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畏まったお出迎え
しおりを挟む「全くないとは言えないが……ほらよく見てみろ。集まっているのは衛兵達だから、武器は持っているが抜いている者や敵意みたいなのは感じられないだろう?」
「敵意は……まぁ、なんとなくないかなぁ、くらいにしかわかりませんけど。でも確かに、剣を抜いていたりとか、武器を構えているような人はいませんね」
マリーさん達が衛兵さん達の所に到着し、説明し始めたからというのもあるけど、マックスさんに示されてよく見てみると、武器を構えたり臨戦態勢に入っている人はいない。
それは、遠目にではあるけど集まり始めていた時からだったように思う。
あと敵意とかは……殺気というのだろうか? 剣呑な雰囲気は一切感じないのも確かだね。
言葉にしづらいんだけど、戦いの人も魔物も放つ気配、ともすれば飲み込まれてしまいそうになるような、重苦しさすら感じる感覚がない。
いや、飲み込まれそうになった事はこれまでないんだけど……ロジーナと隔離空間で戦った時があったかな? まぁあれは特殊か。
「という事は、警戒はされていないって事でいいんですかね?」
「多少は警戒くらいしているだろうさ。ワイバーンを連れている事もあるし、いきなりセンテが氷に閉ざされたのだからな。センテの状況は、道が開かれてから定期的に報告されているだろうが……それでもな」
「確かにそうですね」
魔物に襲われていたはずの街が、急に氷に閉ざされ、どういう状況かはっきりとしないのに、そこにいるはずの俺がこうしてエルサに乗って来たんだから、多少は混乱するかもね。
警戒と言ってもいいかもしれないけど。
「あと、ワイバーンの事はヘルサルの方にも伝わっているはずだぞ? まぁ、詳しくというか、実際に協力しているのを目にはしていないから、信じられない者もいるだろうが……」
センテとヘルサルは、魔物との戦闘中も連絡を取り合っていた。
まぁこれは当然と言えば当然だね。
徒歩はともかく、馬を使えば一日で往復できる距離にいるんだし、道は開けていてヒュドラー達が来るまでは魔物が減っていっていた状況で、連絡を取り合わない方がおかしい。
ワイバーンが見たかになってから、数日が経っているし情報が伝わっていてもおかしくない。
とはいえ、センテの状況も落ち着かない中、住人に広く知らせるわけにはいかないため、ヘルサルの衛兵さん達や、一部の冒険者くらいに知らされるくらいだろうとはマックスさん談。
そんな話をマックスさんとしながら、何やら整列を始めた衛兵さん達を不思議に思いつつ、リーバー達を連れてヘルサル西門へと向かった――。
「英雄リク様に対し、敬礼!」
西門に到着すると、開け放たれた門の左右に整列した衛兵さん達に、号令によって敬礼で迎えられた。
これまでヘルサルに来た時、こんな事はなかったんだけど……マリーさんとフィネさん、何か変な事を言ったんじゃないだろうか?
なぜかフィネさんが少しだけ誇らし気に胸を反らしている気がしたので、マリーさんではなくフィネさんっぽい。
「あー、えっと……お疲れ様です」
どう反応したらいいのか迷ったので、とりあえず無難に……。
「はっ! 労いの言葉ありがたく!」
すると、整列した衛兵さん達の先頭にいる、号令をかけた人が一歩進み出て恭しく礼をした。
多分、この場でのまとめ役というか隊長格なんだろう。
「はいはい、リクも暇じゃないんだから、この辺りで解散解散! 話さなきゃいけない事もあるんだし、仕事もあるんだろう? センテに出張って人が足りていないんだから、さっさと働く!」
この後どうしようとか、整列した人達の間を抜けて門に入ればいいのかな? とか戸惑っていると、マリーさんが両手をパンパンと叩きながら、集まっている衛兵さん達に声を掛ける。
なんとなく、この流れに乗っておいた方がいいと思ったので、俺もコクコクと頷いておいた。
歓迎されるのは嬉しいけど、ずっと同じ雰囲気でいられたらやりにくい……相変わらずというか、こういうのに慣れないなぁ、俺。
「しかし……いえ、畏まりました」
マリーさんの言葉を受けて、戸惑う様子を見せた隊長さんは、俺が頷いているのに気付いてすぐ集まった人達に解散を命じた。
何事かと、門の奥の方に住人らしき人達も集まり始めていたから、その人達への対処も一緒に。
目立つのはもうわかっていた事だから諦めているけど、人を集めたいわけじゃないからね。
数分ほどで、整列していた衛兵さん達は解散して他の場所へと向かった。
この場に残っているのは、隊長さんと二人の衛兵さん、あと俺達だけになる。
一部……というかほぼ全員が、俺達の後ろにいるワイバーン達を見て気にしていたけど、それはこれから話す事だから、後で隊長さん達から聞いて欲しい。
襲われたりしないから、ビクビクしなくても大丈夫ですよとだけは伝えておいたけど。
「失礼しました、リク様。何分、ワイバーンすら見た事のないような者達ばかりですので……」
「いえ、まぁ魔物ですからね。気になっても仕方ないですよ」
ワイバーンを気にする衛兵さん達の様子を見て、隊長さんに謝られるけど特に気にはしていない。
というか、連れてきた俺が言うのもなんだけど、気にして当然と思うくらいだし。
「ありがとうございます。まだ兵になって日が浅い者達も多いもので。もっと、どんな事があろうと取り乱さないよう、厳しく訓練をさせるようにします」
「まぁ、この街に長くいれば、リク関係に事に対しては取り乱さないように慣れるだろうがなぁ」
申し訳なさそうにする隊長格さんに、苦笑いのマックスさん。
俺のせいで訓練が厳しくなるのは少し申し訳ない気がするけど、まぁやり過ぎなければいいとしておこうかな。
俺が口を出すような事じゃないし。
「いや……俺関係って……これでも結構驚かせたりはしないように気を付けているんですけど」
主に、エルサに乗ってきた時は外で降りて、街の人達を驚かせないようにとか……。
クラウリアさんの時は色々あったけど、あれは緊急事態として仕方なかったし。
「そういえば兵になって日が浅いと言っていましたけど、新人さんばかりなんですか?」
「は、多くの者達はセンテで魔物を迎え撃つために出払っていますので……」
ふと気になって訪ねてみると、隊長さんが教えてくれた。
センテが魔物に囲まれてから、街道を切り開くためにこちら側からも討伐体を編成していたらしい。
ただ、それらが出撃する前にモニカさん達を含めた人達が、センテとの街道を封鎖していた魔物達を蹴散らしたと。
まぁここまでは大体俺が知っている範囲だ。
近くに魔物がでたうえ、街道で繋がっていて近いセンテを大量の魔物が囲んでいるなら、ヘルサル側でも戦力を出すよね。
ともあれ、その後はマックスさんやマリーさん達のように、センテへと応援に駆け付けるようになったわけで……冒険者との混成部隊を派遣している状態らしい。
マックスさんの補足によると、冒険者はヤンさんと一緒にセンテの冒険者と、ヘルサルからの兵士はシュットラウルさんの侯爵軍の正規兵として編成されたとか。
冒険者の人達もそうだけど、センテで頑張ってくれた兵士さん達の中にはヘルサルからきた人達もいたのか……考えてみれば当然と言えるけど――。
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