1,190 / 1,955
東の収容所の雰囲気は明るい
しおりを挟む「とにかく、行ってみるのだわ」
「そうだね。えーっと……あ、すみませーん!」
「はい、怪我人の受け入れでしょ……リク様!?」
エルサの言葉に従って、密集するテント群に近付きながら受付みたいになっている場所で、座っていた男性に声を掛ける。
俺を見て驚いた声を出す男性に苦笑しながら、同じ場所で他の作業をしていた人達からも、驚きの視線を向けられている事を意識しながら、怪我人の治療をしに来た事を告げる。
この受付は中央は緊急性が高いからなかったけど、西側にはあった怪我人を受け入れてもらうための場所だ。
酷い怪我で緊急のものはスルーできるけど、一応この受付を通してどこのテントに収容されるかなどが決めら、全体の管理も担っていたりもする。
各テントの空き状況や、怪我の程度を見て割り振ったりもしているみたいなので、まずはここに話を通さないとね。
「こちらです……」
「……本当に、数は多くても怪我の程度は低いんですね」
受付で案内してくれる人が折れについてくれて、通された場所。
一番怪我の度合いが酷く、数も多いテントらしいけど……中に入って全体を見通した限りでは、目を覆いたくなるような怪我をしている人はいなかった。
ほとんどの人が、手当てをしてい暮れている人と話したり、体を起こしている状態だ。
数は中央や西よりも多くて、結構密集しているようだったけど。
「はい。手の施しようがない方は中央に運ばれます。命にかかわらない、ですが重傷という方も運ばれるのですが……この数日程度、あまり酷い怪我をするような方は出ていないようです」
案内の男性が言うには、最近は重傷者自体が少ないらしい。
時期的考えると、俺が戻ってきた事や、クォンツァイタで魔法がほぼ使い放題になってからかな?
そう思って聞いてみると……。
「そうですね、そのくらいかと存じます。あと……ここに運び込まれた方にお聞きしたのですが、侯爵様が先陣を切って魔物の大群に突撃したのだとか。おかげで、魔物達の攻勢が緩まったとも聞いております」
「あはは……」
シュットラウルさんが魔法鎧を着て、魔物に突撃したおかげで、重傷者が減るといういい影響もあったのか。
まぁ、ワイバーンを連れて俺も乱入したし、それ以前にちょっとやり過ぎたけど、俺が魔法を使って食い止めたのも何かしらの影響があったのかもね。
それだけ、苦しむ人が減って良かったと思うし、今は優位に戦闘を進められているという事だろう。
「ここは、あまり臭くないのだわ。……臭いのには変わりないけどだわ」
「確かにね。まぁ、酷い怪我をしている人が少ないからじゃないかな?」
案内の男性との話を終え、軽傷者の治療に当たりつつちょっとした間でエルサが呟いた。
他の場所と比べて、様々な薬品の混じった臭いがあまり感じられないからだろう。
とはいっても、消毒薬のような……日本でも病院で感じられる臭いはそれなりに感じるし、何より汗臭い。
まぁ、戦闘して怪我をした人達が運ばれ、密集している状況だからそれくらいは仕方ないんだけど。
ちなみに軽傷と言っても、ちょっと擦りむいた程度の傷ではなく、魔物の牙が深く刺さっている人や、脱臼や打撲でそれなりに痛みを感じる怪我をしている人が多い。
すぐさま命に影響があるわけじゃないけど、戦闘に支障が出るような怪我だね。
「ありがとうございます、リク様……!」
「いえいえ」
足を強打されて骨にひびが入っているのか、詳しくはわからないけど、腫れている部分の治療を終えてお礼を言われる。
これくらいなら、俺が治癒魔法を使わなくても治るんだろうけど……早く元気に動けるようになってくれればという思いと共に、お礼を言う男性に手を振って気にしないでと伝えた。
「……あの、リク様。ものすごく見られているんですけど……」
「あはは……気にしないで下さい。それじゃ、行きますよ?」
「あ、はい! よろしくお願いします!」
治療を始めて数人目、腕や足などに多数の傷を負った女性に治癒魔法を使う準備をする。
その際、俺の頭にくっ付いているエルサが、ジーッとその女性を見つめていたようで、見られている女性が戸惑っていた。
とりあえず、気にしないように伝えて治癒魔法を発動させ、怪我の治療。
多分エルサは、気持ち悪い気配を探るため、少しでも情報を得ようとして怪我人をじっくり観察しているんだろう。
周辺の気配を探りつつも怪我人を観察しているのは、これまで収容所での気配が濃かったために、怪我人に何か原因がないかを探っているからだろうと思われる。
ただ、怪我人が多くても軽症の人が多いので、他の収容所よりここの雰囲気が少し明るめだから、気配の方が濃いのか調べて結果が出るのかはわからないけど。
「怪我が治ったら、また戦いに行かなくちゃなぁ」
「何を言っているのよ、それが仕事でしょ!」
「ま、せっかくリク様にこうして治してもらったんだから、きっちり働かなとな!」
なんて、俺が治療した人もまだの人も、こうして軽口を叩くくらいはできているから。
「あまり無理はしないで下さいねー」
なんて言いつつ、苦笑して他の怪我人を治療したり、俺も他の収容所よりは気が楽だ。
西側や、中央は暗い雰囲気だったからなぁ……特に中央。
まぁ、怪我の程度を見る限りでは仕方ないし、苦しんでいる人が多くて必死に手当てしている人もいるんだから、明るい雰囲気だとかは関係ないんだろうけど。
「ま、魔物達ももうすぐいなくなるだろうからな」
「そうだな。リク様の協力もあるが、皆で協力した結果だ」
「被害がないわけじゃないけど、街の人達の犠牲が少ないのは、今回一番誇るべきよね!」
「俺の活躍があってこそだな!」
「何を言っているんだ、お前なんて、魔物の前で緊張して転んだ挙句に、魔物に群がられていただけだろうに」
「そ、それがあったから、魔物の注意が引けて他の奴らが存分に戦えたんだろうが!」
「あはははは! その程度で全体に影響が出るようなら、もっと簡単に戦いは終わっていたわよ! ってて……」
「ほら、あまり無理するな。怪我人なのは変わりないんだから、もう少しおとなしくしていろ」
「そうだそうだ、傷跡が残っても知らないぞー!」
「いいもん、私この戦いが終わったら結婚するって決まっているんだもん。傷跡くらいされないもん!」
「もんもん言いながら、魔物に剣を振り回しながら突っ込む女を好む、奇特な男もいるのだな」
「うるさいうるさい! っ~!」
「はいはい、傷跡が残っても大丈夫なのはわかったから、痛いなら無理しない!」
なんて、同じテント内で怪我をしているはずの兵士さん達が、それぞれ話している。
手当てしている人達も、痛みに顔をしかめつつも軽口を言い合っている人達の様子を見て、苦笑していた。
ただ、何かのフラグが立ってしまいそうなので、女性兵士さんはもう少しおとなしくしておいた方がいい気がするけどね。
それにしても、この東側の雰囲気の良さはいくら軽傷の人が多いからといっても、冗談めいた事を言えるくらい明るいのは驚きだ――。
0
あなたにおすすめの小説
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる