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魔物が近付いてきている
しおりを挟む「魔物が? 街道の近くでもやっぱり出るんだね」
「まぁ、突然これだけの人間が降りて来たから、驚いて反応したってところだと思うのだわ」
「数はどれくらい?」
街道近くだし、大量にいたら俺達以外の人達が通りがかった時に危険だから、対処を考えながら規模をエルサに聞いてみる。
一体や二体くらいなら、少数なら無視してさっさと出発すればそのうち何処かへ行くだろうし、そういう手段も選べるけど。
姉さんやマティルデさんから、早く王都に戻って来て欲しいというような要請がされているため、優先するのは王都へ向かう事だし。
「……数は二十くらいなのだわ。アルケニーばかりの魔物の集団なのだわ」
「アルケニー?」
「足が八本ある、虫みたいな魔物なのだわ。顔が人間みたいで気持ち悪いし、カサカサ動いているから見ていて不快なのだわ」
「成る程……それが二十体くらいいるのか。思ったより数が多いなぁ」
アルケニー、多分アラクネとも呼ばれている蜘蛛の魔物だろう。
確か、センテに迫ったヒュドラーの後ろにいた魔物の集団の中にも、それらしいのがいた。
あの時は、エルサが言っているような顔だけでなく、人間の男女の上半身に似た物がくっ付いていたけど。
大体は、魔法なり白い剣なりでさっさと薙ぎ払っていたから、どういう魔物かは見た目以外にわからないし、マックスさんから以前聞いた魔物の中にもいなかった。
「リク様、今アルケニーと聞こえたのですが……」
俺とエルサの会話に気付いたんだろう、アマリーラさんが耳をピクピクさせながらこちらに来た。
頭の上にある立ち耳は、俺達人間の物より優れているのかもしれない。
「アマリーラさん。えっと、そのアルケニーがこちらに近付いているみたいです。二十体程でしょうか」
「アルケニーが二十体!? それは災害に近い気が……いや、そもそもどうしてアルケニーがこのような場所にいるのか……。本来なら、洞窟など暗く狭い場所で糸を使い罠を張っているような魔物です
「……もしかすると、帝国が関係しているのかもしれません。センテの時みたいに。センテでは、どこに棲息する魔物かとかは関係なしに、押し寄せていましたから」
本来いない場所にいる魔物、と聞いてすぐに思いつくのは帝国の仕業という事。
なんでもかんでも帝国が関与しているというのは暴論かもしれないけど、これまでがこれまでだからね。
可能性としては一番真っ先に思いついてしまうのも仕方ないと思う。
「とりあえず、どれくらいでここに来るかわかるか、エルサ?」
何が原因だったとしても、魔物が二十体前後もいるのは見過ごせない。
とりあえず、どれくらいで接敵するかは聞いておこう。
アマリーラさんが災害に近い、と言っていたのも気になるからね。
「もうしばらくで、私以外にも見えるくらいに近付くと言ったところなのだわ。そこの獣人なら、もう少しで音とかが聞こえるようになると思うのだわ」
「そうか……猶予はそれなりにありそうだ。えーっと……うん。アマリーラさん」
「アルケニーの音、というとあの足音でしょうが、あまり聞きたいものではありません。あいつら気持ち悪くて……って、はっ! な、なんでしょうかリク様!」
こちらが構える準備をする余裕はかなりありそうだ。
それだけ遠くにいる時点でエルサが見つけてくれたからなんだけど。
ともあれ、まずは皆に報せを……と思ってアマリーラさんに声をかけると、少し顔をしかめて何やらブツブツと言った後、俺の呼びかけに答えた。
アマリーラさんはアルケニーと戦った事などがあるのかもしれない……まぁ、蜘蛛の魔物だろうから想像通りならあまり気持ちのいい相手じゃないだろうからね。
人によっては、蜘蛛というだけで怯えたりするくらいだし。
俺がセンテでの戦いで見た時は、忌避感とかそういうのを感じる暇もなく薙ぎ払ったし、大きかったから俺の知っている益虫としての蜘蛛などとは全然感じが違ったし。
まぁ、日本の家の中に入り込む事のある小さな蜘蛛と比べると、凶悪な見た目なのは間違いないけど。
「皆に、魔物が……アルケニーが近付いていると報せてください。迎え撃つ態勢を整えるようにも。あと、アマリーラさんとリネルトさんは、以前にアルケニーと戦ったり、詳細を知っていたりしますか?」
「はっ、承知いたしました! アルケニーとは、一度だけ。リネルトも同様です。ある程度の魔物としての情報は知っていますが、どちらかと言うとそれはアラクネの情報でもあります」
「アラクネとアルケニーって別種の魔物なんですか?」
「アルケニーは、アラクネの集団から突然変異で生まれる特殊個体……というより、上位種という認識です」
俺が知っているのは物語の中でだけど、アルケニーはアラクネの別名だったりするんだけど、ここでは別の魔物の名として呼ばれているみたいだ。
「つまり、アルケニーはアラクネより?」
「確実に強いです」
「……わかりました。それじゃ、アマリーラさんの経験をもとに皆には油断しないよう。あと、リネルトさんにここに来るようお願いします」
「リク様のお傍には、リネルトよりも私がと思いますが……仕方ありません。すぐにっ!」
兵士さん達やモニカさん達には、アマリーラさんから報せてもらいアルケニーの詳細なども話しておいてもらうとして、走っていくアマリーラさんを見送り、リネルトさんを待つ。
「あんな魔物なんて、私が踏み潰せば……というのは嫌なのだわ。あいつら気持ち悪いのだわ。間違って踏み潰した時には、緑色の液体がこびり付いて中々取れなかったのだわ」
「……そんな事があったのか。まぁ確かにエルサもアマリーラさんも気持ち悪いって言っているし、そんなのを踏み潰すのも嫌なのはわかるけど」
緑色の液体って……アルケニーの血とかだろうか? 魔物だから赤くないというよりは、人とは別種の生き物だからっぽくも感じる。
地球にいる虫だって、血かどうかはさておき赤い以外の体液ってあるからね。
「リク様~、呼ばれて飛び出てリネルトです~。アルケニーがこちらに来ていると聞きました~」
「リネルトさん。飛び出てはいないですよね? というのはさておいて……できるだけ、アルケニーに次いて知っている事を教えて欲しいんです。エルサも、あまり知らないみたいで……アマリーラさんには別の事を頼みましたから」
「知らないというより、知りたくないという方が正しいのだわ。気持ち悪い魔物の事なんて、知りたくもないのだわ~」
冗談を言いながらこちらに来たリネルトさんにツッコミつつ、アルケニーの話を聞かせてもらうようお願いする。
エルサが抗議をするように言っているように、知らないのだから知っている人に聞くしかない。
実際は知らなくてもなんとかなるだろうけど、油断して誰かが怪我をするなんて事は避けたいからね。
あとエルサはもしかしたら、蜘蛛が苦手とかなのかもしれない……まぁ、得意な方が少ないのかもしれないというのは俺の偏見かもしれないが。
アイシクルアイネウムの事は詳しく知っていたのに。
まぁエルサの知識には、ある程度偏りがあるみたいだからね。
興味があるかどうかとか、偶然知る事ができたかどうかなどにもよるんだろう――。
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