1,206 / 1,955
忘れている何かと急かされる気持ち
しおりを挟む「それにしても、何か忘れているような気がするんだよね……」
「忘れている……忘れる事なら、大事じゃないと言うところなんだけど、リクさんだから不安ね」
この場所に来てから、何かにせっつかれるような……急かされる気持ちが沸いて来て、忘れている事があるような気分になっている。
呟くと、本当に不安そうな表情になるモニカさん。
いくら俺でも、本当に大事な事をわすれたりなんて……しないと言いたけど、自信を持って言えないのはこれまでの自分の行いのせいかもしれない。
「うーんなんだったか……」
「ここに来てから、そう思ったのだわ?」
首をひねる俺に、頭にくっついているエルサがバランスを取りながら聞いて来る。
「うん、なんとなくなんだけどね。思い出した方がいいかもとか、思わされるんだ。早くしてー、みたいな事を言われているような気分、かな? 実際には誰にも言われていないけど」
「ここは、リクが呼び出したスピリットがこうしたのだわ。だったら、そのスピリットに聞くのもいいかもしれないのだわ」
「スピリットかぁ……また召喚するって約束はしているけど、何も用がないのに呼び出すのは、どうなのかな?」
エルサに感覚的な事も含めて話すと、スピリット達を呼び出してはと提案される。
ゆっくり休めているから、魔力に余裕があるどころか完全回復状態なので、呼び出すのは構わない。
けど、用もなく無関係の可能性の高いスピリットを呼び出すのは、迷惑じゃないだろうか?
俺が忘れている事を、スピリット達が知っているとは思えないし。
「ここはそのスピリット達が、濃い影響を残した場所なのだわ。だから、ここに来てリクが何かを感じるのなら、その影響の可能性もあるのだわ。もしそれでもと思うのならだわ、暇潰しとでも考えればいいのだわ」
「暇潰しって、それこそ迷惑じゃない?」
確かに、エルサの言う通りスピリット達が派手に魔物を倒した場所だから、何か影響が残っているのかもしれないけど……。
でもさすがに、暇潰しに呼び出すのはどうかなぁ。
「スピリット達は、魔力集合体なの。誰かが呼び出して存在を固めないと、意識をたゆたわせているだけで、暇をしているはずなの。だから、暇潰しで呼び出すだけでも喜ぶの!」
「魔力集合体……はまぁわからなくもないけど、あの見た目は結構不定形だし。意識をたゆたわせているとかはよくわからないけど、本当に暇なのかなぁ……ってユノ、いつの間に!?」
フレイちゃんとか、形が色々と変わるから魔力の集合体と言われても納得できる。
最初に召喚した時とか、人間の形すらしていなかったからね。
それ以外の事はよくわからないけど、本当にいいのかな? と考えたところで、教えてくれた相手がエルサの声じゃない事に気付いた。
いつの間にか、俺達の前にユノが来ていた……全然気付かなかったんだけど。
「リクさんが、エルサちゃんと話している時に走ってこちらに来ていたわよ?」
「え、そうなの?」
「遠くからリクの事が見えたの。だから来てみたんだけど……あの時のスピリット達の話をしているのが聞こえたの」
「気付かなかったのは、リクだけなのだわ」
「モニカさんだけでなく、エルサも気付いていたのか……」
「これだけ見晴らしのいい場所で、近付いて来るのに気付かないリクがどうかしているのだわ」
そう言われたら確かにそうだ。
見渡す限り遮る物のない場所で、いくら小さな女の子くらいの身長とはいえ、走ってこちらに近付いているはずのユノに気付かないなんて。
それだけ、エルサとの話に集中というか、急かされている何かや忘れているかもという感覚に、集中していたのかもしれない。
言い訳にはならないかもだけども。
「それじゃ、何もしてもらう事がなくても呼び出していいのかな?」
「多分、喜ぶの。話し相手ってだけでもいいと思うの。意識とか感覚を、少し他の何かと共有する事はあると思うけど、話すというのはそれだけで新鮮なの」
「そうなのか……」
暇かどうかはともかく、意識をたゆたわせて誰かと会話する事がないから、用事がなくても呼び出して構わないようだ。
話をするだけでも喜んでくれるのなら、気楽に呼び出せるね。
もし俺の気がかりのようなものが、スピリット達とは何も関係なかったとしても気にする必要はなさそうだ。
魔力にも余裕があり過ぎる程あるから。
「それなら……また呼び出す約束もしていたし、ゆっくり話したいフレイちゃんがいいかな?」
「なんでもいいのだわぁ。でも、あのデカブツだけは呼び出さない方がいいのだわ」
「大きいと、皆が驚くの」
「そうね……離れていた私も、外壁越しに少しだけ見えたけど……あまり大きいのは、今は避けておいた方が良さそうね」
大きい、というなら間違いないなくアーススピリットのアーちゃんの事だろう。
魔物を阻む数メートルの高さがある外壁より大きかったし、周辺の魔物に気を配っている今の状況で、急に呼び出さない方がいいかもね。
皆から、お勧めされなくてアーちゃんがちょっとだけ不憫だけど……仕方ない。
他にもウォータースピリットのウォーさん、ウィンドスピリットのウィンさんもいるけど、呼び出すならやっぱりフレイムスピリットのフレイちゃんだね。
何度も呼び出して慣れているのもあるけど、俺に懐いてくれているようだから。
まぁ、俺以外と言葉が通じないのが難点ではあるけども。
「そういえば、リクさんが呼び出す……スピリット? を近くで見るのは初めてかしら。キマイラ討伐の時とかに、見た事はあるけど」
「そういえば、そうだったかな?」
前回の四種のスピリットを一気に呼び出した時は当然ながら、モニカさんは近くにいなかった。
キマイラ討伐の時、最初にフレイちゃんを呼び出したけど……あの時はモニカさんが近くにいても、今みたいにはっきりと人型じゃなくて、意思もほとんど感じられなかったからね。
ツヴァイと戦った時、初めて意思の疎通ができる存在だとわかったわけで、あの時は尋問している時も含めてモニカさんはその場にいなかったっけ。
「フレイちゃんは、見た目はちょっとおっかないかもしれないけど……人懐っこい感じだし、モニカさんもすぐに気に入ると思うよ」
燃え盛る炎が人型になっているわけで、近くで見ると熱そうとか触るのに躊躇う気持ちが出る可能性もあるけど、フレイちゃん自身は人懐っこい子供みたいな感じを受ける。
モニカさんなら、すぐに仲良くなれそうだ。
「それじゃ、呼び出してみるよ」
「えぇ」
そう言って、少しだけ離れるモニカさんを確認した後、フレイムスピリットフレイちゃんを召喚するためのイメージと意識の集中を始める。
とはいっても、何度も呼び出した事があるわけで、魔力も十分だから特に深く集中する程じゃない。
「……おいでませ、フレイムスピリット……フレイちゃん!」
「毎回呼び出すための言葉が変わるのだわ……」
「おいでませ……確かどこかの方言だったの」
今回は魔物と戦うわけじゃないから、少しおどけた感じで魔法名……というより、呼び出す際の言葉を発してみた――。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる