1,542 / 1,955
アンリさん達の取り調べを終える
しおりを挟む「ともかく、そんな魔物にぶつけようなんて事は考えていませんから、安心してください。まぁクランの目的は色々とありますけど……基本的には、それぞれが冒険者としてギルドからの依頼を受けて、活動してもらうくらいです」
……帝国との戦争になれば、アテトリア王国側について戦うというのもあるんだけど、それはまだ知らされていないようなので今は話さないでおく。
長くなるだろうし、言っても多分というか、むしろアンリさんは参加してくれそうだけど。
「それなら……でも一応、ルギネからは許可を」
「それはもちろんです。パーティリーダーですし、ルギネさんにもちゃんと話します」
ルギネさんに話す時には、帝国との事もちゃんと話して、すぐにではなくともアンリさんやグリンデさん、ミームさんとも話し合って決めてもらおうと思っている。
とりあえず今は、アンリさんが暴走しても心配がなくする方法がある、と示せるだけで良いからね。
……傍からは割と熱心に勧誘しているようにも見えたかもしれないから、レッタさんが邪推したのも仕方ないかもしれないけど。
決して、女性を誘う事での邪な気持ちは一切ないという事だけは、断言しておこう、自分の心に。
「ありがとう、リクさん。問題が解決したわけではないけれど、少し落ち着く事ができたわ。止めてもらえる、ルギネ達ともまた一緒にいられる、とわかっただけでも大分救われた気持ちよ」
さっきまでの落ち込みや、体を震わせていたアンリさんではなく、真っ直ぐ俺を見上げてお礼を言われる。
ちょっと面映ゆいな……アンリさんを助けるっていう意味がないとは言わないけど、元々クランには誘う予定だったし、俺としては特別な事をしたつもりはないのに。
「まぁ、クランに入ったらいっぱい働いてもらう事になるかもしれませんので、実は断っておいた方が良かった、なんて思ったりもするかもしれませんけどね?」
照れが勝って、冗談交じりにそう言う俺。
差し当たって帝国との事で、忙しくなる可能性は高いから嘘ではないんだけどね。
とはいえまだまだクランそのものが発足してすらいないから、どう働いてもらうかなんてのも考えていないんだけど。
あと、俺がまともにクランを運営できるかという問題も……モニカさん達に協力してもらえば、なんとかなると思いたい。
「ふふ、人使いの荒いクランマスターさん。まだ決まっていないけど、とりあえずこれからよろしくね? ほら、グリンデも」
「ほ、本当に、甚だ不本意ではあるけど……完膚なきまでに不本意だけれど、お姉様とアンリ共々よろしくお願いするわ。絶対的に不本意だけれどね!」
「ははは、よろしくお願いします」
表情がこれまでのように柔らかなくなったアンリさんに促され、グリンデさんも渋々ながらよろしくされた。
何度も不本意と言っているのはまぁ、ルギネさんの事で変に俺を敵視しているからだろうけど……とりあえず苦笑して頷いておく。
そのうち、誤解を解いておかなきゃね。
ただ、グリンデさんにとってルギネさんが第一なのはともかく、ミームさんの事も忘れないであげて欲しいけども。
できれば二人共と、握手しておきたかったけど、グリンデさんは俺と握手するのは嫌がりそう、というか男と手を握り合うのは拒否されそうだから、やめておく。
アンリさんは、もう大丈夫だと思うけどまだ椅子に拘束されて手足が自由じゃないからね。
そんなこんなで、レッタさんに茶化されながらも少しだけ、グリンデさんやアンリさんと話して今回の取り調べを終える。
二人共、帝国に与していた事実も、これから帝国側に付く事もないと確認されたから、アンリさんの拘束も含めて解放だ。
アンリさんやグリンデさんの話した事が、真実なのかの裏どりみたいな事はほとんどできないのは仕方ないけど、レッタさんの話なども含めておそらく嘘は言っていないと、ベリエスさん達も判断してくれた。
まぁ一番は、魔力貸与の影響とレッタさんを見て正気を失い、暴走した事が決め手になった部分もあるみたいだけど。
もし嘘をついている帝国側の人間なら、レッタさん相手に激高したりはしないだろうからね。
あと、レッタさんが話したアンリさんが死んだものとして廃棄した、という事を真実だと裏付ける要素の一つとして、例の組織のほぼ全員に施されている歯の仕込み毒も、アンリさん達にはなかった。
口の中を見る事になるわけで、確認は女性職員さんにやってもらったけど。
特にアンリさんは、目隠しされて拘束されていたとはいえ、魔力貸与のためクズ皇帝の前に出ているわけで、もし帝国や組織の人間なら確実に仕込み毒があるはずだから。
ちなみにだけど、仕込み毒自体は成功例の人達……レッタさんやツヴァイ、クラウリアさんなどには施されていないんだとか。
クラウリアさんとか、一部の人には仕込んだふりをしているだけらしいけど、そもそも魔力貸与をしている以上、レッタさんとクズ皇帝が協力した場合、相手の魔力を操作してどうにでもできる、みたいな事だかららしい。
レッタさんがもうクズ皇帝から離れているので、そんな事は起こらないしやれなくなったけど……仕込み毒といい、とにかく相手を自分の思う通りに、絶対に逆らえないようにするのが好きなんだと改めて納得した。
復讐を誓っているレッタさんだけでなく、破壊神でむしろそれに繋がる要素なら歓迎しそうなロジーナですら、クズ皇帝の名前をこれまで一度も呼ばずに嫌っているのもわかるってものかな。
……そういえば、俺もクズ皇帝って頭の中で呼んでいるけど、名前はなんなんだろう?
ないわけはないし……まぁ、そこまで知りたいわけじゃないし、知ってどうにかなるわけでもないから、別にいいんだけど――。
「お待たせ、モニカさん。ちょっと長くなっちゃったけど」
思っていたより長くなってしまった、アンリさん達の取り調べを終えて、モニカさんやルギネさん達のいる待合室に戻ってモニカさんの声をかける。
待合室……でいいのかな? 地下牢に入る前の部屋で、簡素に机と数個の椅子くらいしかなくて、くつろげそうにはないけど……。
ちょっと意味合いが変わるけど、牢屋を管理するための前室のような物かもしれない。
「リクさん!」
「リ……」
「お姉様ぁぁぁ!!」
「おぐっ! お、おぉ、グリンデ……」
こちらを振り返ったモニカさんは、俺の顔を見てホッとした様子……何やら疲れているようにも見えるけど、こちらでも何かあったんだろうか?
それはともかく、俺と一緒に出てきたグリンデさんが、声を出そうとしたルギネさんに突撃。
お腹に頭頂部が突き刺さった。
結構痛そうだけど、それでも受け止めて引き攣ってはいても、笑顔を返せるのはさすがと言えるのかもしれない。
「会いたかったです、お姉様ぁ! むくつけき男達に、お姉様と引き離されて……こうしてお姉様に抱き締められるのを、一日千秋の思いで……!」
ルギネさんに抱き着いて離さない、とばかりに力を込めているグリンデさん。
けど、むくつけき男達って……別にグリンデさんは拘束されていたわけじゃないし、事情を聞くためと、外部に漏れないために地下牢まで同行してもらったくらいなのに。
まぁ地下牢っていうのは、イメージ的にも不安にさせたのかもしれないけど。
あと一日千秋って、ルギネさんと離れてから長く見ても数時間くらいだ……それだけ長く感じたって事かもしれないけども――。
0
あなたにおすすめの小説
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる