1,151 / 1,955
ボスワイバーンからの提案
しおりを挟む「ぬぅ……せかっくこの完全防御魔導フルアーマー……略して魔導アー……」
「それ以上は駄目です!」
「リク殿?」
「それ以上言っちゃいけない気がするので、絶対駄目です!」
まったく、シュットラウルさんは何を言おうとしているのか。
そんな、どこぞのゲームで魔法を使えない人が魔法を使うための鎧というか、機械のような略称なんて。
白い鎧は、防御用魔法鎧で良いんじゃないかな、長ければ魔法鎧で、うん、それで決まりだ!
それに、完全防御って言っているけど、多分本当に完全じゃないし……次善の一手や最善の一手、その他にも俺からはなんとかする方法がありそうに見える。
ともかく、シュットラウルさんの危険な発言は結界の外に投げ出しておいて……ここから東門まで戻る方法だ。
せめて、魔物に囲まれている状況を抜け出さなくては、どうにもならない。
エルサに乗せるのは、魔法鎧の重量があるから無理そうだ……シュットラウルさん達の足が、硬い地面に深くまでめり込んでいるくらいだし。
数十キロじゃ済まない重さだろうなぁ、よく着ていられるもんだ、それも魔法鎧の魔法効果なんだろうけど。
「ガァゥ。ガァガァ!」
「うん? どうしたんだ、ボスワイバーン?」
どうしようかと悩んでいる俺達に、結界内の魔物を倒し終わったボスワイバーンが吠えて、何かを主張。
何を言っているのかわからないけど、何か案があるらしい……俺達の話、聞いていたのか。
まぁ、魔物達に苦戦する事はなかったようだから、余裕があったんだろう。
「ガァ! ガァゥ!」
「GURU!」
もう一体のワイバーンに何かを伝えるように吠えるボスワイバーン。
ワイバーンは、一つ頷いて体を丸めた。
「ど、どうなっているのだ、リク殿?」
「いや、俺もわかりませんけど……何かやりたいようです。でも、一体何をやるつもりなんだろう……?」
シュットラウルさんが戸惑うのも無理はない。
丸まったワイバーンは、前足や後ろ足をコンパクトに畳んで顔をお腹に付けるくらいになり、尻尾を巻き付けて体を固めている状態になった。
何かの衝撃とかから、体を守ろうとしているようにも見えるけど……。
「ガァゥ、ガァ、ガァ!」
「えっと……もしかして、これを打つ……のか?」
「ガァ!」
丸まったワイバーンの近くで、体ごと回転するように尻尾を振るボスワイバーン。
当ててはいないけど、素振りをしているようだ。
もしかしてと聞いてみると、ボスワイバーンは深く頷いた。
「……うーん」
「ど、どういう事だ?」
悩む俺に、まだよくわかっていない様子のシュットラウルさん。
エルサは頭にくっ付いたまま静観しているようだけど、大隊長さんも首尾を傾げて頭上にハテナマークを浮かべているような雰囲気だ。
「つまりはこういう事か……?」
「ガァガァ!」
「はぁ……えっと、シュットラウルさん……」
ボスワイバーンがやろうとしている事を想像して、答え合わせ。
合っていた事に溜め息を吐きながら、シュットラウルさんにも説明した。
ボスワイバーンとワイバーンがやろうとしている事は、限界まで体を丸めて防御態勢を取り、そのまま誰かが打って転がす。
そうする事で、周囲に集まっている魔物達を弾いたり潰したりしながら道を作る、と。
まるでボーリングだ……再生能力と、ワイバーンの硬さがあるからできる発想かもしれない。
いや、再生能力があってもそんな発想にはならないだろうから、ボスワイバーンは特殊なんだろうね。
じゃないと、ワイバーンボールのボーリングだけじゃなく、俺達と対話しようなんて考えないか。
「な、成る程な。再生能力については、私は見た事がないのでわからないが……皮膚の硬さがあるからこそという事か」
「ワイバーンでなければ、考え付かない無謀な案のように思えますが……」
「だが、転がるだけだろう? 門への道を作ると考えれば、理にかなっている気もするな。ふむ……」
「あぁ……シュットラウル様が変な事を考えている気がします……」
俺の説明でボスワイバーン達のやろうとしている事を理解して、戸惑いつつも受け入れたシュットラウルさんと大隊長さん。
何やらシュットラウルさんが手を口元と思しき場所に近付けつつ、何かを思案している様子。
まぁ、腕の可動域が足りなくて、口元どころか顎の位置くらいにも届いていないけど。
とりあえずあちらは、大隊長さんに任せよう。
「ボスワイバーン、大丈夫なのか? 再生能力が凄いのは知っているけど……」
「ガァゥ!」
「GAU!」
案を理解して声を掛けると、ボスワイバーンは任せろと言わんばかりに頷いて、前足で自分のお腹を叩く……人間で言うと、胸を叩いてどーんと任せろ! みたいな感じかな?
ワイバーンの前足は短いし、胸を叩くようには動かせないんだろう……というか、結構人間臭い仕草をするんだな、どこで覚えたのか知らないけど。
ワイバーンの方も、丸まったまま請け負うように意気込んだ返事が聞こえた。
こっちもこっちで器用だ。
ワイバーンの再生能力は、戦った限り一分足らずで根元から斬った手足や翼が再生する、破格の能力だ。
さすがに胴体真っ二つとか、首を斬り落とすと再生能力を発揮する前に息絶えるようだけど……多少の傷なら数秒で再生するだろう。
結界に阻まれて、ゾンビよろしく張り付いている魔物達の中に、ワイバーンの皮膚を裂いて怪我を負わせられるような魔物は……いないわけじゃない。
オークとかオーガとか、力の強い魔物がいるからね……あくまで不可能じゃないだろうってくらいだけど。
ともかく、丸まって防御態勢を取ったワイバーンなら、勢いよく転がって多少の怪我をする事はあっても、再生能力で補う事ができると。
しかも転がって魔物を弾き飛ばしたり潰したりしながら進むので、魔物達の方から攻撃をさせる猶予を与えない……考えれば考える程、シュットラウルさんの言うように理にかなっているように感じてしまうね。
他にいい考えや、欠点なども探せばあるのかもしれないけど。
「……わかった。それじゃ、門は……あっちだね。あの方向の結界を解くから、そっちに向かって打ってくれ。あ、結界はわかるか?」
「ガ、ガァゥ!」
提案を受け入れて方向の指示をしながら、結界は透明なので見えないから、ワイバーン達は今どういう状況なのか理解しているのかも、一応聞いておく。
戸惑いながら頷くワイバーン……あぁ、そういえば、さっき結界内の魔物達を蹂躙している時、勢い余って顔から激突していたっけ。
シュットラウルさんと話していたから、見ただけで特に注目していなかったけど。
怪我をするような感じではなかったからね……ボスワイバーンの反応を見るに、痛くはあったようだけど。
「じゃあ、結界に隙間を空けたら魔物が入って来ちゃうから、開けたと同時に打つんだよ。合図はするから!」
「ガァゥ! ガァ?」
「GURAU!」
門の方向に体を向け、ボスワイバーンにタイミングを合わせるように言う。
ボスワイバーンは、返事をするとともに尻尾をブンブンと振って準備を整えつつ、丸まっているワイバーンにも声をかけている。
ワイバーンのはその体制で色々苦しくないか、と疑問ではあるけどそこは気にせず……いつでも大丈夫と言うように、こちらも意気込んだ返事をしていた――。
0
あなたにおすすめの小説
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる