神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

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兵士さん達に馴染んでいるワイバーン

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 ワイバーンの数が少なく、被害も出ていないとはいえ、王国のどこかでは大事にはなっていないまでも、小さな被害が出たり、冒険者への討伐依頼が出されたりもしたんだろうけどね。
 全体数は少なくても、間違いなく王国の領土内にワイバーンがいるんだから。
 ともあれ、そんなこんなで他の国内でよく見かける魔物とは違い、大きく悪感情を抱く人も少ないのではないかという事。
 そして、俺が連れて来てシュットラウルさんが認めている事や、ワイバーン自体が穏やかで人間に敵意を向けない事から総じて、多くの人に受け入れられつつあるってわけだ。

 まぁ、王都まで連れて行ったら、ここまですんなり受け入れられるかはわからない……とマルクスさんが言っていたけど。
 でも想像していたよりは、受け入れられる可能性もあるようで、一安心といったところだ。

「ん? あれは……?」
「グ……GRA?」
「惜しい! ちょっと違うんだよなぁ。もう少しで、魔物らしくない鳴き声になるんだが……」

 ワイバーンの報告を聞き終わった頃、ふと見てみると一体のワイバーンと一人の兵士さんが、顔を突き合わせて何やらやっていた。
 兵士さんの方は、悔しがっているようだけど……?

「あれは、ワイバーンの鳴き声に怯える人もいるかかもしれない、との事で……怯えない鳴き声の練習とか。一部のワイバーンが、面白がってい参加しているみたいですね。……止めさせますか?」
「いえ……馴染んでいるようですから、止める必要はないと思います」

 不思議に思っていると、報告してくれた兵士さんが教えてくれた。
 ボスワイバーン以外は、泣き声って絶対に人が発声できないようなものだ。
 人によっては、おぞましい鳴き声……と表現したりもする。
 まぁ、魔物によってちょっとだけ違いがあったりはするけど、基本的に音を発しているというくらいしか、人には認識できない。

 俺には、多少声っぽく聞こえたりするんだけど……これも、こちらの世界に来る際に言葉とか文字が読めるようにしてもらった影響なのかもしれない。
 ともかく、そういった魔物っぽい鳴き声ではなく、多少なりとも動物っぽいというか……ボスワイバーンくらいには、声と認識できる鳴き声を出せるように、という事みたいだ。
 見れば、他にも数体のワイバーンが近くにいて、何やら声を出そうと練習しているから、ワイバーン達も人間に馴染もうとしてくれているようだ。
 仲が良さそうな場面が見られて、少し面白かった――。


 ワイバーン達の様子を見た後は、宿に戻ってボスワイバーン達とカイツさんの様子見。
 こちらは、ワイバーンの持つ魔力などを調べ始めたようで、見た目に派手な研究や周囲に迷惑がかかるような事はなかった。
 ただ、何かに目覚めたワイバーンが、カイツさんに皮を剥ぐのをおねだりするようになったらしく、俺が注意したから最初と比べて加減はしているけど、少量ながらワイバーンの素材が増え続けたりもしている。
 ボスワイバーンは、さすがにそんな趣味はないようで距離を取って見守るだけのようだけども。

 カイツさん達の様子見が終われば、戻ってきたモニカさん達と夕食。
 その日の活動報告みたいな事を聞きながら、食事をして、その後はお風呂に入って寝るだけだ。
 ほんと、ここ数日はのんびりと過ごさせてもらっているよね……今も街の外壁の外側で、戦闘が行われているなんて考えられないくらいに。
 ちなみにだけど、戦闘に関しては視界が悪くなる夜間に行われる戦闘は散発的で、とりあえず魔物が押し寄せないように食い止めるのが主体になっている。

 人間は休まないといけないし、視界が悪くて夜は不注意で怪我をする事が増えるからね。
 これも、こちら側に余裕ができたからできる事だけども……俺が戻って来る前は、昼夜問わず疲れ知らずの魔物が押し寄せていて、日に日に兵士さん達の疲れが溜まっていっていたらしい。

「さて、そろそろ寝ようか」
「だわ。お風呂に入って綺麗になったし、乾かしてもらったのだわ~」
「ほんと、エルサはお風呂好きだよなぁ。いい事だけど」

 お風呂に入った後は、エルサの毛をドライヤーもどきで乾かしてモフモフを保ち、寝るだけ。
 俺もお風呂は好きな方だけど、エルサは俺以上で食べ物要求程じゃないけど、お風呂を忘れかけると頭をペシペシ叩かれるくらいだ。

「お風呂は命の洗濯なのだわ。命の糧を得る食事や、命の休息のための睡眠と同様、最重要なのだわ」
「いやまぁ、確かにそんな言葉もあるけどね……」

 人間の三大欲求のうち、二つと同等なのかお風呂……。
 命の洗濯と言う言葉はまた俺の記憶からだろうけど、食事や睡眠にアレンジを加えたな。
 中々エルサも考えているじゃないか……。
 なんて、どうでもいい事を考えながらベッドに乗った時、ふとエルサの動きが止まった。

「……リク、だわ」
「ん、どうしたんだ?」

 先程までのお風呂上がりで上機嫌な声音と違って、真剣な雰囲気で俺を呼ぶエルサ。
 急にどうしたんだろう?

「気を付けるのだわ。ここ数日、のんびり過ごせて何も起こらないようだけど……なんだか、嫌な予感がするのだわ」
「嫌な予感か……エルサがそう感じるなら、気を付けておかないとね」

 魔物はじきに討伐され、センテも以前の日常に戻って行くんだろう。
 けど、まだ気持ち悪い気配の謎が解けていないし、ロジーナの言っていた事も気がかりだ。
 ユノと同じくらい強くて、魔物を相手にしても簡単に蹴散らせる程なのに、ロジーナ自身が危ないと言っていたくらいだからね。
 そもそも、これまでずっと暢気に構えていたエルサが、嫌な予感を感じるというのは相当だ……とんでもない事が待ち受けている、とかじゃなければいいけど。

「本当に気を付けるのだわ? リクは、いまいち危機感が足りないのだわ」
「それは……そんな事を言いながら、ベッドをゴロゴロしているエルサには言われたくないかなぁ?」
「ベッド気持ちいいのだわ~」

 嫌な予感とか俺に注意を促しておきながら、エルサはすぐにベッドでゴロゴロと転がって遊び始めた。
 ベッドが気持ちいいのは同意するけど、真面目な事を言った直後にそんな暢気な姿を見せられたら、俺の危機感が薄れてしまうのも仕方ないと思う。
 あまり深刻にならないようにって、エルサの気遣いかもしれないけど……。

「だわ、だわ、弾むのだわ~。面白いのだわ~」

 うん、気遣いというのは俺の勘違いだね。
 ベッドを転がったり、途中で跳ねてボヨンボヨンしたり……子供みたいにはしゃいで遊んでいる。

「はぁ……あんまりはしゃいでないで、そろそろ寝るぞ? ほーら、モフモフっと!」
「だわ!? 捕まったのだわ! 仕方ないのだわ、寝るのだわ~……リクは、そろそろ私離れをしてもいいのだわ?」
「エルサ離れなんてとんでもない。俺はこうしているのが一番、よく寝られるんだよ」

 溜め息を吐いて、跳ねまわっているエルサを捕まえて一緒に毛布に包まる。
 もちろん、エルサのモフモフを撫でて堪能するのは忘れない――。


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