外に出るため、先に処理しておく事柄や調査に関してもやらなければならない事があったらしい。
 シュットラウルさん自身が訓練に参加する、とかでなければまぁ、多少寝不足でも大丈夫か。

「リクー、準備終わったのー!」
「ちゃんと皆には挨拶してきたか?」
「うん、もちろんなの!」

 玄関でシュットラウルさんと話していると、元気な声を出して階段を駆け下りて来るユノ。
 ユノ自信は準備らしい準備も必要な人だけど、待っている間、昨日と同じく使用人さん達と遊んでいたため、その片づけをしていた。
 物を壊したり汚したりはしていないけど、今日は道具を使っていたみたいだからね……お手玉みたいな物でキャッチボールとか、屋内でする事じゃないだろうに。
 使用人さん達が楽しそうだったので、物を壊さないよう注意だけして、俺は部屋で待っていたんだけど……とにかく、ユノの準備は散らかしたお手玉らしき物の片付けとかをしていたってわけだね。

「それじゃ、ユノも来た事だし、兵士さん達の訓練に行きましょうか」
「うむ……と言いたいところだが、少し待ってくれ」
「え?」

 早速訓練にと思ったんだけど、シュットラウルさんに止められた。
 何か他にやる事や準備があるのだろうか?

「もう少ししたら来るはずだが……」

 そう言って、入ってきたまま開けっ放しになっている玄関を見るシュットラウルさん。
 すぐに出る予定だから、玄関が開いたままなのは別にいいんだけど、誰が来るんだろう? と思っていたら、小柄な影が外から駆け込んできた――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

処理中です...