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特殊な趣味のワイバーン活用法
しおりを挟む「私はそこまで悪趣味ではありませんよ。ただ、皮を剥いでから再生はどれほどなのかを、確認したかっただけです。もしワイバーンがこちらに協力的ではなく、敵対する相手であれば、もっと色々試すのも良かったのでしょうが、そこはわきまえているつもりです」
「成る程……本当にわきまえているのかどうかは、昨日からずっと響いていた音や揺れから、少し怪しくはありますけど……一応納得しときます」
つまりカイツさんは、再生にかかる時間を計ったり、再生する様をじっくり見たかったという事だろう。
俺が戦ったワイバーンは、手足や羽根を切り落としても再生していたし、その事はカイツさんにも伝えてある。
もし敵対して戦うだけのワイバーンであれば、カイツさんは躊躇わず腕や足、羽根を切り落として実験していたんだろうな。
……あれ? カイツさんは悪趣味と否定したけど、まだ俺の中にもしかして嗜虐的な趣味があるのでは、という疑問が晴れないぞ?
「……ま、まぁ、これからもカイツさんがわきまえていると言う言葉を、信用するとして……一応、成果の方は聞いておきます」
「わかりました。そうですね、ワイバーンは……」
俺の疑問はともかくとして、一応ワイバーン達を引き入れた責任もある事だし、カイツさんの研究成果を聞く事にした。
意気揚々と話し始めたカイツさん……皮を剥いでからの再生時間は、当然の事ながら傷の大きさによって違うらしい。
大体手のひらサイズの皮を剥ぎ取った場合は、その皮を箱に入れてもう一度ワイバーンを見た時には後すら残さず再生していたとか。
数十センチに及ぶ傷の場合は、ほんの少し休むくらいで再生するらしいから、大体数分程度ってところか。
さすがに、切り落とした部位などの再生は試せないけど、これらの事からどれだけの時間で再生するのかを、計算などで導き出そうとカイツさんは考えているらしい。
……まぁ、再生能力の事を詳細に知っていても、損はないかな? 空を飛ぶくらいは維持するみたいだけど、基本的に傷を負ったワイバーンは再生に集中してしまう。
カイツさん曰く、再生能力を強化したからなのか、それとも優先順位を復元時に刻まれているかのどちらか、という事らしい。
例え戦闘中だとしても、戦闘行動を中止してでもそちらを優先する……これは、俺やユノが倒したワイバーンもそうだったから、すぐに理解できた。
そういえば、ユノとワイバーンを倒した時には再生能力を色々試そうと、斬り取った腕や足が生えてきたらまた斬ってなんてやっていたし、俺もカイツさんの事をなんだかんだと言えなかったと気付いた。
今更だけど。
ともかく、数秒程度で再生するくらいならまだマシだけど、それでも戦闘中は危険だし、大きな傷を負ってしまう可能性も考えたら、カイツさんの研究も必要な事のように思える。
ちなみに、皮を剥ぎ取るのに使っていた物はすぐにボロボロになって使い物にならなくなって行ったらしい……そりゃ、皮そのものが硬いからね。
「以上の事から、ワイバーンを傷つけられるくらいの相手と戦わせるのは、得策ではないと思われます。どうしてもという状況はあるでしょうが……もし任せて頂けるのでしたら、このワイバーンと同じように、皮を剥いでも問題ないワイバーンを集め、後方で素材を作り出す方が役立つのではないかと」
ワイバーンを傷つけられる相手……ある程度限られては来るけど、そういった相手ならばまず傷を負わせる、再生に集中した隙にさらに攻撃を加える、といった事ができてしまう。
再生能力は凄い能力だとは思うけど、その分直接戦闘に向かない欠点も持っているってわけだね。
俺自身も考えていた事ではある。
だからカイツさんの提案は、一部のワイバーンを素材採取用として運用するのがいいのではないか、という事だ。
多少の痛みを喜ぶワイバーンなら、確かに受けてくれそうだし、後方でという事だから危険も少ない。
しかも、再生するからいくらでも……多少時間は必要だとしても、入手する事ができるわけだ。
「と、とりあえずそれは保留で。ワイバーンに関しても、どう扱うかをまだはっきりと決めていないわけだし……検討するとだけ言っておきます」
「是非、前向きに検討して頂きたいところです」
少し前のめりになっているカイツさんを留めながら、提案は保留にする。
一応、センテでは受け入れられる方向に進んでいるけど、それだけだからね。
運用方なんかを考えていても、姉さんにもまだ話していないわけだし……はっきりとした事は決められる段階じゃない。
最悪の場合、全て処分するような決断が下る事も覚悟していたりもする。
その場合は、どこか人が来ないような所に連れて行って、人に害を成さないように言い含めつつ隠れて住むようにするつもりだけど。
……上手く行くかはともかくとしてね。
「フィリーナ、フィリーナ起きて」
「ん、んん……ふわぁ……あら、リク? 戻って来ていたのね」
カイツさんとの話を終わらせ、椅子に座ったまま寝ているフィリーナに声をかけて起こす。
いつまでもこんな所で寝かせていられないし、使用人さんが掛けてくれたらしい毛布はあるけど、風邪を引いたらいけないからね。
すぐに目を開けたフィリーナは、欠伸をしながら俺を確認。
寝起きは悪くないようだ。
「って、もう真っ暗じゃない!」
「結構寝ていたんだね」
キョロキョロと周囲を見回し、日が沈んでいる事に驚くフィリーナ。
篝火なんかはあるけど、この反応を見るに明るいうちから寝ていたんだろう。
「皮を剥いで、ワイバーンとカイツが喜んでいる様子を、延々と見るのも馬鹿らしかったのよ。ここまで寝続けるとは思わなかったけど……」
「まぁ、夜通しカイツさんを叱ったりしていて、疲れてたんだと思うよ。そろそろ夕食だし、お腹いっぱい食べて宿の中でゆっくり休んだ方がいいよ?」
注意する必要がなくなって気が緩んだら、疲れが押し寄せて来たんだろう。
まだそれなりに疲れが溜まってもいそうだし、休むなら宿の中でゆっくり休んだ方が、疲れは取れると思う。
「そうね……でも……」
頷きつつも、カイツさんの方に視線をやるフィリーナ。
あー……カイツさんがやり過ぎないか、心配なんだろうね。
確かに、皮の採取は大丈夫だったみたいだけど、基本的に誰かが見ていないと心配にもなるかな。
「安心してフィリーナ。カイツさんも今日はもう休ませるから」
「そう? それなら安心ね。ワイバーン達もゆっくり休めそうだし」
カイツさんは昨日からずっと休まず、ワイバーン相手に何かをしていたわけで、目の下に凄い隈ができていたからフィリーナを起こす前に休むように言っておいた。
今は、採取した皮の入った箱を片付けている途中だ。
ワイバーンの方は、俺が戻って来てから皮を剥がれなくなって残念そうにしていたんだけど……まぁ、休んでおいた方がいいだろう。
再生能力があるといっても、無限に再生できるわけじゃないからね。
安心するフィリーナと、カイツさんが片付けをするのを待って一緒に宿へと戻った。
ちゃんとカイツさんを宿に連れて行かないと、目を離した隙にまた何かやり始めそうだったからね。
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