神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
1,126 / 1,955

猪突猛進なアマリーラさん

しおりを挟む


「おーい、リク様ぁ!」
「あ、リネルトさんの事を忘れかけてた。エルサ、もう少し下に降りられる?」

 アマリーラさんに驚いてそのままになっていたけど、地上では手を振ってこちらに叫ぶリネルトさんがいたんだった。
 状況的に、アマリーラさんと二人で門の中に戻ってもらうのも、時間がかかってしまうだろうし……エルサに乗ってもらう方が早そうだ。
 俺達が運ぶか、このまま乗っていてもらった方がいいだろう。

「結界があれば、魔物が群がる事もないからできるのだわ」
「それじゃ、お願い。――リネルトさん、少し高度を下げるのでエルサに乗って下さい!」
「はーい。でも、エルサ様を煩わせる事もないですよぉ! とぉ!」
「お?」

 エルサにお願いして、少し高度を下げてもらおうとしていたら、リネルトさんは首を振って飛び上がった。
 リネルトさんもアマリーラさんのように、ジャンプで高く飛び上がれるんだ……なんて考えている間にふわりと、まるで重力を感じさせないような動きでアマリーラさんの隣に着地……というか着席?
 最初から座っている形で降りて来たから、そっちの方が正しいのかも。
 とにかく、アマリーラさんの時とは違ってエルサに負担をかける事なく、乗ってくれた。

「凄いですね、リネルトさん。普通のジャンプとは違うみたいですけど……魔法?」
「えへへー。そうですよ、魔法なんです。もっと高くにも行けますよぉ。えっと、全身に風を纏わせるようにして……」
「リネルト、そんな魔法の事よりも今はこれからどうするかだ」
「ちぇ~」

 飛び上がる瞬間もそうだったんだけど、リネルトさんのジャンプは何処か不自然だった。
 考え付く理由としてはなんらかの魔法を使ったと思ったんだけど、ちょっとちょっと嬉しそうに、照れくさそうに? どういう魔法かを教えてくれる。
 途中でアマリーラさんに止められた……個人的には聞きたい事だったんだけど、確かに今悠長に話している場合でもないか。
 ……全身に風を纏わせて、ね……覚えておこうっと。
 外壁を飛び越える時はやり過ぎちゃったし、きっと参考になるはず……数メートルから数十メートルも飛び上がらなきゃいけない状況はあまり多くないかもしれないけど。

「リク様、それでは私達は空から魔物達を急襲して……」
「いやいやいや、そうじゃなくて。アマリーラさんとリネルトさんの二人が、門の内側まで引かなかったので、迎えに来たんですよ?」
「アマリーラ様が、言う事を聞いてくれないんですよぉ。指示が出ているのに、魔物に単身で向かっちゃって……追いかけるのは苦労しましたぁ」

 乗っているエルサから身を乗り出し、今にも地上に飛び降りそうなアマリーラさんを慌てて止める。
 この人、話し方や雰囲気は落ち着いているのに、結構猪突猛進な気があるなぁ……戦っている様子を見ていると、激情家っぽくもあったし。
 リネルトさんは暢気な雰囲気と喋り方のままで、イメージ通りなのに……。
 大柄な体で素早い動きが得意のスピードタイプというのは、意外だったけど。

「ですが! このまま退いてしまえばいずれ門を突破されかねません! 一体一体の魔物はそれほどでもありませんし、多少戦える者ならば倒せますが……数が多過ぎます! 少しでも私が減らさないと……」
「ストップです、アマリーラさん」
「っ!」

 自分が……と訴えるアマリーラさんの前に、人差し指を立てて止める。
 この人はこの人なりに、現状をなんとかしようと頑張っているんだろう。
 それが、一人で魔物の中に突撃してってのは、ちょっと無謀というか行き過ぎだとは思うけど。
 アマリーラさんが元気なうちは、確かに怪我を負わせる魔物はほぼいないと言って良さそうだ……けど、獣人とはいえいずれ疲労はする。

 そして疲れから動きが鈍ってしまえば、圧倒的な数の魔物の前に押されて最後は……。
 って事になりかねない。

「大丈夫です、安心して下さい。ここの魔物は俺が殲滅しますから。まぁ、追加の魔物が来ないとも限りませんが……しばらくは猶予ができます」

 ワイバーンとか、サマナースケルトンへの対処ができなければ、殲滅してもまた魔物が来る可能性はある。
 けどまぁ、クォンツァイタで空気中の魔力を多少なりとも吸収したり、センテ側の体制を整えたり、これまで戦ってきた人達の休憩はできるはずだ。

「アマリーラさんは、俺が殲滅した後にもし魔物が追加されるようであれば、そちらの対処をお願いします」
「リク様のご命令であれば、身命を賭して遂行する所存です。ですが……殲滅とは、一体どうやって……? いえ、リク様であれば可能だと疑うわけではありませんが」

 俺の命令って……だからアマリーラさんはシュットラウルさんの部下で、そちらの命令を聞く立場だろうに。
 獣人として、強い者に従うという考えが染み込んでいるのかもしれないなぁ。
 その辺りの感覚は、獣人さんの知り合いが少ない俺にはまだよくわからないか。

「まぁ、ちょっとした考えがありますから。――えっと……エルサ、結界を解くから一旦離れよう」
「了解したのだわ」

 アマリーラさん達を捕獲……じゃない、話をするための結界を解き、エルサが高度を上げつつその場を離れる。
 地上にいる魔物達は、ぽっかり空いていた結界のあった空間に殺到し、俺達を見上げて手を伸ばしていたけど、当然届くわけがない。
 空を飛べる魔物は地上の群れの中にはいないみたいだからね。
 それらを見ながら、ゆっくりと距離をはなす。

「うーん……大分魔物が門に群がっているなぁ。もうちょっと近付かないと、状況がくわしくわからないかな? これだけ人や魔物の数が多いと、探知魔法もあんまり役に立たないし」

 探知魔法で離れた場所の事がある程度わかるとは言っても、結局頼りになるのは自分の目。
 実際に見た方がより状況がわかるのは間違いなく、数十どころか数百や数千の人や魔物が密集している状況では、探知魔法で詳しい状況はほぼわからない。

「でしたら私が……」
「アマリーラさん?」
「リク様、アマリーラ様は目がいいんですよぉ」
「……リネルト、お前もそう変わらんだろう。――リク様、我々獣人は一部を除いて人間よりも遠くを見渡せるのです。他にも、遠くの音を聞き分ける耳や、匂いを嗅ぎ分ける鼻を持つ者もいます」
「成る程、それは確かに獣人らしいですね」

 人間は五感をバランスよく扱うけど、獣人……というか獣は鼻や耳、目などの一部器官が人間とは比べ物にならない程発達していたりする。
 人としての特徴と、獣としての特徴を併せ持つのだと思えば、確かに獣人らしいと言えるかな。

「ふむ……門の外にはもう私達以外はいないようです。まだ門は閉じていませんが、その準備はできているように見受けられます」
「多分、アマリーラさん達が戻って来るのを待っているんだろうね。んー、できればすぐにでも門を閉じて欲しいんだけど……魔物が押し寄せているから、とどめておくのも限界があるし。仕方ない、このまま外壁上にいる人達に伝えに行こう」

 目を凝らして門の周辺を見たアマリーラさんが、状況を伝えてくれる。
 門を閉じるのが早ければ早い程、被害は少なくて済む。
 外壁の上からも攻撃しているから、どれだけ魔物の数が多くてもしばらくは突破されないだろうからね――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...