1,197 / 1,955
最初から干渉されていた
しおりを挟む「な、何をとち狂ったのだわ、この駄神はだわ!?」
「えー、ひどいよ駄ドラゴン!」
「素が出ているけど……」
エルサの言葉に反応して、駄ドラゴンと言わずにいられないのは、無邪気な笑顔のままでも間違いなく破壊神だという事を示している。
けど、この女の子は……。
この世界に来て、冒険者になる前の事を……そこまで時間は経っていないはずなのに、ずいぶん昔に感じる記憶を掘り起こした。
「も、もしかして……ロジーナ……?」
「お兄ちゃん、覚えててくれたんだね!」
名前を呼ぶと、それこそ笑顔が弾けるという表現がぴったりな程、喜ぶ破壊神。
「一体どうして……え? でも……」
「混乱しているの、お兄ちゃん?」
戸惑う俺に、純真無垢に見える顔を向けるロジーナ、いや破壊神。
ロジーナが破壊神で、破壊神がロジーナ? いや、神様だったらその姿に似せているだけって事もあり得るのか。
でも、俺が冒険者に興味を持った事や、剣が使えない話をした事を知っているのなら、もしかしてロジーナ本人?
いやいやでも、神様だったらあの時話した内容を知っていても、おかしくないのか……?
「いい加減気持ち悪いのだわ……」
「気持ち悪いって酷いよ駄ドラゴンさん? んんっ! ふぅ……こっちの喋り方の方が、楽だからいいのだけど」
ひたすら混乱する俺と違って、冷静というか本当に気持ち悪いといった声を出すエルサ。
ロジーナと会ったのは、エルサとの出会いよりも前だから、知らなくても当然か。
確かに、これまでの破壊神とはその存在感や雰囲気をがらりと変えて、本当に小さな女の子になり切ったような喋り方と表情は、気持ち悪く感じるけども。
破壊神の方も、これまでの話し方の方が楽なのか、エルサを睨みながらこれまで通りの気配と喋り方に戻った。
「一体、どういう……?」
「ふふふふ、リクが驚くのも無理はないかしら? 私はあいつとは表裏一体なの。いつもは干渉しないけど、面白そうだったから。それにリクったら、すぐにその馬鹿魔力でとんでもない事をしでかすと思っていたのに、なぜかそこらの人間に溶け込んでしまったからね」
「馬鹿魔力って……」
「そこだけは、間違っていないのだわ」
エルサまで……以前から、それらしいことは言われていたけど……破壊神にまで馬鹿魔力と言われ始めた。
あれ? 隔離されたていた時も言われてたかな?
「神をも退ける魔力を持っておいて、それ以外の表現を私は知らないわ。しかも、あの時よりさらに魔力量が増えているようだし……意味がわからない馬鹿魔力よ」
うぅむ……そこまで言われると確かに、自分が常識外れの魔力を持っているような気になってしまう。
……さすがに、異常な魔力量ってのは自覚していたけど、破壊神にまで言われる程とは。
でもやっぱり、俺の感覚だけじゃなくて本当に魔力量が増加しているんだなぁ。
「そ、それで……俺の魔力はともかく、一体どういう事なんだ?」
「簡単な事よ。私はこの世界に来たリクの事を興味深く見ていた。でも、全然戦いに身を投じる気配がなかったのよね……それじゃ見ていて面白くないわ。戦って、人間や私の創った魔物を破壊するところが見たかったの。だから、一計を案じたってわけ」
「一計を……それじゃもしかして……?」
ロジーナと初めて会った、あの時の事をはっきりと思い出す……実際にロジーナと会って話したのは、乗り合い馬車に乗ってヘルサルからセンテに向かう時だけだったので、すぐに話していた内容を思い出せる。
「そう。剣や冒険者に興味を持っている風を装って、リクに興味を持たせるように仕向けたのよ。剣を持っているのに、使えないというのには少し驚いたけどね」
「あれは……戦った事がない俺を案じて、マックスさんが持たせてくれたものだけど」
ロジーナは、馬車で一緒になった俺……というか剣に興味を持って話しかけてくれた。
「でもそういえば、あの時ソフィーも一緒に馬車にいたから……」
「えぇ、そういえばそんな女もいたわね」
剣に興味を持っているなら、最初から冒険者然として剣を携えていたソフィーに話し掛ける方が良かっただろう。
俺なんて剣を持っている以外、平凡な服装だったし……皮の鎧を身に付けているソフィーの方が、興味を満たせられるはずだ。
それに、ロジーナくらいの女の子なら、俺みたいな男に話し掛けるよりも、女性に話し掛けた方が自然というか、話しかけやすいからね。
……ソフィーが、子供が話し掛けられない硬い雰囲気を持っているとかは、頭の隅に追いやっておこう。
「剣をきっかけに、リクが冒険者に対して興味を持つように仕向けたってわけよ。破壊をするなら、戦うのなら冒険者が一番向いているから。兵士とかでも悪くはないんだけど……そちらは戦争とか、今のような大量の魔物が襲って来る時じゃないとね」
「そんな……」
俺はまんまと、ロジーナ……いや破壊神に誘導されて、冒険者に興味を持ったってわけか。
あの時乗り合わせた商人さんが、親切に教えてくれたし、マックスさんが持たせてくれた弁当代わりのパンを使った料理のおかげで、ソフィーとも話ができた。
ロジーナだけがきっかけとは言わないけど、冒険者に関する話を聞く事ができたのはそれがあったからだと思う。
「でも……それじゃ……あの時一緒にいた母親は……?」
確かレッタさんだった思う。
母娘で馬車に乗っていたのを覚えている。
もし破壊神が、人間としての体を作ったのがロジーナだとしたら、あの時のレッタさんは一体……。
まさか、人間から生まれてきたなんて事はないだろう……俺がこの世界に来てから一カ月程度の事だし、それまで俺の様子を見ていたと言っているから、時期が合わない。
「あぁ、あれね。あれはこの世界での協力者……といったところかしら? 今は別の場所にいるけれど、あれは間違いなく混じりけなしの人間よ。ただ、母娘を演じていただけのね」
「演じていた……」
混じりけなし、と聞くと人間と別の種族……エルフや獣人とのハーフがどうとか考えるのかもしれないけど、今目の前にいるのは破壊神。
つまり、別の神様とかではない事を示している。
レッタさんは間違いなく人間なのか……協力者だって事は破壊神の事も知っているのかもしれないけど、今いないのだから確認のしようがない。
破壊神も、教えてくれそうにない雰囲気だし。
「それじゃ俺は、まんまと口車に乗って冒険者になったってわけか……」
「そうよ。ふふふ、面白かったわぁ。特に、街へと押し寄せるゴブリンに対して破壊の限りを尽くしたのとか。私としては、怒りなどの感情に任せて、街ごと消し飛ばす方が好みだったけど……そこの駄ドラゴンも邪魔していたわね」
「だから駄ドラゴンと呼ぶななのだわ、この駄神! あの時は、あぁしないと私も危険だったのだわ!」
ゴブリン……俺が魔法で倒したというか焼いたというか、消滅させた時の事か。
地面がガラスになるくらいの熱量が、街のすぐ近くで発生したんだから、エルサがいなかったらかなりの影響がヘルサルに及んでいただろう。
外壁とか、石造りなのに溶けてた部分もあったくらいだからね。
その事に関しては、エルサに感謝しかないね――。
0
あなたにおすすめの小説
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる