1,556 / 1,955
獅子亭に集まる冒険者さん達
しおりを挟む「えーっと……マックスさんは……?」
獅子亭はいつものように、行列ができて大忙しなのかと思いきや、何故かお店の前に数十人の人だかりができていて、店の中には入っていかない様子だった。
戸惑いつつも、正面は人が多くて目立つので裏から獅子亭に入って、マックスさんを探す。
「お、リク!」
獅子亭の中では、いつも通り料理に舌鼓を打つお客さんでごった返しており、マリーさん達が忙しなく給仕をしていた。
大忙しなのは、相変わらずだったね。
そんな中、厨房の方から入ってきた俺を見つけたマックスさんから、声を掛けられる。
「マックスさん。えっと、昨日言っていた事ですけど……」
「あぁ、準備はできているぞ」
「ありがとうございます。それにしても、店の外に冒険者さん達が集まっていたようですけど、あれは?」
作ってくれていた、料理の入った包みを受け取ってお礼を言いつつ、外の様子について尋ねてみる。
外にいたのは、移送してきた冒険者さん達……以前から顔見知りだった人や、エルサで運ぶ時に覚えた人もいたから、間違いない。
「あれか。あれは、ソフィーやフィネがな……いや、最初のきっかけは元ギルドマスターの奴が原因か」
「元ギルドマスターさん? ソフィーやフィネさんも関わっているんですか?」
集まっている人達全員を見たわけじゃないけど、あの中に元ギルドマスターさんと、ソフィーやフィネさん達がいたのか。
気付かなかった……ごつごつした装備やら、筋骨隆々な人もいたし、その中に紛れてというか物理的に見えなかったんだろう。
元ギルドマスターさんは、昨日の冒険者移送の時一緒にヘルサルに戻ったから、いてもおかしくないんだけどね。
「まぁな。森に魔物を討伐するために入る前準備って事らしいんだが……」
マックスさんが言うには、森に入る予定の冒険者さん達を集めて、その中から森に詳しい人や元ギルドマスターから講習会というか、心得みたいなのを伝えるためなんだとか。
センテやヘルサル周辺で活動していた冒険者さんが多いとはいえ、全ての人が森に入るような依頼をこなしているわけじゃないらしいからとの事だ。
冒険者さん達は、ある程度わかっている人が多いらしいけど確認の意味もあるみたいだね。
希望者には、元ギルドマスターとソフィーとフィネさんの三人相手に、模擬戦もする予定とか……それ、ただ単にソフィーや元ギルドマスターが訓練を兼ねて戦いたいだけな気がするけど、まぁいいか。
とりあえず備えという意味ではいいと思う……というか、これから森に入る俺も一緒に話を聞きたいくらいだ。
まぁ、ヤンさんとエレノールさんが森の情報を収集してくれているし、これから合流予定だから残念だけど時間がないか。
あ、そうだ……。
「マックスさん、ヤンさん達冒険者ギルドの人に頼んで、森の現状に関する情報収集をしてもらっているんです」
「おぉ、それはいいな。街近くの森だから、入った事のある奴は多いが……今どうなっているかまではわからないからな」
「はい。まぁ、ほとんど俺のせいなんですけど……森自体も半分くらいなくなってしまいましたし」
そのせいで、魔物達の分布とか生態とかが多少なりとも変わっている可能性が高いから、念のためヤンさんに情報提供をお願いしたんだけど。
「それで、最近森に入っている兵士さん達から聞き取りもしてくれるみたいで。俺はこれから森に行きますけど、明日以降から森に入る冒険者さんには、貴重な情報だと思うんです。後で、こちらに来るようお願いしておきますね」
「助かる。やはり生の情報というのは大事だ。元ギルドマスター達も、森に関しては以前までの情報で止まっているわけだからな」
「まぁ、向こうも忙しそうでしたし、絶対ここに来てくれるとは限りませんけど……」
センテから移送した冒険者や、元々ヘルサルに残っていた冒険者さん達全員が、獅子亭の前に集まっているというわけじゃないからね。
さっき行った時、冒険者ギルド内は賑やかさを取り戻していて、職員さん達も忙しそうだった。
全員が全員、森に入る依頼を受けるわけじゃないから当然なんだけども。
「リクの頼みを断るような職員は、ヘルサルのギルドにはいないだろう。いや、センテもそうか。もしかすると、王都や他の冒険しいゃギルド支部もかもしれないが……ともあれ、もし来ないようであれば、こちらから元ギルドマスターや、ソフィー達に……」
「あんた! 注文が入ってるよ! さっさと調理してくれないとお客さんを待たせちまう!」
マックスさんの言葉の途中で、ホールから響くマリーさんの声。
相変わらず忙しい獅子亭で、マックスさんとこれ以上話を続けるのは迷惑になりそうだね。
「あぁ、わかった! すまないな、あまり長く話してはいられないみたいだ」
マリーさんに返事をした後、すまなそうにこちらを見るマックスさん。
邪魔をしているのか俺の方だから、謝るのはこちらなんだけど……。
「いえ、忙しいのにすみません。持っていく料理もわざわざ作ってくれて……」
「何、それくらい片手間だ。まぁ、あまり心配する必要はないだろうし、森に入った事もあるだろうが、一応は気をつけてな」
「はい、ありがとうございます!」
マックスさんにお礼を言って、これ以上邪魔をしないように獅子亭を出る。
入った時と同じく裏口からだ……表の出入り口は、お客さんでごった返していたからね。
多分、冒険者さん達がお店の前に集まっているのもあるんだろう。
獅子亭から離れる前、ごつい冒険者さん達に紛れているソフィーやフィネさんを見つけ、軽く手を振って合流予定のヘルサル東門へと向かった――。
「はぁ、はぁ……! リク様、お待たせしました!」
東門に到着後、リーバーと衛兵さん達と少しだけ話して待っていると、エレノールさんが息を切らして門の外から入ってきた。
「いえ、あまり待っていませんから気にしないで下さい。外から入ってきたという事は、兵士さん達から?」
「はい。王軍の兵士達から、森の情報の聞き取りをしていました」
ヴェンツェルさん指揮の王軍は、到着時は西側だったけど今はヘルサル東側に展開している。
まぁ街に受け入れられて、多くは街中の複数の宿を使っていたりはするんだけど、森からの魔物や解氷作業のために昼夜問わず街の外で待機してくれている。
その王軍の駐屯地になっている場所に行って、情報を聞いてきたんだろう。
ちなみに、さすがに短時間では森の細部までは聞き取れなかったらしいので、今も職員さん数名が駐屯地に留まって話をしているらしい。
「そちらは、後で冒険者さん達に共有しておいて欲しいんですけど、できますか? 冒険者ギルドだけじゃなくて、今獅子亭の方にも集まっているみたいなので。元ギルドマスターさんも一緒に」
「畏まりました。冒険者に依頼をこなしてもらうのがギルドの役目ですが、そのために必要な事、生存率や達成率を上げるためなら協力は惜しみません」
「お願いします」
新しい情報の共有を、元ギルドマスターさん達にもしてもらえるよう、エレノールさんにお願いした――。
0
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる
暁刀魚
ファンタジー
社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。
なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。
食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。
そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」
コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。
かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。
もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。
なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。
カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる