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強固な守りの結界
しおりを挟む「だったらつまり、今は一切の加減をしないって事……そんな事をしたら!」
「そうだね、多くに、そして広く影響が出るかもしれないね。それがいいか悪いかはともかくとして……」
やろうと思えばできた事……例えば今回の魔物達。
魔力を効率的にちゃんと使えれば、俺一人で全てを駆逐できる……当然それは、こちら側への影響としてはいい事だろう。
ただ、そうした場合に残る環境への配慮なんてものは、やっていられる余裕はないので最悪の場合地形が変わったりなんて事もあるかもしれない……まぁ、それは基本的には悪い影響と言えるかな。
「でもね、全てをいい方向にする事はできなくても、それに近くする事くらいはできるんだよ。例えばこうして……」
「っ、何を……!?」
ロジーナから視線を外し、センテの方を見ておもむろに右手を持ち上げる。
そこから可視化した大量の……先程レッタさんが俺に誘導した、センテを渦巻く感情や魔力よりも濃く、おそらく触れられる程に密度の高い魔力が迸った。
「もしかして、魔力の物質化……!? でも、向けている方向は人がいる場所よ! 危険だわ!」
「魔力の物質化、かぁ……成る程、魔力の密度を上げるとそうなるんだね」
「尋常じゃない魔力と、それを抑えつけるさらなる魔力が必要よ。掌くらいの大きさであっても、魔力の大きいエルフ数人分の魔力が必要になるわ。そしてその物質化が解かれる時、激しい奔流となって破壊をもたらすわ。そんなのをどうするの!?」
「へぇ……そうなんだ」
ロジーナの話で唐突にわかった。
破壊神の時に使っていた、俺が閃光だとか衝撃だとかってのは、魔力の物質化に似たような性質のものだったんだろうと。
まぁ、使っていたのが魔力というより、神力とかそういった物なのかもしれないけど。
本来目に見えない力を物質化し、性質を定めて撃ち出すのが閃光や衝撃だったんだろうと思う。
だから、単純な魔力の塊で打ち出す魔力弾はあれ自体も物質化していたうえに、閃光や衝撃の力を飲み込んだのかもしれない。
物質化はされていても、閃光や衝撃はあくまで物質化を解いた力……まだ解かれず単なる魔力として放たれた魔力弾に飲み込まれたってとこかな。
となると、今俺が手から伸ばしている物質化された魔力の塊、数十センチの太さがある線となって迸っているあれを解放したら、とんでもない破壊をもたらしてしまうんだろう。
「でも安心して、別に俺は破壊をしたいわけじゃないから。むしろ守ろうとしているだけだよ」
「守ろうと? 魔力の塊で、破壊的な力を持って守るだなんて……」
使っている魔力は、これまで使った事のある魔力弾の数倍……十倍以上かもしれないけど、それだけの魔力量がある。
それを解放したら、おそらくセンテが跡形もなく消えてしまう可能性すらある。
自分が使っている魔力だからか、周辺を調べるために広げている魔力のせいか、それがどれだけのものなのかよくわかるんだ。
でも俺は、これを街を破壊するために使うわけじゃない……今の俺は、ただ破壊衝動に突き動かされているわけではないのだから。
「こうするんだよ。……隔絶結界」
「っ!?」
俺の手から迸った魔力が、俺の頭にあるイメージ通りに変換され、魔法になる。
それは、これまでの結界とは違い、白い半透明の球体でセンテ周辺を覆う結界となった。
「これで、何をしても……ってのは言い過ぎだけど、鉄壁な隔絶空間ができたわけだね」
「隔絶……そういう事」「
「多分、破壊神だった頃のロジーナの攻撃も、一度や二度なら簡単に防ぐと思うよ。さすがに、真っ暗な空間に閉じ込めるわけにはいかないから、光は多少通すけど……でも、あの光を放つ攻撃だとしても半減はするんじゃないかな?」
分厚い壁、数千枚……万はいったかもしれないかな? それだけの結界を重ねたのが隔離結界。
さらに、完全に遮断はしないようにしながらも、光を屈折させるように折り重ねてあるので、閃光が放たれたとしても真っ直ぐ、威力そのままで内部に到達する事はないはずだ。
「……もしできたとしても、わざわざ隔離された街へ向かって攻撃なんかしないわ」
本当だろうか? いや、疑っているわけじゃないんだけど、元々のロジーナが考えていた計画通りなら、今センテは廃墟になっていておかしくないわけだし。
絶対攻撃しないって保証はない……まぁ、多くの人に影響が出る以上、大量の干渉力を使う事になるからできないのかもしれないけど。
「恐ろしいわね……街をすっぽり包む結界、しかも尋常じゃない数を重ねていて強固になんて。内部の人間は驚いているんじゃない? 急に閉じ込められたのよ?」
「そこは、申し訳ないかな。でも、被害を出さないにはこれが一番だからね。危険が及ぶようなら安全な場所に退避してもらうってね」
結界を大量に重ねているって事はわかるのか、さすがロジーナだね。
「でも、地中までまとめて包み込む必要なんてあったの?」
「どうも、西側に厄介なのがいるみたいだから。ヒミズデマモグ……あれが、地中から進めば外壁なんか関係なく街中に出るだろうし、それを防ぐためだよ」
ロジーナ曰く、意識を飛ばしている状態に近いらしい、魔力を広げての調査。
地中に潜んでいる魔物も察知していたんだけど、まず防ぐには地中も含めで全部包み込んじゃえば楽でいい。
一応、これまではアーススピリットのアーちゃんが、レムレースに対処しながらも防いでくれていたみたいだけど。
「まぁ、多少内部に魔物が入り込んでいるけど……仕方ないかな。遠距離だけじゃなくて、もう接敵していたから」
「そ、そう……」
特に中央部分、フィリーナも一緒に突撃していた兵士さん達がいたからね。
さすがに、入り乱れている状況で人と魔物を別けるなんてできないから。
数はあまり多くなし、エルサとフィリーナがちゃんと対処してくれれば、問題なく駆逐されるだろうと思う。
「それで、街よりもかなり離れた場所まで包み込んでいるのね」
「もちろん。全員内部に包んで守る事が目的だからね」
そのために、ロジーナが驚くほどの魔力を使ったわけだけど。
でも渦巻いていた感情を取り込んだ時から、俺の魔力量は上限を越えて体内に留まっていたから、発散にちょうど良かったってのもある。
許容量を越えて魔力を保持するのは、体内の何かが壊れていくような感覚があったから。
隔離結界のおかげで、今は魔力そのものが落ち着いている。
ちなみに、西側はそこまで街から離れた場所までは包んでいない……西門に張り付くくらいまで、魔物が来ていたから。
避難している人は、あまり外に出ておらず、ほとんどがセンテとヘルサルにいるようだったし。
内部に混ざってしまった魔物達は、スピリット達が対処してくれるだろう。
既に魔物にやられてしまった人はいるけど……それは仕方ない。
仕方ない……? いや、これは俺が見通せなかった事、そしてイタズラに戦闘を長引かせてしまった事が原因だから、俺が悪い。
とはいえ、やったのは魔物であって俺じゃない。
本当に悪いのは魔物だ……スベテセンメツシテヤル――。
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