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割れた剣が放つ輝き
しおりを挟む「大丈夫。魔力の塊が相手だったら、なんとでもなるよ。ヒュドラーとの戦いで、ちょっとした事があって……まぁ、これは後で話すよ。それじゃ、ちょっと行ってくるから……すぐに皆に下がるように伝えて!」
「リ、リクさん……!」
そう言って、私の返答も待たずに再びジャンプして兵士さん達を飛び越えて行くリクさん。
その手には、いつの間にか白く輝く剣が握られていた……あら? あんな剣、リクさん持っていたかしら?
私達の所に来た時は、いつも使っている剣が鞘に納められて腰に下げられていたけど、他に剣を持っていた様子はなかったはず……。
「……行ってしまったな」
「まったく、忙しないねぇ。でも、リクに頼る事しかできない状況は、少し歯がゆいわ」
「私もマリーさんの思いに同意します。というか、リク様の持っていたあの剣は一体……?」
やれやれといった様子のソフィーと母さん。
フィネさんは、私と同じくリクさんの剣に気付いたようで首を傾げていた。
元々リクさんの持っていた剣は黒い剣身だし、白い剣なんてこれまで持っていなかったはず……あれは一体……?
「んなっ!?」
「レムレースが……霧が消えていく……?」
「どうなっているの!?」
「わかりません。ですが、リクさんが簡単な事のように言っていた意味が、よくわかります。レムレース……Sランクの魔物も、リクさんにとっては取るに足らない相手なのでしょう」
不思議に思っている私の、リクさんの姿を追いかけていた視界に驚くべき光景が写される。
何度も何度も放たれては防がれていたレムレースの魔法、それが飛び上がったリクさんの付きだした剣に目が貫かれた瞬間、止まる。
そしてすぐに異変ははっきりと目で確認できるようになった……上空に広がり、さらに地上にまで広がっていると思われる、レムレースの体であるはずの霧が縮小……いえ、消失していく。
地上にの霧はこちらからでは遮られていて確認できないけど、空に広がっていた霧は少しずつ消えていった。
「フィネさんの言う通りね。考えていたよりも早くヒュドラーを倒したのもそうだけど、リクさんはSランクの魔物なんて、脅威じゃないんでしょうね」
「まぁ、レムレースから放たれる、数多の魔法も軽々と結界で防いでいたからな」
絶望をしか感じなかったレムレースの霧状の体と目。
それらがもはや脅威とすら感じられなくなり、空に広がる霧が完全になくなって行くのを、口を開けてただただポカンと見守るしか私達にはできなかった。
「……はっ! こうしちゃいられないわ! すぐに兵士達にも退避するよう伝えなくちゃ!」
「そ、そうだな。一旦退いて体勢を立て直さねば!」
少しして、おそらくリクさんが結界を解いたからだろう。
盾隊の向こう側から何やら音? 魔物の悲鳴? よくわからない破裂音等々が聞こえ始めて正気に戻る。
我に返って、即座に行動しなければいけないこと思い出し、ソフィー達と協力して兵士達にリクさんからの退避要請を慌てて伝えて行った。
ちなみによくわからない音は、盾に向かって何かをされた……とかではなく、リクさんが魔物達に対して何かしている音のようだった――。
―――――――――――――――
「あっ……」
全身全霊を込めた……いや、込め過ぎたのかはたまたヒュドラーが堅かったからなのか……もしかしたら、これまで剣その物の丈夫さに頼り切っていたツケなのかもしれない。
唐突になくなった抵抗と共に、『割れた』剣……折れた、のではなく割れた。
脳裏に浮かぶのは、失敗の文字。
「……え!?」
だが次の瞬間、俺は希望とも言える光をその目に捉え、全身で感じた。
ヒュドラーに食い込んでいたはずの剣が割れ、振りぬいた格好になっていた自分の手には、白く輝く剣が握られている。
「これ……は……?」
「ギャギ!!」
「っ!? っとぉ! って、んん!?」
戸惑っている俺に、再生したヒュドラーの首のうちに首が氷の塊を吐き出す。
思わず、持っていた白く輝く剣で斬り払う……と、氷が剣に触れた瞬間、斬れるのではなく瞬間的に消失した。
「一体……?」
「フシュー!」
「くっ! とりあえず降りないと!」
一首からの酸、これは剣で斬ってもほとんど意味がないし、避けるしかない。
仕方なく、半分まで切れていた五首を諦めて足場にしていた結界から、地上へと降りる……五首、俺が斬った部分はほぼ再生しているし……はぁ、また最初からやり直しか。
「キシャー!」
「ちょっと待っとけ! エアソード! からの多重結界!」
「ギャ……!」
地上に降りた俺に向かい、再生したヒュドラーの首がそれぞれ攻撃を仕掛けて来る。
とりあえず色々落ち着きたいし状況確認をしたいからと、ヒュドラーに向かって叫んでエアソードで一首から三首までを切断……もう一つ二つ斬り取りたかったけど、角度が悪かったか。
念のため、落下中に魔法の準備をしていて良かった。
さらにすぐさま多重結界も張って、さらに続くヒュドラーの攻撃を防ぎつつ、持っている剣を確認する。
「うーん……少し眩しい。けど、なんだろう。この剣を持っていると、少し力が沸いてくるような不思議な感覚だ。というか、剣身が小さくなっている?」
間近で見ると少し眩しいくらいの輝きを放つ剣……光を反射しているとかではなく、剣身が発光している。
柄を握っている手には微かな温もりを感じ、そこから俺自身へと向かって力が沸いてくるようなよくわからない感覚もある。
力が沸いてくる気がするからって、強くなったとかそういう事はないと思う、多分だけど。
あと、輝く剣身はこれまで使っていた時とは違って、小さくなっているね。
「まぁ、割れたからだろうけど……割れた中から、こんな光る剣が出てくるなんて聞いていないんだけど……」
……この剣を仕入れて売っていた、ヘルサルの武具店を営んでいるイルミナさんも、知らなかった事なんだろう。
元々、黒い剣身を備えていて、大きさはショートソードとロングソードの中間くらいの、中途半端な大きさだった。
バスタードソードと呼ばれる部類の剣で、両手でも片手でも扱える物。
俺はもっぱら片手で使っていたし、柄も両手で扱うには少し短めだった。
けど今、剣身が小さくなってちょうどいい大きさというか、収まりの良さを感じるね……なんというか、元々こうだったようなそんな感じだ。
全体で見ると、少しだけ短めのショートソードくらいで、黒い剣身の時は長く厚みのあった剣も今は細身になっている。
光り輝いているし、ちょっと眩しいからはっきりとはわからないけど、剣身の薄さはエアソードをイメージする時に思い浮かべた刀を彷彿とさせるね。
ただ、両刃なのは変わりないようだし、当然反りもないんだけど……細めのショートソードって事で良さそうだ。
「というか、どうして光っているんだろう? LED? なんて事はないか。それに、さっきヒュドラーの放った氷を斬った時……いや、斬ったというか消滅させたというか……」
自分でもばかばかしい事を呟きながら、先程の現象について考える。
斬ろうと思った氷の塊が、剣に触れた瞬間の消滅……まるで、魔法そのものをなかった事にしたかのように……。
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