1,202 / 1,955
兵士さん達に馴染んでいるワイバーン
しおりを挟むワイバーンの数が少なく、被害も出ていないとはいえ、王国のどこかでは大事にはなっていないまでも、小さな被害が出たり、冒険者への討伐依頼が出されたりもしたんだろうけどね。
全体数は少なくても、間違いなく王国の領土内にワイバーンがいるんだから。
ともあれ、そんなこんなで他の国内でよく見かける魔物とは違い、大きく悪感情を抱く人も少ないのではないかという事。
そして、俺が連れて来てシュットラウルさんが認めている事や、ワイバーン自体が穏やかで人間に敵意を向けない事から総じて、多くの人に受け入れられつつあるってわけだ。
まぁ、王都まで連れて行ったら、ここまですんなり受け入れられるかはわからない……とマルクスさんが言っていたけど。
でも想像していたよりは、受け入れられる可能性もあるようで、一安心といったところだ。
「ん? あれは……?」
「グ……GRA?」
「惜しい! ちょっと違うんだよなぁ。もう少しで、魔物らしくない鳴き声になるんだが……」
ワイバーンの報告を聞き終わった頃、ふと見てみると一体のワイバーンと一人の兵士さんが、顔を突き合わせて何やらやっていた。
兵士さんの方は、悔しがっているようだけど……?
「あれは、ワイバーンの鳴き声に怯える人もいるかかもしれない、との事で……怯えない鳴き声の練習とか。一部のワイバーンが、面白がってい参加しているみたいですね。……止めさせますか?」
「いえ……馴染んでいるようですから、止める必要はないと思います」
不思議に思っていると、報告してくれた兵士さんが教えてくれた。
ボスワイバーン以外は、泣き声って絶対に人が発声できないようなものだ。
人によっては、おぞましい鳴き声……と表現したりもする。
まぁ、魔物によってちょっとだけ違いがあったりはするけど、基本的に音を発しているというくらいしか、人には認識できない。
俺には、多少声っぽく聞こえたりするんだけど……これも、こちらの世界に来る際に言葉とか文字が読めるようにしてもらった影響なのかもしれない。
ともかく、そういった魔物っぽい鳴き声ではなく、多少なりとも動物っぽいというか……ボスワイバーンくらいには、声と認識できる鳴き声を出せるように、という事みたいだ。
見れば、他にも数体のワイバーンが近くにいて、何やら声を出そうと練習しているから、ワイバーン達も人間に馴染もうとしてくれているようだ。
仲が良さそうな場面が見られて、少し面白かった――。
ワイバーン達の様子を見た後は、宿に戻ってボスワイバーン達とカイツさんの様子見。
こちらは、ワイバーンの持つ魔力などを調べ始めたようで、見た目に派手な研究や周囲に迷惑がかかるような事はなかった。
ただ、何かに目覚めたワイバーンが、カイツさんに皮を剥ぐのをおねだりするようになったらしく、俺が注意したから最初と比べて加減はしているけど、少量ながらワイバーンの素材が増え続けたりもしている。
ボスワイバーンは、さすがにそんな趣味はないようで距離を取って見守るだけのようだけども。
カイツさん達の様子見が終われば、戻ってきたモニカさん達と夕食。
その日の活動報告みたいな事を聞きながら、食事をして、その後はお風呂に入って寝るだけだ。
ほんと、ここ数日はのんびりと過ごさせてもらっているよね……今も街の外壁の外側で、戦闘が行われているなんて考えられないくらいに。
ちなみにだけど、戦闘に関しては視界が悪くなる夜間に行われる戦闘は散発的で、とりあえず魔物が押し寄せないように食い止めるのが主体になっている。
人間は休まないといけないし、視界が悪くて夜は不注意で怪我をする事が増えるからね。
これも、こちら側に余裕ができたからできる事だけども……俺が戻って来る前は、昼夜問わず疲れ知らずの魔物が押し寄せていて、日に日に兵士さん達の疲れが溜まっていっていたらしい。
「さて、そろそろ寝ようか」
「だわ。お風呂に入って綺麗になったし、乾かしてもらったのだわ~」
「ほんと、エルサはお風呂好きだよなぁ。いい事だけど」
お風呂に入った後は、エルサの毛をドライヤーもどきで乾かしてモフモフを保ち、寝るだけ。
俺もお風呂は好きな方だけど、エルサは俺以上で食べ物要求程じゃないけど、お風呂を忘れかけると頭をペシペシ叩かれるくらいだ。
「お風呂は命の洗濯なのだわ。命の糧を得る食事や、命の休息のための睡眠と同様、最重要なのだわ」
「いやまぁ、確かにそんな言葉もあるけどね……」
人間の三大欲求のうち、二つと同等なのかお風呂……。
命の洗濯と言う言葉はまた俺の記憶からだろうけど、食事や睡眠にアレンジを加えたな。
中々エルサも考えているじゃないか……。
なんて、どうでもいい事を考えながらベッドに乗った時、ふとエルサの動きが止まった。
「……リク、だわ」
「ん、どうしたんだ?」
先程までのお風呂上がりで上機嫌な声音と違って、真剣な雰囲気で俺を呼ぶエルサ。
急にどうしたんだろう?
「気を付けるのだわ。ここ数日、のんびり過ごせて何も起こらないようだけど……なんだか、嫌な予感がするのだわ」
「嫌な予感か……エルサがそう感じるなら、気を付けておかないとね」
魔物はじきに討伐され、センテも以前の日常に戻って行くんだろう。
けど、まだ気持ち悪い気配の謎が解けていないし、ロジーナの言っていた事も気がかりだ。
ユノと同じくらい強くて、魔物を相手にしても簡単に蹴散らせる程なのに、ロジーナ自身が危ないと言っていたくらいだからね。
そもそも、これまでずっと暢気に構えていたエルサが、嫌な予感を感じるというのは相当だ……とんでもない事が待ち受けている、とかじゃなければいいけど。
「本当に気を付けるのだわ? リクは、いまいち危機感が足りないのだわ」
「それは……そんな事を言いながら、ベッドをゴロゴロしているエルサには言われたくないかなぁ?」
「ベッド気持ちいいのだわ~」
嫌な予感とか俺に注意を促しておきながら、エルサはすぐにベッドでゴロゴロと転がって遊び始めた。
ベッドが気持ちいいのは同意するけど、真面目な事を言った直後にそんな暢気な姿を見せられたら、俺の危機感が薄れてしまうのも仕方ないと思う。
あまり深刻にならないようにって、エルサの気遣いかもしれないけど……。
「だわ、だわ、弾むのだわ~。面白いのだわ~」
うん、気遣いというのは俺の勘違いだね。
ベッドを転がったり、途中で跳ねてボヨンボヨンしたり……子供みたいにはしゃいで遊んでいる。
「はぁ……あんまりはしゃいでないで、そろそろ寝るぞ? ほーら、モフモフっと!」
「だわ!? 捕まったのだわ! 仕方ないのだわ、寝るのだわ~……リクは、そろそろ私離れをしてもいいのだわ?」
「エルサ離れなんてとんでもない。俺はこうしているのが一番、よく寝られるんだよ」
溜め息を吐いて、跳ねまわっているエルサを捕まえて一緒に毛布に包まる。
もちろん、エルサのモフモフを撫でて堪能するのは忘れない――。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる