1,220 / 1,955
Sランク魔物の脅威
しおりを挟むシュットラウルさんが、この場にいるヤンさんとベリエスさんに、冒険者ギルドに属する側としての意見を求める。
ヤンさんとベリエスさんが顔を見合わせ、小さく頷いた後ヒュドラーに関して話し始めた。
「はい、近年でヒュドラーと戦ったという冒険者は、現在アテトリア王国内にいません。遠く離れた他国の地で、国と冒険者ギルドが協力し、多大な犠牲を払って一体の討伐に成功した。という報告がギルド内で共有されているくらいです」
「私やヤンもそうですが、実際に見た事はありません。ただ、伝え聞く話によるとSランクの魔物というのは、Aランクまでの魔物とは強さの格が違うのだと言われております。我々の想定では、数百人で囲んでゆっくり対処するとしていますが……実際に戦った者からの伝聞えは、対処法を間違えると数百どころか数千、場合によっては数万の戦力が壊滅してもおかしくない程だと……」
「それほどまでに凄まじいのか……」
想像していたよりも、かなり強力な魔物のようだ。
体の大きさだけでなく、複数ある首や魔法、そして再生能力が問題なのだろうか?
「ヒュドラーは、複数ある首を全て斬り取る事で討伐できるのですが……一つでも首を残した状態にしていると、他の首も再生するそうです。実際に見た事はないので、本当にそうなのかやどれくらいで再生するのかはわかりかねますが」
「全てを一度に……もしくは再生される前に、斬り落とさねばならないのか。それは確かに簡単にはいかぬな」
「しかも周囲の魔力、我々が自然の魔力と呼んでいる魔力を吸収するのです。その魔力を活力に、昼夜問わず活動し再生する。さらには魔法をまき散らして多大な被害をもたらす……と」
「自然の魔力を吸収……ですか」
つまり、ゆっくり時間をかけて疲れさせる、と言われていた討伐方法が実際は有効じゃない?
いや、吸収される速度よりも攻撃を加えて疲れさせるようにすれば、ヒュドラー側がジリ貧になってくれるのか。
ただし、そのためには多くの犠牲と長時間戦い続ける戦力が必要になるんだろうけど。
「ふむ……聞けば聞く程、三体もいる事がバカバカしく思えて笑えてしまうな……他の魔物だけでも脅威なんて言葉では済まされない状況なのに、そんな魔物がそれも三体もいるとはな」
「シュットラウルさん?」
そう言って、口角を上げて笑みを浮かべるシュットラウルさん。
諦め、苦笑……絶望? いや違う。
ニヤリと不敵な笑みという程面白そうではないけど、決して諦めたりしているような笑みではなかった。
「リク殿、一人で一体……可能か?」
「……戦った事がないので、断言はできませんが……大丈夫だと思います」
笑みを浮かべたまま、俺を窺うシュットラウルさんに頷く。
まき散らされる魔法は結界でなんとかなる……まさか破壊神、もといロジーナのように結界を易々と壊せる威力はないだろう。
そうであれば、対処を間違えなくても数万の犠牲で済むような相手じゃないはずだ。
自然の魔力を吸収しての、活力回復は……それを上回る攻撃をしたらいいだけ。
幸いにも、俺は力任せに攻撃するだけで尋常じゃない威力を発揮できるから、問題ない。
後は再生能力で……まぁ、首を斬り落としてから再生までの時間が気になるところだけど、魔法を使えばなんとかなると思う。
アルネやフィリーナが使うような、ウィンドカッターだっけ? あれに近い斬り裂く魔法をヒュドラー相手にばら撒けばいいから、これも問題ないはず……やり過ぎに注意しないと、またエルサやマリーさんんに怒られそうだけど。
それにだ、魔力の事はあまり気にしなくていい状況でもあるわけで、ちょうどいいから流れて来る感情事ヒュドラーにぶつければいいだけの事。
「……少し考えましたが、やっぱり大丈夫そうです」
「ヒュドラーの凄まじさを聞いても、頷けるのはリク殿しかいないだろうな」
まぁ、ヒュドラーどころかそれより恐ろしいはずの破壊神とも、戦ったからね。
ロジーナはあの時本気じゃなかったとしても、破壊神としての干渉力を大きく使う程の力の片鱗より、ヒュドラーの方が強力なんて事はないだろう。
魔力弾以外、結界も魔法も剣も通じないなんて絶望より、全然マシだ。
「我らが英雄がこうして諦めていない。そして、倒せると言っている。絶望して諦める段階ではないな。いや、むしろ私には希望が見える程だ」
ヒュドラーの話をヤンさん達からされた時、この部屋にいる俺とシュットラウルさん、マルクスさんとリネルトさん以外の全ての人が、絶望的な表情になっていた。
いや、エルサはまた俺の頭にくっ付いて、暢気に寝ているけどそれはともかくとして。
シュットラウルさんはそれを見て、雰囲気を変えようと考えたんだろう……ちょっと大仰な仕草で、俺を示している事からも、間違いないと思われる。
絶望的な雰囲気にのまれていたままじゃ、作戦は決まっても士気は上がらないし、魔物に押されてお終いなんて事になりかねないから、かもしれないね。
「しかしシュットラウル様、実際にヒュドラーが三体。一体はリク様がなんとかするとしても……他の二体はどうなされるおつもりで?」
「まぁ、手っ取り早く一体を倒せたら、残りの二体もどうにかできるかもしれませんが……」
マルクスさんはシュットラウルさんと同じく、絶望していなかった人なので反論するわけではないだろうけど、実際問題残ったヒュドラーをどうするのかは問題で、そこを忘れてはいけない。
戦った事がないので、一体を倒すのにどれだけ時間がかかるかわからないし……最終的には俺が三体全部倒す事になるにしてだ。
一体を相手にしている間、残りの二体に自由に暴れさせているわけにもいかない。
「先程リク様やエルサ様の提案にあった、飛び道具をヒュドラーに向けるのはどうだ? キマイラすら貫いて倒せる威力ならば、倒せはしないまでも足止めはできるはずだ」
「足止めはできるでしょう。正攻法であるヒュドラーの疲れを待つ、という対処法にも繋がります。ですが、その間他の魔物達への攻撃の手が緩む事になりますので……」
「それはそれで、ヒュドラー以外の魔物が迫って来られれば、危険なのはこちらか……」
シュットラウルさんの案に、マルクスさんが反論する。
確かにヒュドラーだけなら足止めとして有効だと思うけど、他にも大量に魔物がいるからなぁ。
そちらの事も並行して考えると、足止めをするだけよりも難易度が高い……というか高すぎる。
キマイラなどの対強力な魔物相手として、魔法鎧を身に付けた誰かをと考えていたけど、それをヒュドラーの足止めに使うようにする?
……いや、それだとほぼ単独でヒュドラーの相手をしなきゃいけなくなるから、いくら魔法鎧が頑丈だとしても危険が大きすぎるか。
三つあるから、一体はそれでとも考えられるけど……結局残りの一体をどうするのかが問題になる。
兵士さんと冒険者さん達は、遠距離版次善の一手みたいな攻撃法で戦って、被害を減らす方がいいだろう。
焦ると先に力尽きてしまうのは全体の戦力が劣るうえに、これまでの戦いで消耗しているこちら側だ――。
0
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる